Nicotto Town



君への忘れ物 【1】

夜空には神秘的な瞬きの群れが踊っていた。

光の粒子は音もなく舞い降りてきて、胸にしんしんと降り積もっていった。

ただ眺めているだけで、まるで心が清らかに洗われていくような不思議な感覚。

どれほど、そうして夜空を眺めていただろうか。

酔いは幾分醒めてきた、もう普通に歩いて帰れるだろう。

第一この時期、外で寝たりしたら凍死しかねない寒さだ。

「そろそろ、帰るか」

体の熱が冷めないうちに、夜道を早足で駆け抜けた。

事務所兼自宅は、既に光が落ちていた。

サラはとっくに寝ているだろう。

合鍵を握り締め、ゆっくりと我が家に近づいていくと、事務所の前に人影を見つけた。

通行人を装い、近づき声を掛けてみる。

なんてことはない、サンタクロースの格好をした宅配便の業者だったようだ。

そうか…。もう日付は、25日クリスマスになっていたようだ。

事務所の鍵を開け、サインをして包みを受け取った。

こんな夜中まで、仕事とは大変なことだ。

包みをサラのデスクの上に置くと、部屋に戻り本格的に寝ることにした。

これが不思議なクリスマスの始まりとは知らずに…。



『君への忘れ物』



翌朝、休みのはずの俺は叩き起こされた。

しぶしぶ事務所に顔を出すと、事務員のノーマがコーヒーを手渡してくれた。

しかし口をつけることはせず、サラのデスクへと近づいた。

デスクの周りには、サラ、ノーマ、それとなぜか居ついたアイツといつもの面々が雁首を並べていた。

サラは俺の顔を見るなり、食って掛かってきた。

「これ、アンタが受けたの?」

「ああ、そうだが?」

何のことかわからない?

だが、サラは合点が行ったようだった。

「ならいいわ」

ノーマとアイツは中身に興味津々なようだった。

サラは包装を丁寧に解くと、箱を開けた。

中身はジュエルボックス。

ジュエルボックスを開けると中には、指輪が1つあった。

「ターコイズブルーね」

ノーマが最初に口を挟んだ。

さすがファッションとうまい店探しに人生を賭けている女だ。

宝石関係にも目聡い。

青空を切り取ってきたような青い宝石が、そこにはあった。

「ヒュー、社長も隅に置けないね。お相手はどなた?」

茶化すようにアイツは言った。

だがサラは意に介す素振りも見せず伝票を確認していた。

そして深いため息をひとつついた。

「どうしたんだ?」

ため息の理由を聞いてみた。

サラは無言で伝票を振って見せた。

そこにあったのは宛先とサラの名前だけ、差出人の名前も住所もなかった。
 
「え?」

こんなことがありえるのだろうか?

伝票を眺めてる裏でサラは電話を取り、2言3言やりとりをしていた。

「そんなことは、ありえないはずですが…か?」

サラに振ってみる。

サラは、静かに、うなずく素振りをして見せた。

一体誰が?こんなことを?

その場の全員が固まってしまった。

「だれか、心当たりはないのかよ?」

サラは、ああ見えてそれなりにモテている印象があった。

きっと誰かからのクリスマスプレゼントに違いないとおもったのだが

当人は、首を横に振るばかりだった。

やがて何か思いついたのか、サラは悪い笑みを浮かべながら猫なで声を出してきた。

「ところで お2人さん、私と一緒に楽しいクリスマス過ごさない?」

どう考えても悪い予感しかしない、一刻も早く断らなければ!

しかしその先制をアイツにとられた。

「クリスマスに、お仕事するのはニコラスさん位でしょ♪」

掛けてあったコートを一瞬で羽織ると

「今日は、美女を5人程待たせてるのでね、メリークリスマス」

などというなり事務所から、飛び出していってしまった。

「じゃ俺も」

そういって離れようとしたが、動けない。

手首を既に、握られていたからだ。

「…は、お姉ちゃんと楽しいクリスマス過ごすわよね?」

この状況で、どうして逃げられようか?

「…はい」

「よろしい」

「じゃあ早速、この伝票の担当者に電話してね」

こうしてサラだけが楽しいクリスマスが始まった。



「どうだった?」

受話器を置くとサラが近づいてきた。

「どうも記憶にないらしいな、依頼人欄を空欄で通すことは絶対にないって言い張ってる。

依頼人が適当な住所を書くことはあるだろうけどな」

「だったら、一体どーゆワケなの?」

「さあな、さっぱりわからん」

お手上げのポーズをしたまま、大きく椅子の背にもたれ掛かった。

「それにしても変な指輪よね」

指輪をいじっていたノーマがつぶやいた。

「どこが?」

サラと俺は同時に声を上げた。

「なんていうのかなぁ、流行じゃないのよ。簡単に言ったら古い?」

サラと俺は思わず顔を見合わせた。

「飾り石も無しでターコイズだけなんて、今時ありえないでしょ? 戦時中じゃあるまいし

 ターコイズなんて昔はともかく、今はそれほど価値ある石でもないのよ?」

さらにノーマは続けた。

「この包装紙だって、店そのままでしょ?普通ラッピングとかするものじゃない?」

聞けば聞くほど、これが奇妙なものに思えてきた。

「あ、内側に文字が彫ってある。ラーアル?」

サラはノーマから指輪をを奪うとしげしげと見つめた。

その後サラから出た言葉は、意外なものだった。

「…えっ?こんなことって……」

「どうした?」

「ありえないのよ! だって彼は10年も前に死んでいるはずなんだから」

アバター
2011/12/22 20:59
びっくりですね(@_@)
この後が楽しみです^^
アバター
2011/12/22 14:04
リメイクするのかしら?
アバター
2011/12/21 18:57
それからどうなるの?
サラはその指輪をしたら10年前に
タイムスリップしたりして。。。。w
そして10年前の彼ともう一度会えて。。。。
それが「彼」からのクリスマスプレゼントなのかしら。。。
その指輪は亡くなった彼がサンタになってサラにプレゼントしたのかしら。。。
続きが楽しみ♪





月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.