Nicotto Town


安寿の仮初めブログ


「伝書鳩」


  「伝書鳩」

      人気のない街角で
      純白の羽根を見つけた
 
      …そうだ
      この羽根をペンにして
      あの人に手紙を書こう
      
      そしたら
      手紙には翼が生えて
      伝書鳩のように飛んでいくだろう   
      
      やがて
      遠くのポストを
      ことん、と鳴らす
       
      クークー
      クークー
      私が帰ってきました
      早く開けて下さい
 
 
                2000/08/10 初稿
                2005/07/25 推敲
                2011/11/07 三稿 

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2011/11/11 16:20
>鳩羽さん

詩poemの語源は、
ギリシャ語由来のpoiesis(創ること、創作)という言葉に由来し、
ヨーロッパでは修辞学という、
自分の伝えたいことをいかにして効果的に伝えるかといった、
音・韻・リズムなどの技法と結びついたものでした。
日本の和歌でも、同様のような技法があるのではないでしょうか。

詩を作るとは、かなり作為的な行為なのだと
安寿は思います。

技法を学べば、いい詩が書けるわけではありませんが、
伝えたいことを、ただ書き連ねたらからといって、
それで効果的に伝わるわけでもありません。

特段、私は修辞学を学んだわけではありませんが、
私が詩(らしきもの)を書く時、
叩きつけるように書くのではなく、
言葉を選び、リズムを整え、
時にユーモアを、
時にユウウツをちりばめ、
読んでいて、
音感として気持ちよく、
光景として明確なヴィジョンがあるように、
文章を組み立てたいと思っています。

 ↑
ここにも、
「時にユ…」「として」という音の繰り返しを用いることで、
文章の内にリズムをつくり、
たたみ掛けることで、
強調するような感じを意識してみました。
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2011/11/10 21:58
私の詩はリズム感に乏しいので、とても勉強になりました。
加速とブレーキ・・・ですね。

内面の思い付きを膨らませるのは、そこそこ得意なのですが、
リズムを生むのはかなり苦手なのです。
ただ安寿さんの詩と解説を読んで、とっかかりがつかめた気がしますので、
近いうちに、挑戦してみようと思います。
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2011/11/09 19:57
>沖野さん

昨年の9月頃、「恋愛」のカテゴリーで掲載しています。
沖野さんのコメントも掲載されています。

  http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=267501&aid=19006030

ですから、この詩を朗読するときは、
最初の一連は、
小さな発見をした時のように、
たとえば、「あ、虹」という感じで、
唐突さを滲ませて。

二連・三連目は、
思いつきが膨らんでいくのがわかるように
たたみ掛けるように加速して。

四連目は、
先の加速感を突き放すように、
落ち着いた感じで。

五連目は、

…鳩になってください…。



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2011/11/09 19:32
この詩、前に読んだ記憶があり
何かコメントをした記憶もあるのだけれど

二度目に読むと、なんだかよくわからなくなり
自分の詩の味わい方も怪しいものだなぁと思い、

安寿さんの解説を読み、
技巧が凝らされていることはよくわかりました。なるほど。
詩を書いた人による解説はやはり貴重ですね…。
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2011/11/09 16:32
>鳩羽さん

これはとても短い詩ですが、
かなりテクニカルに、
つまり文章を書く際の技巧が
強く意識されている詩なのです。

まず、文体ですが、
最初の一連二行は、
日記や業務報告に使われるような、淡々とした記述報告文。
つまり、「今日は一日雨だった」「街路樹が次第に色づき始めた」
書いている作者の心の動きは、極力抑えた文体です。

次の二連目と三連目は、
自分自身の内面で自分の思いつきや妄想を膨らませているような
そう、アニメの主人公がよく演じているような
一人芝居調の独白文です。

このように文体が変わっていくことで、
読む側もまた、各場面を、
異なる情景として思い描いていきます。

すから、短い詩にもかかわらず、
場面がどんどん変わっていくことで
この詩の中にある物語を、
かなり速いテンポで展開させていきます。


次に音とリズム、
そしてそれによって生まれるスピードの強弱です。

2連目と3連目は
「そ」の音から始まり、
二行目の終わりは「て」
三行目の終わりは「う」。

ね。
つまり、同じような音とリズムを繰り返すことで、
自分の中の思いつきというか妄想が、
どんどん膨らみ、
加速している感じがするでしょう。

そして四連目を短くし、
音も変えることで、
加速していた感じにブレーキをかけ、
落ち着きを取り戻させる。


最後の連は、
自分の妄想の中に自分自身が飛び込んでしまい、
伝書鳩に成りきってしまった
この詩の主人公の台詞の文体ですし、
「クークー」という長音の繰り返しが、
長閑な日常のリズムを醸し出しています。

帰る場所に向けて
大空をまっすぐに飛び、
ようやく帰り着いた伝書鳩が、
少し息を整えてから
飼い主にご褒美の餌をねだるように、

この詩の主人公も
ポストの中からあなたを呼び続けるのです。

伝書鳩のかわいい声で。
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2011/11/07 18:09
手紙自体がもし、言葉を使うことが出来たなら、
こんな言葉を伝えてくれるのでしょうか。
早く開けてと急かされると、その様が可愛らしくて観察してしまいそうです。

純白の羽を選ぶ「私」は、「あの人」にどんな思いを抱いているのだろうと
ふと、気になりました。
尊敬であれ、思慕であれ、偽りのない透き通った思いなのでしょうか。



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