Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


飛び立つ船2


  淡い期待を胸にボクたちは町へ入った。

「よお、待っていたぜ。あんたたちだろ?オレはギルバード。学者だ。「エーテル」を研究していた。そして何よりもこの石のすばらしさをあんたら伝えたくてな。」と、金髪で青い目の男、ギルバードはまくし立てる。

「あんた、以外にもこの町には人がいるのか?」と、ボクは彼の自己紹介よりも「町」の惨状を知りたかった。

「もちろんだ。スコット殿に教えてもらった魔方陣をこの町に使用した。すごいね、魔方陣の力って奴は。さすが、フィルハーモニー家と、関心してしまったよ。いやはや、そのおかげでここもよく賑わっているのさ。今、静かなのはその救世主である君たちを祝うために、わざとね。静かにこっそり宴会の用意をしてもらっているってわけだよ」

「おいおい…」と、ボクは下を向く。それと同時に涙も出た。

淡い期待を裏切り、それも「嬉しい」方に・・・。

ボクは驚きを隠せなかった。

「いいじゃない。ねえ、ルゥ。ここで楽しみましょう」と、ニナはほほ笑んでくる。

「オレも大いに賛成だぜぇ、なあ、リルル。そうしよう。なっ!」と、スコットはすっかりその気だ。

「わかっている。もちろん、そうしよう」と、ボクはうなずいた。

「内輪話もすんだところで、本題に入っていいか?」と、ギルバードは聞いてくる。

「「エーテル」なら持ってきている」と、ボクはエーテルを見せる。

「おお!!、でかいな。それだけ大きければ十分だ。船を飛ばせる」

「どういうことだ?」と、ボクは聞く。
「それはこのネックレスを身に着けてもらえればわかる」と、ギルバードはボクたち一人ひとりにエーテルを埋め込んだネックレスを渡した。

ネックレスを身に着けると、身体が浮き出した。

上昇気流を肌で感じることができる。

その上、自分の好きな方向へ飛ぶことだって可能だ。

飛ぶことだって…。そう、思うだけですでに飛んでいた。

ネックレスに埋め込んだ小さな、小さなエーテルで人を浮かし、空を飛ばせるなら、ボクたちの持ってきた大きなエーテルなら船を飛ばすことだってできる。

だが、それを運んでいた間は何も影響を受けることはなかった。

空を飛んで、ここまで来ることだってできたはずだ。それは何故?

ボクは飛ぶのをやめて、ギルバードのところへ降り立った。

「その顔は、何故自分たちの運んできたエーテルは???って顔だね。そうだろ?ふふふ。なーに簡単なことさ。覚醒させていないんだよ。覚醒させるにはちょっとしたコツが必要なんだ。いや、そんなに難しい物じゃない。スコット殿が、箱に魔方陣を納める原理と一緒さ。いや、これ、スコット殿本人も知らなかったと、思うんだな。そのネックレスは蓋を締めたままの箱だと思ってくれればいい。もう、ここまで言えばわかるだろ?君なら」

「魔方陣を封じ込めた…?しかし、どの魔方陣を???」

「もちろん、町にも使用しているこの奇跡の魔方陣さ。この奇跡の魔方陣には魔力をはじく効果と、精霊の力を何千倍にも増幅させる力があるんだ。さらに、エーテルはもともとそういった精霊力や、魔力を増幅させる力があるから…奇跡の魔方陣の力をさらに増幅させることになる。魔王さんは一人で、エーテルだけで、船を飛ばそうと頑張っているみたいだけど。こっちには天の助けがあるとしか思えないだろ?奇跡の魔方陣に、輝く石。最高の組み合わせだよ」

「なるほど…それがヨシュアを出し抜いた理由か。それなら納得だ。それでその空飛ぶ船はどこにあるんだ?」と、ボクは身を乗り出して聞く。

「船なら港にある。そうあせるなって。とにかく今日は祝勝会だ。おおいに騒ごうぜ!いやっほーってぐあいにな。それじゃあ、オレは打ち合わせがあるから」と、ギルバードは去って行く。

ボクはふと疑問に思った。

ヨシュアが、奇跡の魔方陣の存在を知らないとは思えない。魔力を受け付けない効果があるなら、魔力を受け付ける魔方陣をヨシュアなら考え出すはずだ。エーテルを掘り出す洞窟をあっさりと、取り戻せたのも、ほんとはすべてのエーテルがヨシュアの元にそろっていて、ヨシュアは魔方陣のことで試行錯誤を繰り返しているだけではないのだろうか?

あのヨシュアが気づかないはずがない。

いや、考えすぎだろうか。

そう、不安に思ったが…ボクはその日の夜の宴会を楽しんだ。

酒を飲み、ごちそうを食べ、おおいに騒いだ。




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