Nicotto Town


安寿の仮初めブログ


安寿の『奥の細道/迷い道』 湯けむり編 その1


「あああ~、こんなに遠くまで来ちまったなあ~」

延々10時間に及ぶ鈍行列車の旅を終え、
紀行番組に出演している武田鉄矢か
警察に追われて逃亡する全国指名手配容疑者のような台詞を吐いて、
安寿はここ東北の小都市に降り立ったのでした。

まずは駅前にある観光案内所に行って、
駅のそばで食材の買えるようなお店がないか尋ねます。
4日分の食料を調達するためです。

今日から4泊する湯治宿は、
炊事場に鍋や食器などが揃えてあって自由に使えます。
また「半自炊」と言って、炊いたご飯だけを頼むこともできます。
ですから、後は自分で鍋や味噌汁を作ればいいわけです。

宿には湯治客向けの売店もあるのですが、
そこで全部の食材を調達するとちょっと割高になってしまうので、
白菜やネギ、豆腐や卵、納豆や海苔など、
主要な材料だけは街中で買っていこうと言うわけです。

ちなみに今回、お酒は買いません。
怠惰な日々によって汚れちまつた心身を
4日間の斎戒沐浴によって清めてみようという
殊勝な心掛けなのです。                                     ☆\(ーーメ ウソツケ!

10分ほど歩いたところに某大手スーパーがあるようなので、
そこまでてくてく歩き、そそくさと買い物を終え、
スーパーのそばにあるバス停で温泉行きのバスを待ち、ほどなく乗車。

駅周辺はさほど雪が積もっているわけでもなく、
うっすらと日まで差していて春遠からじという感じだったのですが、
バスが平野部を抜け、川沿いに山奥深くへ進んでいくと、
あたりは一面の雪景色。

終点近くのバス停で降り、川の方へ下って歩けば、湯治宿へ到着です。

帳場…、
フロントではなくて昔ながらの帳場で受付を終え、
暖房と半自炊だけ追加でお願いします。
まあ1泊4000円程度で済むでしょう。

宿のお兄さんに案内されて、ぎしぎしいう廊下を渡り、
鄙びたお部屋に通され…、はあ~、やれやれ、ご苦労様。

そそくさと荷物を整理して、まずは今回の目的である温泉へ。

この温泉宿には、岩盤を穿つようにして掘られた深い湯船があり、
底から無色透明の温泉が湧いていることで昔から有名なところ。

この湯船は男女混浴なのですが、
女性専用時間帯も設けてあるので安心して入れますし、
それ以外にも男女別に分かれた3つの温泉がありますので、
特に問題はありません。

古い旅館のちょうど真ん中に、地下に降りていくように階段があり、
降り立ったところに楕円形の湯船があります。

 …ちゃぽ~ん…、ふ~ …

なるほど確かに湯船の中は岩を穿っただけです。
そして少し熱めのお湯が岩の隙間のどこからか湧き出しています。
しかも、深い。
段々になってはいるのですが、
いちばん深いところは立ち姿でないと溺れてしまいます。

この立ち姿で入るという入浴スタイルが、当温泉の名物というか効用らしく、
浮力のおかげで体重をかけずに、腰を伸ばした姿勢で身体を暖められるのが、
腰痛を癒すのに良いようです。

無色透明のお湯ですが、うっすらと硫黄臭があります。

さて、身体を拭いて部屋に帰り、お茶を煎れて飲んだら、
どべぇ~~~と、温泉特有の疲労感が襲ってきました。
湯あたり? まあ、そんなもんでしょう。

ここは湯治宿ですから、布団も自分で敷くことになります。
ですから、これ幸いと、さっさと布団を敷いて一寝入り。

 … 目覚めてみれば、夜の9時 …

しゃーない、遅めの夕飯を作りましょう。
豆腐に豚肉、白菜、春菊、しめじ、ネギ、
それにうどんを入れた鍋を、だし醤油でいただくことに。
家から昆布と鰹節、醤油は持ってきているので、まずは昆布を水で戻します。
小型の包丁を持ってきたので、炊事場のまな板と鍋を使って、
材料を切り、鍋に入れ、そして湯治宿の炊事場特有の
10円で10分間ガスが使える機械にお金を入れて、鍋を火にかけます。

卓上ガスコンロを借りて、部屋で鍋をすることもできるようですが、
まあ、それは面倒なので、出来上がった鍋と取り分け用の器とお玉だけを
部屋に運んで、遅めの夕食。

 … ずるずるずる …

はい、ごちそうさま。

炊事場で食器を洗い、ついでに歯を磨き、ちょっとお茶で一服した後、
さて今度は、川に面した露天風呂の方へ行ってみましょう。 

 … あ、雪だ、…

川向かいの雪原と木立は青白くライトアップされ、
その明かりの中へ夜空から雪が舞い落ちてきます。
露天風呂の方はかなり温めで、肩までしっかり入っていないと寒いのですが、
雪を眺めながら長湯をするには、ちょうどいい感じ。

ちょっと神秘的な感じのする露天風呂から部屋に帰り、
持ってきた卓上ウォークマンをセットして、
ジャズピアニストであるKeith Jarrettの「ケルン・コンサート」を流してみます。

電気を消し、窓の外、降りしきる雪を眺めながらのピアノ・ソロ。

いい感じです。


つづく…

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2012/03/16 21:23
>鳩羽さん

初日は豚肉を買っていったので、それで鍋にしましたが、
売店では魚や肉類は販売してないので、二日目からは
もっぱら湯豆腐と納豆&卵で、タンパク質を補っていたように思います。

冷蔵庫を借りてもよかったのですが、
まあ、そこまでする必要もないかなと思っていました。

雪が降っている天候なので、
肉や魚を窓の外に吊しておけばよかったのかもしれませんが、
トンビやカラスに狙われるかもしれないし、
誰かさんのように食べ物にあたってしまうのも避けたかったので、
一日目だけ、肉を入れた鍋にして、後は豆腐・納豆・卵だけです。

これはこれでヴェジタリアンぽくって、湯治にふさわしいように思いました。

現在は精進落としということで、
豚肉を使った常夜鍋にワインをいただいております。   ☆\(ーーメ もう汚れちまったかい

アバター
2012/03/16 20:49
食材を見て、「まさか肉や魚は釣ったり狩ったり・・・?」と思った
人間が通ります。
(現地にも買い物が出来るところはあると、書いてあるのに)

立ったままの温泉は良いですよね。
腰に負担もかかりにくいですし、手足の浮腫にも良いですし。
最後の雪の中のピアノソロかぁ・・・幻想的です。



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