Nicotto Town



初夢の続きは (3) 『青空』

石段に座り

ただ無心に、空を見上げていた

ゆったりした、雲の行方に

どこまでも続く、空の青に

見入っていた

いつまでも、いつまでも

そうしていた

気が付くと

隣にだれか居る事に気付いた

隣でサラサラと髪が、風になびく音がした

誰かが、隣で

一緒に空を眺めてくれていた

けれども、お互い無言

言葉を交わす事も無く、空を見上げていた

そして…

何故だか、ひどく悲しかった

ふと、風に乗って言葉が流れてきた

「約束だよ」

隣の少女が言ったものなのだろうか?

それとも、他の誰か?

その言葉は、ひどく大事なものに思えた

約束、それが始まり? それとも終わり? 

なぜか、そんなことを考えていた

「悟…  悟…」

僕を呼ぶ声が聞こえてきた

それも、2つの方向から

隣にいる少女から

石段の下から

一体どちらの声に、耳を傾けるべきなのだろう?

青空を見つめながら、そんなことを考えていた…

… … …
… …


ひどくリアルな夢だった。
世間一般で言う、予知夢って奴だろうか?
なんとなく体の節々が痛い
良く眠れなかったのだろうか?

それでも、起きなければならなかった。
なぜなら春休みはもう終わり
今日からは、新学期なのだから

時計を見ると、ずいぶんと早起きだったことがわかる。
なんとなく梅子に、会いたくなかった。
そのせいか、いつもよりずいぶん早く家を出てしまっていた。
いつもなら、時間が掛かる身支度も、食事もさして時間が掛からなかった。
不思議な感じだ。
まるで、何かに引き寄せられている。 そんな錯覚もしていた。
まだ人ごみもまばらな道を、前へ前へ歩き進めていた。

気まぐれだった。
少し遠回りをして、桜並木を眺めていこう。
普段なら、そんなことを考える余裕もないほど急いでいるのだが
ゆとりある朝は、少し詩的な気分にさせてくれるらしい。
桜並木を見て、なんとなく波のようだと思った。
寄せては返す一定のリズム。
桜並木が風に揺られ、花を舞い散らせる。
その光景は、とても懐かしい気がした。

その花びらの波の向こうから、ひとつの影が現れた。
女の子はウチの学校の制服を着ていた。
悟に気が付いたのか、駆け寄ってきた。
そして、悟の胸に飛び込んでくるなり
「来てくれたんですね!」
と言った。
「???」
悟は困惑していた。
(こんな、知り合い居たっけ?)
コンピューターをフル回転させるが思い当たらない。
そんな悟の様子を察したのか、女の子は髪をかきあげ、手でツインテールを作って見せた。
これには、普段勘の悪い悟も閃いたようで
「あ、優ちゃん?」
「はい!」
女の子は、ようやく笑顔を見せた。


丁度一年前くらい、悟が入学して間もない頃、桜並木の下で、見るからに楽しそうに遊んでいた女の子と出会った。
その日も強い風が吹いていた。
風は花びらと一緒に毛虫を1匹舞い上げた。
その毛虫が、彼女の肩口にぽとんと落ちたのだ。
彼女は肩についた毛虫に悲鳴をあげた、けれども怖くて手で触れないらしくて、肩口まで手をやって戻すを繰り返すばかりだった。
しまいには、泣きべそをかき始めてしまった。
悟は、しかたなく毛虫をとってやった。ほんの、気まぐれではあったが
女の子はとても嬉しかったらしく、何度もお礼がしたいと言ったが、悟は断った。
こんな単純なことで、礼などいらないし、少し急いでもいた。
「ごめん、本当にお礼なんていいから、遅刻しちゃうからもう行くね」
「あ~富岡高校の人だったんですか…」
「うん」
「ふむぅ~」
優は、少しの間考え込むと
「あ! 私、優です。高峰 優! また来年ここで待ってますから」
「あ~はいはい」
「な~んか、怪しいなぁ…。指切りしときましょ」
「…嘘付いたら、針千本の~ますっと 約束だよ」
こうして、悟は再会の約束を指きりさせられて優と別れたのだった。


…すっかり忘れていた。だから、桜並木に行ったのは単なる偶然だ。
風に吹かれて、桜の花びらが舞う、あの日と同じように…。
途端に、一年前の彼女の笑い声、泣きべそ、「うぅぅぅうう」という唸り声が甦って少し笑ってしまった。
「何、笑ってるんですか!」
少し、赤くなりながら、優が噛み付く。
「いや、ごめんごめん。しかし見違えたね?そんなのを着てるとまるで富岡の生徒みたいだよ」
「・・・あの~」
「ん?」
「まるでじゃなくて、生徒なんですよ!富岡の!」
「えぇ?」
悟は、優をまじまじと見つめた。とても小さい…。
「高校生?」
「はぃ!今日からよろしくね。間宮先輩」
そう、言って深々と礼をすると、優はスタスタと学校へ向かって歩き出した。
悟も後を付いて、学校へ向かう。

ふと見上げた空は、一面の青空だった。
ついさっきまでの、柔らかな灰色掛かった空よりも、ずっと澄んだ鮮やかな青。
春の空というよりは、真夏の目にしみるような、はっきりした青空。
悟は、その澄み切った青空を見上げながら、しばらく立ち尽くしていた。

アバター
2010/11/14 18:09
書き出し綺麗だね~

優ちゃんは年下なんだ。。ふむw
これからいろいろ起こりそうな予感???
アバター
2010/03/09 01:20
Re:Sakura さん

すでに松梨もライバルの雰囲気出てますしね~

どうなることやら、続きをお楽しみに!
アバター
2010/03/09 01:17
Re:lemon さん

優の引力が、そうさせたのかもしれませんね!

優の年下は、賛否両論あるかな~と思ったけど、皆さんすんなり受け入れてくれました。
アバター
2010/03/09 01:16
Re:こころ。 さん

大変お待たせしました。優の登場です。

物語は、少し複雑な展開を見せていくはずです。
アバター
2010/03/09 01:15
Re:ジェミン♪ さん

隣で、誰かが座ってくれていて、2人で飽きるまで空を見ている。

一度はやってみたいですね~。
アバター
2010/03/09 01:13
Re:にゃんぴち さん

なかなか鋭いですね。ってミエミエのミスリードだったでしょうか?

答えは、この先に・・・。隠されているはずです。
アバター
2010/03/09 01:12
Re:♥さくら♪♥ さん

これからの季節を少しだけ先取りですね。

続きは、すこし書き溜めてから出していくかもしれません。
アバター
2010/03/05 21:37
偶然ですよね。。。
梅子のライバル出現!?
これからがどうなっていくのか楽しみにしてます!!
アバター
2010/03/05 19:17
夢の中で話しかけてきたのは誰なんだろうね?

梅子に会いたくなかったのはどうしてだろう?と思ったけど
優と再開するためかな?
意外な出会いでびっくりしました。年下だし~~!
アバター
2010/03/05 00:26
約束・・・始まりの約束であって欲しいものです。

悟と松梨もさることながら、やっぱり優が出てこないとネ!
とても複雑だけど、若かりしころえお思い浮かべちゃいますね。
アバター
2010/03/04 21:25
風景が目に浮かんできましたよ(*^_^*)
悟が見た夢・・私も見たいです・・
空を見ながら・・ゆっくり時間が流れていく
憧れますね~悟が羨ましいよ^^
アバター
2010/03/04 12:58
約束守れてよかったよかった^^

・・・・・・・って、ちがう???
アバター
2010/03/04 07:58
青空・・・約束・・・桜並木・・・偶然。。。
すべての流れが違和感なくて好きだなぁ(´vωv`*)
朝から爽やかな気持ちにさせてくれる小説です。
恭介さんは多才ですね~いろんなタイプが
描ける・・・スゴイです。
優が同じ高校の生徒と知った悟の心境・・・
続き・・楽しみにしています。



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.