Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


地下神殿の石碑(命をささげる)



 廃墟の奥に行くと石碑があった。

 「黒の仮面と白の仮面。またはそれと対を成す神器を納めよ」

 短い文章でそう書いてあった。

 赤き武器と白の聖剣を納めるということは「命」を納めよということなのか?

 「ニナ…引き返そうか?いや、覚悟ができていないのはボクなのか…」

 「ルゥ。ワタシはあなたと死を迎えるなら不満は無い。でもこのぬくもりが消えるのは怖い」と、ニナはボクの腕をつかんでくる。

 「おい、ちょっと待てよ。何で二人が死ぬ必要がある。この地下神殿が何をしてくれるって言うんだ?」と、スコットも反論してくる。

 「ここで引き返せば…ボクたちは「魔王」になる。ヨシュアと同じだ。ヨシュアもそうだったんだ。父親の病気を治すために、自分が死ぬ?それで引き返した。その結果、黒い仮面に心を奪われたんだ。引き返せば…同じ道を辿る。人間は弱い生き物だ。強すぎる力は野心を。ふふふ。理屈では納めることが善であるように思える。だが、怖い。ここで終わる。それも自分の手で終わらせる。やはり怖い」

 「怖いわ…ワタシも。でも、納めなくては、あなたの友人、ヨシュアさんは助からないと思う。それに世界から魔物はいなくならないと思う。世界を魔方陣のいらない世界へするためには」

 「ああ、そうだな。ニナ…少し時間をくれないか?こういう時だからこそ「声無き声」に耳をかたむけたいんだ」

 「はい…あなた」と、ニナはボクの胸の中へ顔を埋める。

 ボクは灰色の天井を見つめた。

 人生に…。外す。

 思考を一つひとつ外していく。

 姿勢を正して耳をかたむける。

 動きを止める。

 目をつぶる。

 大丈夫、ぬくもりは消えはしないさ。命が終わるわけでもない。

 わかるかい?

 「…納めよう」そう言ってニナを見つめた。

 「はい」と、ニナは青い瞳でやさしく見つめ返し、微笑んでいた。

 「おい!おかしいよ。二人のいない世界なんて嫌だ!やめろよ!何を考えているんだ!考えなおせよ」と、スコットは叫ぶ。

 「悪い…スコット。先のことは考えられない。今できる最善を実行する」と、ボクは石碑に手をのせた。

 石碑が沈み、白い台座が現れた。

 その上に赤き武器をナイフに変えて置いた。次に白い聖剣を置いた。

 台座は沈む。

 命を明け渡し、「死」が訪れると思ったが…そうではなかった。

 「死」の先に「とても大きな光」があった。

 それはとてもやさしいやさしい光。

 不思議と思い出すは「ドッペルケンガー」だ。

 鏡魔神と呼ばれる悪魔として怖れられていた。

 だが、ほんとは違った。

 「とても大きな光」だ。

 「とても大きな光」が…「ドッペルケンガー」という自分を照らし出す。

 そういう体験記を呼んだことがある。

 あの時はよくわからなかったが…今がまさにそんな感じだ。

 「死」の先にあるのは「闇」ではなく、「とても大きな光」

 その光が大きすぎてボクたちは怖がっていたのかもしれない。

 だが、スコットは泣いている。

 「リルルーー!」

 どうやらボクの身体は消えつつあるようだ。

 ニナもまた消えつつある。


 それは一時的なことだよってスコットに伝えた。

 「え?」と、スコットは泣くのをやめる。

 ボクたちは戻ってくる。

 「本当か?」

 本当さ…ボクたちの出会ったあの場所で待っていてくれ。

 「おう!」と、スコットは笑ってくれた。

 ボクとニナはお互いに微笑み、身体が消えるのを待った。

 光に包まれ、ボクたちは消えた。

 

 

 月日は経ち、五年の歳月が過ぎた。

 「目覚めたか?やばいぜ。また黒騎士たちがこっちへやって来ている。どうする?リルル」

 と、赤髪で黒目の男は聞いてくる。

 「どうしましょう…また誰かが犠牲に。」と、ニナは暗い顔をする。

 「…???ボクはリルルとも呼ばれているが。ルゥとも呼ばれている。それでもリルルと呼ぶならそれでいい。ボクと反対側に逃げろ。あいつらはボクが何とかする」

 「おいおい、目覚めた途端、よくしゃべるところは変わってねぇな。はは、やってくるのはうちの近衛兵たちだよ。はは。どうやってここに帰ってきたのかはわからねぇけど、約束どおり帰ってきたな。おかえりだ。リルル」
 
 「うん?ああ、ただいま、スコット」

 「ただいま…スコット」と、ニナも恥ずかしげに言う。

 「さあ、今日は宴会だ」と、懐かしいスコットの声が頭に響く。
 やってきた黒騎士の先頭には「ヨシュア」がいた。

 ボクの旅はまだ続くようだ。

 

 

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2012/06/10 21:38
とうとう完結ですね。

何だか終わってしまうと、ちょっと寂しいですね。

でもお疲れ様。
物事は始めるのは簡単ですが、終えるのには努力が要ります。
がんばりましたね。

でもなんだかまだまだ旅は続きそうですね^^
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2012/06/10 19:24
深いお話ですね^^

なんていえばいいんだろ。今のこの世界に必要な気がしました

ありがとうw
アバター
2012/06/10 16:28
 完結かぁ…

 いろいろ考えながら、今まで読ませてもらったよっ( ◠‿◠ )

 これって自分で出版するってゆうか ほかの人にも読んでもらったらどぉ??

 もったいないような気ぃがするんじゃけどなぁ∩(,,Ò‿Ó,,)∩

 
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2012/06/10 11:55
一気に読んでしまいました。

旅はずっと、続いていくんですね。

死の先の大きな光かあ。深いですね。

今日はお休みですか。

楽しいお休みをお過ごしくださいね(*^。^*)



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