Nicotto Town



初夢の続きは (12)

思い出したことがあるかい?

子供の頃を

その感触 その言葉 その気持ち…。



そういえば、いつも何かを追いかけていたっけ

青空をふたつに分ける飛行機雲

アスファルトの上をどこまでも逃げる不思議な水

そして、いつも一歩先を歩いていたアイツの背中



いつ見失ってしまったのだろうか…?

覚えていない

大人になっていくにつれ

何かを捨てていくって誰かが言ってた

そんなありふれたモノの

ひとつに過ぎなかったってことなのかな?



時間は待ってはくれない

こぼれ落ちる、時の砂を握り締めても

手を開けばまた落ちていく…。

今ゆっくりと、記憶の上に堆積していた砂が

風に払い除けられていく……。





『初夢の続きは』 scene12 『Innocent days』




いつから3人一緒だったのだろうか?

僕は覚えていない。

いつの間にやらそばに居て、

僕らは笑いあい、泣きあい、慰めあい、励ましあい…。

そうしてたくさんの時間が過ぎていった。

そこには、疑いようのない永遠があったし

何より僕らは、3人でいることに夢中だった。

先頭を行くのは、いつも松梨だ。

身体も大きく腕っ節も強く、行動力も男子顔負け。

気が付いたときには3人のリーダーのような存在になっていた。

2番手は、僕。いつも勝手に突っ走る松梨に必死についていっていた。

足の速さでは松梨に負けないのだが、追いつけないのには理由があった。

その理由が梅子。すごく人見知りで内気な子。

僕のシャツの裾を握っていて離そうとしない。

その為、自然と梅子に合わせるような速度で歩いてしまうのだ。

こんなちぐはぐな三人組が、毎日縦に並び、横に並び商店街を駆け巡っていた。




「瀬戸神社に行こうよ!」

ある日突然松梨は言った。

突拍子もないのはいつもの事だが、なんだろう? 

今回は少し違って思えた。

彼女は割と飽きっぽくて言い出したは良いがすぐ

「い~ち抜けた~」

と別のものに興味が行ってしまう。

けれど今日のは、それとは別で強固な意志が根底にあった気がする。

それが微かな違和感の正体なのだろうか?

よくは判らなかった。

「瀬戸神社?」

僕は、さらに頭を捻った。

「瀬戸神社…瀬戸神社……」

何度も念仏のように口に出してみたが、その場所に心当たりはなかった。

諦めて横にいる梅子の顔を覗き込んだが、

彼女も首を左右に振るだけで、心当りは無いようだった。

なるほど、2人とも知らない場所か…。

改めて松梨に、向き直って聞いた。

「その神社ってどこにあるの?」

「あの山の上」

松梨の指差す方向には、確かに山はあった。

ただし、随分と遠くに…あるようにそれは見えた。

「あんな遠くまで、何しにいくのさ?」

「決まってるでしょ! 神社にはね~願いを叶えにいくのよ!」

僕の質問に松梨は、少し得意気に言った。

「そんな話聞いたことないけど…本当に叶うの?」

「叶う叶う! この私がいままで嘘をついたことがあった?」

松梨は大げさにふんぞり返ってみせる。

よく考えたら嘘をついたことはあったような気もするが

そこを突っ込む気にはなれなかった。

なぜならこうなった松梨が止まらないことを、僕も梅子もよく知っていたからだ。

「わかったわかった、梅ちゃんも行ける?」

梅子は、ぶんぶんと音がしそうなほど懸命に首を縦に振っていた。

ひょっとしたら梅子にも、なにか願い事があるのだろうか?

大げさなアクションを見せられるとそんな気がした。

「じゃあ、行ってみるか」

振り返ると松梨は、もう歩き出していた。

「そうと決まればしゅっぱーつ」

「おい! 勝手に行くなよ! 道知ってるのお前だけなんだから!」

僕も慌てて梅子の手を掴んで松梨の後を追いかけた。



小さな勇者様ご一行は、駅からまっすぐ大通り商店街を進み、

突き当たった国道を山に向け右折した。

梅子は、自分のテリトリーから離れていくことで少し不安な顔をした。

言い出した松梨も、やや不安げな表情を浮かべる。

しかし、僕は何故だか不安よりも腹の底から湧き出る勇気のようなもので満たされていた。

強がりではなく時々こういうことがある。

何故だか冷静でいられるのだ。

帰り道を忘れないように、辺りの景色を必死に覚えながら歩みを進めていく。

こうした冷静さに、時々自分はすごく強いのか? と錯覚することがある。

ただし僕の考える強さは、

松梨に見ているような「わがまま」や「自分勝手」に通じるものだと思う。

そんな強さだったら、あまりありがたいものでもない。

それゆえ普段は、それを嫌悪しているのだが、

時々スイッチが入るみたいにふっと出てくるのだ。

なんとなく今、それがオンになったように感じた。

『男は僕だけなんだ』

そのことが、必要以上に奮い立たせているのかもしれない。

歩きながら、頭の中で何度もその言葉を復唱していた。




しばらく歩いていくと急に空が広くなった。

無論、空の大きさは一定で変わったりはしない。

視界を遮る塀が無くなっただけのことだ。

しかし、すごく遠くまで来てしまった。

そう感じさせるには十分だった。

途端に取り巻く風が変わった。

道の両脇が、コンクリートから黒土へ変わったせいだろうか?

並んだ植木鉢や街路樹、そしてそれらに撒かれた水のせいで

土からは湿った濃い大地の匂いがした。

立ち込めた土の香りは、鼻腔をくすぐり

ほんの少しだけ、疲れを取ってくれる様な気がした。

アバター
2013/02/10 12:56
今日はここまでで^^

楽しみは残しとかないと・・・
アバター
2013/01/21 22:56
恭介さん、こんばんは•θ•ฅ"

続き待っていました(`・ω・´)✧
今後どうなっていくのか。。とりあえず、大人しく待っていますね^^笑



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