Nicotto Town



星を盗む男 (5)

『ローゼンファイル』……それは未だ明かされぬ謎。

今から300年前、稀代の天才と呼ばれた男がいた。

ローズ・F・キャラウェイ

数学者であり、医者であり、科学者であり

天文学者であり、建築家であり、画家であり

そして発明家であった。

彼の功績は、現代ほとんどの基礎に用いられている。

一方で未だに解明されていないミステリーがある。

それこそが『ローゼンファイル』である。

彼は『ローゼンファイル』に対し「人類はまだ幼すぎる」とだけ言い残し

その後消息を絶っている。

未だくだらない戦争をしているから幼いのか?

人類の英知がまだその理論を理解するには幼いのか?

当時様々な憶測を呼んだが、結局わからなかった。

ただその鍵を握っているとされている一枚の絵がある。

それは『星を見上げる少女』である。

構図は目を瞑った少女が空を仰ぎ見ているものである。

しかし星を見上げるとある割には、背景は青空。

そのアンバランスさ、そして彼の最後の作品ということから

ここにローゼンファイルが隠されていると踏む者も多かった。

当然様々な解析が試みられたが

結局誰一人として『ローゼンファイル』には辿り着けなかった。

やがて絵そのものが盗難にあったため

ローゼンファイルの名も絵と共に闇に消えることとなる。

……。



ひょんなことから敵だった男と宝探しをすることになった。

コレだから運命の巡り合わせは面白い。

「なあ 『星を見上げる少女』の真作って何枚あるか知ってるか?」

男に聞いてみた。

「真作が1枚以外のわけないだろ」

男は馬鹿にしたように言った。

「それがさ、3枚なんだよ、ルーブルに1枚 メトロポリタンに1枚 そして六本木に1枚」

「へ? おいおいどういうことだよ? 

 盗まれたのは1枚で、戻ってきたら3枚になってたってことかい?」

「単純に言ったら、そうなるな…。

 互いのメンツでそれぞれ自分の所のが本物だと譲らず。

 比較鑑定もされていないこの3枚。 すべて贋作じゃないだろうかって思っている

 『ヴァルハラ』のな」

「真作とまったく区別が付かない贋作……どういうことだ?」

「つまり『ヴァルハラ』は、まだ真作を持っているんじゃないか?」

「それが、この中のどれかかもしれない…。ってわけか」

男は、少し神妙な面持ちでうなづいた。

「そういうこと。 秋の夜長にはピッタリの宝探しだろ?」

「あはは俄然やる気が出てきちゃったなぁ~ボクはぁ~」

切り替えが早いというかなんというか

しかしどうやら、そんなに悪い奴でもないらしい。



「おいおい、こいつは…区別なんて付かないぜ」

30分も経つと、早くも男は根を上げ始めた。

それもしかたの無いことかもしれない。

ざっと見て40枚はあるだろうか?

素人目には、違いなど見当たらない。

寸分違わぬ、『星を見上げる少女』の群れ……。

そしてそれを前に座り込む男2人、ずいぶんとシュールな絵だ。

男が不意に口を開く

「なあ、なんで、星を見てるはずなのに青空なんだ?

 昼間に星なんて見えるわけ無いじゃないか」

素朴な質問だが、的を得ている。

「ああ、それはだな。 この少女ハンナは目が見えないんだ。

 生まれてすぐに高熱が続き、そのせいで視力を失ったらしい」

「ふぅ~ん 青空の果てに、星は見えたのかねぇ?」

「どうだろうな」

男は、諦めたようにゴロンと横になった。

が、すぐに声を上げて立ち上がった。

「うわ、まぶし!」

机の上のナイフにペンライトの光が反射したようだ。

「なにやってんだか」

少々呆れ気味にペンライトを拾い電源をオフにした。

(ん?…反射?)

ペンライトを点けたり消したりして、男の顔に反射し続けた。

「おい、やめろ」

男は俺の手からペンライトをひったくった。

(反射…)

何故だかこのことが、ひどく引っかかる。

気が付くと、自分の日本刀の鍔を見つめていた。

(そうか反射か!)

「おい、ちょっとそれ借りるぞ」

俺は、男の手から再びライトをひったくると、全ての絵に丹念に当てていった。

「おいおい、何やってるんだよ」

男は、呆れるように手のひらを上に向け、オーバーなリアクションをして見せた。

(ライトじゃダメなんだ、あの時代にライトなんかない)

「お前、火あるか?」

「工房は火気厳禁ですよ~」

「堅い事言うなよ、ちょっと貸せ」

男の手から今度はジッポライターを奪うと絵に近づけた。

「おいおい何やってるんだよ? 引火するぞ?」

「何って、青空の果てに星を見ているのさ」

「おいおい、ついに気でも触れたのか?」

「いいから少し黙っていろよ。 300年前のメッセージを読み取っているんだからさ」

「何? お前まさか?」

男の声は少し震えていた。

「ああ。 辿り着いたぜ、ローゼンファイルにさ」

アバター
2011/11/16 09:33
へぇ、見つかったんだね。
どうなるんだろう?!続きが楽しみ♬♪。
アバター
2011/11/16 00:32
どうなるのかなぁ~?
アバター
2011/11/15 21:23
w(゚o゚)w オオー!
ますます楽しみになって来ましたね(*^。^*)
アバター
2011/11/15 20:49
これで小説だせるんじゃないですか??次回楽しみにしてますわ



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