Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


空を仰ぐ つづき2



「スコット、ニナ…。二人もしばらく休むといい。ボクたちはどちらにせよ、戦場へ戻るのだから…。」と、ボクはボクのそばにいる二人に呼びかけた。

 

「ああ、じゃあ、オレは少し町へ買出しに行ってくる。そうそう、リルルもどうだ?ここはフィルハーモニー家、発祥の地ガブリエル。奇跡の町として名高いパワースポットだ。なんなら案内するぜ」と、スコットは聞いてくる。

「いや、いい。静かに…戦場に戻るまでの間、静かに過ごしたいんだ。そうか…ここはあの奇跡の町か…。」

「そうか、わかった。じゃあな。また出かける時は頼むぜ」

「ああ、もちろんだ」

スコットの背中を見送り、となりにいるニナの方を見る。

「君はいかないのか?」

「ワタシは…あなたのそばにいてもいいですか?父の匂いのするあなたのそばに…」

「……ああ、かまわない。空でも見に行こう。そこに何かあるわけでもない。もしかしたら今日は曇り空かもしれない。それでもいい。気晴らしにはなるさ。何せ二人で散歩するのだから」

ニナはボクの腕を取り、寄り添ってきた。

「リルル…それともルゥ?」

「ルゥ・アプサラス…ハルモニア家の使用人。王子の執事をやっていました。王女様…以後お見知りおきを」

「……うん。そうね、あなたの中に父はいる。リルルを名乗ってくれてありがと。でも、ワタシは「ルゥ」と呼ぶわ」

「もう一つ呼び名がある…」

「まあ、たくさんあるのね…それはあの時、あなたが口ずさんでいた詩の中にあった名前よね…しと。どんな字を書くのかしら」

「死という文字と、使う…この二文字で。死使…。鬼の名前…。そう、ボクは鬼の自分を認めたくないから…君のお父さんの名を名乗りたいだけかもしれないし、君への情のためかもしれない。それはボクにもわからない。ボクはみっともない奴だ。でも…」

「でも?」

「それでもボクはたとえ世界を敵に回しても守りたい、救いたい…ヨシュアを!」

「…何だかヨシュアさんに嫉妬しちゃうわ」

「え?」

「ううん。こっちの話…。空を見に行くんでしょう。ワタシもそうしたい…。空を見上げれば父に会えるような気がするから」

「うん。うん、そうだね」

ボクは泣いていた。

ニナも泣いていた。

 悲しみを受け止めるにはまだ全然足りないのだ。ボクたちは館を出て、手入れの行き届いた庭にある椅子に座って、空を仰いだ。

 

雲がボクたちの泣き顔を見て笑っているように感じた。

 今はそれでいい。

 ボクたちはまた戦場へ戻るのだから…。

アバター
2011/09/18 17:38
>雲がボクたちの泣き顔を見て笑っているように感じた。

うまいですねえ。
切ない場面なんだけど、ほわっとします。
アバター
2011/09/17 15:48
 拝見しましたっ(^ー^* )フフ♪
 私も昨日は泣きましたっ…
 



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