Nicotto Town


安寿の仮初めブログ


イヴに「シンデレラ」


クリスマスに
「メリー・クリスマス!」
と叫ぶのは趣味じゃない…。  ☆\(ーーメ ヘンクツ

とはいえ、
教会で過ごすほど、
信仰に厚いわけでもない…。  ☆\(ーーメ) バチアタリ

だけど、
クリスマス前後に
一人だけ何もしないのは、
なぜか悔しい… 。        ☆\(ーーメ) イジッパリ

というわけで、
今年のクリスマス・イヴは、
東京は初台というところにある新国立劇場で、
新国立劇場バレエ団の公演による
『シンデレラ』を見てみることにしました。

日本のバレエ団の中では、
新国立劇場バレエ団が一番若々しく、
技も冴えているなと勝手に思っている次第。

それに天井桟敷の席なら、
毎年、預金通帳の残高とにらめっこしながら年越し準備をしている私でも、
さほど気にせず見に行くことができるから…。
(ちなみに4階C席は1枚4200円でした。)

で、『シンデレラ』…

うわー、
いつもの新国立劇場と違って、
今日だけは家族連れ・お子様連れが多い。
特にバレエを習っているような小学生を引き連れた家族ばかり。
きっと、この観劇が今年のクリスマス・プレゼントなんだろうな。

クリスマス・イブが最終日の公演だから、
劇場内もクリスマスにデコレーション。
ホールには、劇場の制服を着た職員だけでなく、
サンタの服を着たお手伝いさんもいる。

あああ~、
どこもかしこも
絵に描いたような幸せを
大安売りしている人たちばかりだあ~~

でも、いじわるばばあの安寿さんは、
こういう月並みな幸せが大っ嫌い!!  ☆\(ーーメ) ヒガムナ 

ふん…!
『シンデレラ』のお話はねぇ~、
舞踏会やバレエの観劇なんか逆立ちしても連れてってもらえない、
女の子の話なんだからね。

お母さんは死んでしまったし、
義理の姉は毎日ネチネチといじめてくる、
およそ幸せなんか望むべくもない、
「灰かぶり」の女の子が主人公なのよ!
そこんとこ、忘れないで欲しいわ…。

シンデレラ…
と片仮名で書けば、
日本人の目や耳には、
まるでどこぞのお姫様の名前のように映るけど、
その名を直訳すれば、「灰かぶり娘」。

宮沢賢治の童話に
『猫の事務所』というのがあって、
真面目に働いているのに、
いつも同僚の猫たちから苛められている「かま猫」というのが出てきます。
…が、この「かま猫」も「灰かぶり猫」。

かまどは、
余熱で暖かいから、
いつもそこで温もっている。
かまの中の猫、「かま猫」。
だから、いつも灰をかぶっている。

シンデレラも同じなんです!
毎日の家事をせっせとこなし、
仕事が一段落すると、
暖炉の前で休み、
その温もりに、
つい、うとうと寝入ってしまう…

でも、すぐに次の仕事に追われるようにして眼を覚まし、
寝ぼけ眼をこすりながら、
慌てて仕事を再開するのだけれど、
うとうとしている間に、
自分の髪や服、顔に、
灰が付いてしまったことに気がつかない。

そして、その顔と姿のままで人前に出てゆき、
いつものように明るい笑顔を浮かべて仕事を続けるものだから、
他の人たちは、
その子を見て、思わずクスリと笑ってしまう。

  あれ? 私、なんで笑われているのかな?

意地悪な人たちは、
ここぞとばかりにイジメに走る。

  あれ? 私、何か悪いこと、した?


シンデレラは、
こうの史代が描くマンガの主人公のように、
何の取り柄もなく、
日常の雑事をこなし、
休み時間をただボケーと過ごしてしまう
そんな私のような普通の女の子なんです。      ☆\(ーーメ) そこは違うと思う
(少し修正)
…そんな普通の女の子なんです。

そんな子が『花とゆめ』を読んで、
ちょっとボーイズラブに目覚めてしまっただけ…   ☆\(ーーメ) そこはかなり違うと思う
(大きく修正)
そんな子が義理の姉たちの話を小耳に挟んで、
ちょっとお城の舞踏会を夢見たからと言って、
いったい何がいけないのでしょう!


  『シンデレラ』

この物語は、実は、
宮殿での華やかな舞踏会や
王子によるガラスの靴の持ち主を探し歩く遍歴などがなくても、
話としては成立するのです。

すべてはこの子が見た夢、
そして、「ああ~、いい夢みちゃった~」と、
寝起きの伸びを一つして、
また灰色の日常へと戻っていくような、
夢オチのお話でも十分成立するのです。

  (そもそも私たちが劇場に『シンデレラ』を見に行くこと自体、
   夢オチを地で行っていませんか?)

だから、力を込めて私は訴えたい!!!  ☆\(ーーメ) オオゲサ

『シンデレラ』の美しさは、
舞踏会で奇跡のような美しさで登場し、
妖精のように軽やかに踊ってみせるその姿ではなく、
箒を持ち、箒を恋人に見立てて踊ってみる、
三角巾を被った、くすんだ色の女の子の
小気味良く立ち居振る舞う姿にこそあるのだと!!!

この物語のいいところは、
この世の美しさ、聡明さ、力強さといったものだけを見、
そのすべて兼ね備え、
それしか知らぬ世界を生きてきた王子が、
灰色の日常、
厄介な事情と世情を抱えながら生きている女の子…

束の間の睡魔の中、
平凡な夢を見、
目覚めれば、
普段の顔見知りの人たちと、
仲良く毎日を過していくことだけを第一としている、
灰を顔につけたままの鈍くさい女の子…

その子の前に、
うやうやしく頭を下げるところにあるのです。

ガラスの靴は
見えない靴、
実はこの世に存在しない靴でいいのです。

王子は、
靴がぴったりあったから
シンデレラに頭を下げるのではなく、
王子が探し求めていた心、
その心の持ち主にぴったりと出会ったから頭を下げる…

聖と俗とが出会い、
俗の中に、ほんものの聖を見出すことによって、
それまでの聖も、真の聖へと再生していく。

そういう話の筋こそが、
『シンデレラ』の核心にあるのでは?

  そうでしょ? 王子ぃ~~~   ☆\(ーーメ) 絡むな

…ということで、
年の瀬は
私も三角巾つけて箒を持って、

  はーい、みなさーん、シンデレラだよ~~  ☆\(ーーメ) そりゃ、ただの大掃除!

アバター
2013/01/01 20:55
>Luciaさん

なるほど~。

調べてみたら、
確かに、アダンの「ジゼル」は、1841年初演。
他方、チャイコフスキーの「白鳥の湖」は1889年初演
                「眠れる森の美女」1890年初演
                「くるみ割り人形」1892年初演。

二人の間には、50年ぐらいの隔たりがあるんですね。

そして、「ラ・シルフィード」って、
そんなに古い作品だったんだ。

「コッペリア」も見てみたい作品です。
昔々、舞台スタッフのアルバイトをしていた時、
松山バレエ団の「コッペリア」を舞台袖から見たことがあります。

こんどはちゃんと正面から見てみたい。
アバター
2012/12/29 07:04
アダン(ジゼル作曲)もチャイコフスキーも19世紀の人
つまりはロマン派の作曲家だけれど
アダンの方がちょっと古い

バレエ作品としてもジゼルの方がよりちょっと古い
もっと古いのがラ・シルフィード
(いずれもバレエブラン=白いバレエ、
ジゼルとシルフィードはロマンチックバレエで
白鳥湖はクラシックバレエね)

あ、ラ・シルフィードはレ・シルフィード(ショピニアーナ)とは別物ね
前者にはあらすじがあるけれど、後者にはないし
もちろん、音楽も別


ちなみに
ジゼルのオペラバージョンは
プッチーニ作曲の妖精ヴィッリ(Le Villi) ←彼の処女作
アバター
2012/12/28 23:57
>Luciaさん

おおお~!

安寿の独断に満ちた推測も、時には当たるんだ! ☆\(ーーメ)

…すると、足下チュチュの「ジゼル」はロマンなのかしら?
チャイコフスキーよりも古いの?

2月は「ジゼル」を見に行くんです。
アバター
2012/12/27 02:34
音楽は
バロック - 古典(クラシック) - ロマン - モダン
という流れだけれど
バレエは
宮廷(バロック) - ロマン"踝までの白いチュチュ" - 古典(クラシック)"円盤スカートチュチュ" - モダン
という流れなのよね

クラシックとロマンが入れ替わっているの


ロイヤル初演のバレエでダントツに好きなのは
マノン
アバター
2012/12/26 18:12
>相羅草さん

>お~なるほど。そういう女の子はかわいいですね。
>シンデレラのお話、ちょっと好きになりました。

でしたら、
こうの史代のマンガを読むべきです。
『この世界の片隅で』三巻はお勧め。

>うまくまとまっていますね。すてきな解釈だと思います。

灰と復活についてのメタファーは、
当日パンフレットからの受け売りですが、
でも、日々繰り返すだけの単純労働の中に、
最も尊く、律儀で健気で、美しさの極地を再発見するというモチーフは、
あがたさんへのコメントでも書きましたが、
かなり19世紀的な、インダストリアルなテーマ設定なのではないかと思います。

でも、20世紀のモチーフは、不条理…
そして、21世紀は?

教えて下さいまし…
アバター
2012/12/26 18:03
>あがたさん

安寿のご先祖は、
北陸の出身なのです。

なにせ山椒大夫のせいで、
母は佐渡に流されてしまいましたから…   

シンデレラの衣装は、
舞踏会に、
魔法によって妖精の如く、
美しく着飾って登場する姿よりも、
三角巾に箒をもって、
立ち居振る舞う姿の方が、
圧倒的に可憐かつ健康的で美しいのです。

その点から言えば「シンデレラ」って、
舞踏会に着ていく衣装で大騒ぎする義理の姉よりも、
日々の務めを黙々とこなすシンデレラの中に、
美しさを見出す点で、
結構、近代的な、インダストリアルな道徳観念が見え隠れする題材なのかもしれません。

そうと自覚したのなら、
さっさと年末に予定した仕事を終わらせて、
大掃除もしっかりしろよ、自分            ☆\(ーーメ)

アバター
2012/12/26 17:51
>Luciaさん

そう、プロコフィエフだったのです。
私も劇場のパンフレットで初めて認識を新たにした次第。

そして私も、「あああ、20世紀の音楽だあ~」と思いました。
ガーシュインのミュージカルのような盛り上げ方、
ストラビンスキーの不協和音みたいな不安定の描写…、

私の独断ですが、
クラシック・バレエが「古典」になったのは、
実は19世紀後半から20世紀前半にかけてなんだと思います。

今回の上演は、
イギリスのダンサーであり、振付師であったアシュトンが
1948年に演出したバージョンでしたが、
なんとこれが英国で初めて制作され、
英国の振付家による全幕のバレエだったんだそうです。

つまり、それ以前の英国バレエは、フランスやロシアからの「輸入品」だったのです。

そして、ここから「英国ロイヤル・バレエ」のスタイルが成立するらしく、
つまり、「クラシック」は意外と新しいことがよくわかる事例と言えます。

そうかあ~、卒業試験がシンデレラ組曲だったんですね。
でしたら、バレエ・スタジオの専属ピアニストみたいな活動もできそうです。
いいなあ~。

私の身体は、もう固くなっていて
弓なりに弧を描くことができませぬ(泣)  ☆\(ーーメ)

教会のミサ…

ケルン大聖堂のミサを信者ではない私は、
後方から見守るしかなかったのですが、
ミサの作法振る舞いだけは身に付けておきたいなあ。

アバター
2012/12/25 16:10
>『シンデレラ』の美しさは、
>舞踏会で奇跡のような美しさで登場し、
>妖精のように軽やかに踊ってみせるその姿ではなく、
>箒を持ち、箒を恋人に見立てて踊ってみる、
>三角巾を被った、くすんだ色の女の子の
>小気味良い感じの立ち居振る舞いにある

お~なるほど。そういう女の子はかわいいですね。
シンデレラのお話、ちょっと好きになりました。

>聖と俗とが出会い、
>俗の中に、ほんものの聖を見出すことによって、
>それまでの聖も、真の聖へと再生していく。

うまくまとまっていますね。すてきな解釈だと思います。
アバター
2012/12/25 09:24
クリスマスにシンデレラ、素敵です。
そう、日々は雑事をこなすことで流れていくから、
年に数度のきらびやかなものに憧れるんだとおもうのです。

そ、お正月の前に大掃除ですね~。
頑張りましょ♪

雪の国からメリー・クリスマス!
アバター
2012/12/25 06:39
クリスマスの定番バレエというと
くるみ割り人形 (←食傷気味)
だけれど、シンデレラを上演していたのね

シンデレラ、音楽もなかなか斬新で好き
何しろ、プロコフィエフだから
「20世紀の音楽」なのよね~

大学部の卒業試験で、10曲を抜粋したシンデレラ組曲を弾いたの
だから、結構思い出深い
バレエビデオも、色々と見たしね~





これから、ミーハー気分で
教会ミサにちょこっと参加してきます

メリークリスマス!!!



月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.