Nicotto Town



初夢の続きは (1) 『遠景』

風が揺れていた…

風の気配を感じていた…

何も見えない

何も見ることが出来ない?

けれども感じる、優しい気配

誰から?発せられているモノ?

まるで、迷路に放りまれたかのように

気配というゴールへと向かっていく

やがて辿り着いたのは

見慣れた景色…見慣れている?ここが?

神社の境内のようだが、覚えがない。

けれど、ここを何故だか懐かしいと感じていた。

そこ立っていたのは、一人の少女

君は誰?君のことなど、僕は知らない

触ろうと指先を伸ばす

刹那、それはシャボン玉のように、パチンと割れて消えてしまった

声が聞こえる 少女のモノだろうか? いやもっと大人びた声だ

私は貴方の事なら、何でも判る

けれど、貴方は…

数え切れないほどの、私に出会い

時を、見失う

いつか貴方に…  初めて出会う… 再び出会う…



やがて、聞こえてきたのは歌声

けれども、その歌に聞き覚えはなかった

それどころか、日本語なのか?言葉の響きも、まったくわからないモノだった

…  …  

…  …  …

どこからか、聞こえてくる音に、悟の意識はゆっくりと覚醒した。
なんだか、懐かしい夢を見ていたような気がするけど…。
あれは、本当に自分の夢だったのか?奇妙な違和感を覚える。
携帯を見て、時間と日付を確認する。

「朝か」

これが、間宮悟の、初夢だった。



「なんだ、そりゃ?」
悟の話を聞き、隣を歩いていた渡辺誠二は、目を丸くしていた。

「だから、初夢だって! ナベが聞きたがったんだろう? 第一、夢なんてそんなモンだ」
「そりゃそうだが、聞けば聞くほど意味不明だな。富士山とか、鷹は出てこなかったのか?」
ナベは、少しマジメな顔で訪ねてきた。

「出てこなかったな 無論茄子も出てこんよ!」
「なぁ、一体茄子の何がめでたいんだろうな?」
「知るかよ」

会話を交わすたびに、吐き出される白い息。
けれども、すぐに白みがかった冬の青空へと溶け込んでいく…

「ナベ、神様なんて信じてるのか?」
「信じてる云々じゃないんだよ!イベントだろ初詣は」
「そんなもんかね?」
「年の割にはジジくさいな。 お前アレだな? キリスト教徒しかクリスマスは祝うな!とか言うタイプ?」
「あ~そうかもしれん」
「そこまで、アホだとは…」

しゃべりながらも、2人並んで、歩を進めていった。

しばらくする2人の目の前には勇壮な鳥居が、見えてきた。
正月も三が日を過ぎただけあって、人はもう疎らだった。


「瀬戸神社か~懐かしいな」
悟は、本当に懐かしげにボソリと言った。
ナベは本気で呆れたようで
「お前の地元だろうが! 毎年来るもんだろう?」
「いや、そういえば来てないな 何でだろうか?」
ナベは、目の前が真っ暗になったかのようにトーンを落とし
「来てないのに、懐かしいって…。まあ、お前が、イベント事を楽しめない奴だって事はよーく判った」
「あははは…かもな」

そんな、会話をしながら鳥居をくぐった
潜るなり、突然、聞きなれた声がした。

「遅い!」
「うわっ 梅子? お前なんでココに?」
悟は、妙なテンションの声を出していた。
一瞬白くなった頭は、すぐに回転を始め、
首はナベに、説明を求めるように、横を向いた。
しかしナベは薄ら笑いを浮かべながら言った。
「アレ?言ってなかったか?」
瞬時にアイコンタクトが走る…。
(おぃぉぃ、言ってないだろう)
(スマン、マジで忘れてた)

ナベは、逃げるように梅子に近づき。声を掛けた。
「篠田、いいもの持ってるな?どうしたんだ?」
梅子は無言で顎で、出店を指し示した。
昇りには白地に赤字でリンゴ飴とあった。
仁王立ちの梅子の手にも2つ、リンゴ飴が、握られていた。
「なるほど梅子!用意が、いいな!」
悟が、そういって近づいていくと…
「ばっかじゃない? これは松梨の分よ!」
ピシャリと言われてしまった。
梅子は、悟たちにくるりと背を向け、スタスタと歩き出してゆく…
かと、思ったら、再びこっちへ向き直り
「お代、そちら持ちですから~ゴチになります!」
と、言った後にペロリと舌をだして歩き始めた。

悟は梅子の手を素早く取り
「マテマテ、その件に関しては、渡辺君とよく話し合いたまえ」
といった後、振り向き
「ナベ…払う義務はお前だよな?」
「わーってるよ」
悟は、2人を出店の前に置き去りにして、先へと進んだ。
後ろで不満げな、梅子の声が聞こえたが…。

「うぉっ 寒ぅう~~」
境内に入った途端、冷たい風が吹きつけてきて、思わず身を縮ませる。
さすがは、冬本番。寒さは一層増してきている。
寒さを和らげるように、少し小走りに進んでいくと、門柱に寄りかかり、ぽつんと暇そうに立っている人影を見つけた。
「あれは、松梨?」
間違いなく彼女だ。時計で時間を確認しては、空を見上げ白い息を吐き出していた。
(この寒い中、何やってるんだか ああ梅子と待ち合わせか)
悟は、少し歩みを早めて、松梨に声を掛けた。

(続く)

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2010/03/02 23:01
Re:Sakuraさん

なかなか鮮明にはおぼえてないよねw

夢は何度も出てきます~それがある意味キーワードですから


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2010/02/28 20:21
私、夢って起きたばっかりの頃は覚えているんだけど
10分位すると「アレ?どんな夢っだったけ。」
って思うときがあるんです ←記憶力悪っ!!

はじまりの夢の中の部分が好きです★
続き読ませてもらいます♪
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2010/02/24 02:28
Re:megu さん

続きは~いましばらくお待ちください!

現在がんばって書いています。ぬけててすみませんでした!
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2010/02/21 18:26
Re:のの さん

自分が関わった作品が、どうリライトされていくのか、気になってますね!

続き、楽しみにしてくださいね~
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2010/02/21 18:25
Re:lemonさん

夢の少女の正体は、わかります・・・。

ですが、彼女がヒロインというわけではありません~どうなりますでしょうか?
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2010/02/21 18:23
Re:ゆうゆさん

ありがとうございます。今回は、ちゃんと読みやすいものに仕上げます!

ゆっくりとお待ちくださいね~
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2010/02/21 18:22
Re:ika さん

現代的なのは表の性格かもw内面は結構古風ですよ~

詳しくは『梅子の記憶』よんで見てください
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2010/02/21 18:20
Re:みちる♪ さん

初夢は、なにかのメッシージ!なのかもしれませんね

ここから、物語がどう進むのか?お楽しみに~
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2010/02/21 18:16
Re:まい さん

なかなか鋭いですね!この夢にはいくつかのギミックが施されてます。

とはいえ、コレをもう読むことはないんですよね~お疲れ様でした。
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2010/02/21 18:15
Re:にゃんぴち さん

みんなで書いたものとは、若干ずれていくかと思います。

あれから、いくつか風味をとりだして、仕上げています。
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2010/02/21 18:13
Re:ぺんちゃん~♪さん

今回は、なるべく読みやすいものを!とがんばっています。

最近の意味不なのはもうみんなお腹いっぱいですもんねw
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2010/02/21 18:10
Re:SAKURAさん

いつも読んでくれてありがとうございます。

ペースはゆったりだと思いますが、楽しんでくださいね。
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2010/02/21 18:08
Re:ジェミン♪さん

参:なすび なんで茄子がめでたい初夢なんでしょかねw

コメントありがとうございます。続き、楽しみにしてください。
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2010/02/19 00:51
読ませて頂いて、ありがとうございます。
続き、楽しみにしてますね^^
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2010/02/18 09:13
夢の部分の不思議な感覚は時々ありますね。
話が進むにつれ、貴女が誰なのか謎が解けていくのでしょうか?
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2010/02/18 07:17
恭介さんおはようございます。

はじまりのとこの

風が揺れていた・・・ってステキですね

続きをたのしみにしています。❤
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2010/02/17 23:54
古風な名前のわりに現代的な性格の女性のようですね。
優しい雰囲気の文章に続きが気になります。
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2010/02/17 10:42
恭介さん、読ませていただきました(。◕‿◕。)
続きが早く読みたいです^^
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2010/02/16 23:51
書き出しから切ない感じがしますね。
やっぱり、恭介さんの綴る物語は素敵だなぁって思う。
どんどん、お話に引き込まれてゆく。
続きが楽しみです♪
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2010/02/16 13:14
初夢の内容に引きずり込まれてしまった。。。

なぜか悲しくなるのはワタシだけぇ~・・・?



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2010/02/16 12:43
やっぱりたくさんで書くと散らかり気味になるけど

本流一本になった感じだね^^

続きもよろしく~♪
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2010/02/16 11:38
う~ん
やっぱり、恭介さんは文章上手ですねぇ
言葉の選び方、間の取り方とか、いいですね
すんなり、自然に先へ進んでいけます。
続きも楽しみにしています。
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2010/02/16 10:31
続きが楽しみです♫
いつも 楽しませてもらっています✿
恭介サン ありがとう♪
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2010/02/16 10:00
茄子の夢って・・見る人いるのかな~
それに・・どんな夢なんだろうw
畑で・・とったどぉ~って叫んでいるのかなぁ~(^^ゞ

微妙なコメで恐縮ですw




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