Nicotto Town



もうひとつの夏へ (2)

大富豪ビル。文字通りどこかの大富豪が道楽で建てた物だとか、奇抜な外観が、その信憑性を疑いないものにしてしまう。
(大体、金持ちの感性ってのは一般の常識からは大きく逸脱しちまうものだからな・・・)
そんな事を、おもいながら入り口へ立つ。
自動ドアをくぐり、受付を探す。すぐに見つかったのだが、そこで足が止まった。
受付にいる人物は、少々普通ではなかったからだ。

頭は黒髪のロング、それだけみれば、極普通だ。
だが、身に着けているものが、振袖。
外は30度を超す真夏日だぞ?
正月でもあるまいし、振袖だと?
あっけに取られて、少々立ち尽くしていたらしいが、受付の女性はまるで意に介する風でもなく動きを止めたままだった。
よくみると、トータル的な雰囲気は、あのゆうゆにどこか似ているような気がした。
頭を左右に二度三度振り、受付へと近づく。

封筒を恐る恐る差し出すと、彼女は無表情のまま、何もいわずカンターの下へと手を伸ばした。
カウンターの上に出された白い手には、「00」と書かれた古めかしい鍵が握られていた。
彼女は、その鍵をカウンターに置くと、再び元の姿へと戻ってしまった。
(説明もなにもない、00号室へ行けってことなのか?)
右手でしっかりと鍵を握り、質問をとても受け付けなさそうな、雰囲気の彼女に背を向け受付を後にして部屋を探すことにした。
廊下は、外観とは違い、落ち着いた年代を感じさせる作りだった。
本当に、金持ちのかんがえることは判らない。
数字のついた部屋を遡るように進んでいくと、01の先に00と書いてある扉を見つけた。
(一体この部屋に何があるというんだろう?)
ゆうゆのことだ、僕をからかったり、騙すようなことはないだろう。
虎穴に入らずんば虎子を得ず、行って見るしかないか・・・。
覚悟を決めドアノブの下にある鍵穴へと鍵を差込みゆっくりと鍵を回す。

「カチリ」
乾いた音が、静寂に包まれた廊下を駆け抜けていった。
ゆっくりとドアノブに手を掛け、回す。豪奢で重々しいドアが開いた。
電気がついていないためなのか室内は薄暗く良く見えなかった。
(ちょっと怖いけど、行くしかないよな・・・)
意を決して、室内に飛び込んだ   はずだった・・・。
「あれ?」
確かに今、右足から部屋に入ったはずだったのだが、今僕は扉があった方を背を向け廊下に立っている。
「ええ?」
あわてて後ろを振り返るがそこは壁・・・。扉なんて最初からなかったように壁がズンと存在感を示していた。
歩いてきた方向に目をやる、隣は01号室、そう完全に00号室は消えていた。

どういうことだろう?なにがなんだかわからない。
やっぱりいたずらか?ドッキリか?だが此処で考えても埒が明きそうになかった。
(とりあえず、黒髪の彼女に聞いてみるか)
歩いてきた廊下を戻り、とりあえず受付に戻ってみることにした。

だが受付には黒髪の女性はいなく、別の女性がいた。
栗色の短い髪、人当たりの良さそうな顔、一般的基準なら十分、美人の範疇だ。
服装も、振袖などではなく、スーツを着ていた。
(振袖よりは、余程受付向きだな)
心の中でクスリと笑ってしまった。
「あの、00号室が消えてしまったんですが」
受付の顔がガラリとかわる。(は?何言ってんの?)とでも言いたげな訝しげな表情でこちらを見ると
「当ビルには00という部屋番号はございませんが」
感情の無い冷淡な台詞で言ってのけた。
「は?」何を言ってるんだよコイツ・・・。
とりあえず、事情を話すが、どうにも要領を得ない。コイツじゃだめだなと思い。
さっきまで此処に居た振袖の人を呼ぶように話したのだが、そんな人は居ないと言う。
押し問答の末、最後には
「ナンパでしたら、仕事中ですのでおやめください。警備員を呼びますよ」
といわれる始末、本当に警備員を呼びそうな雰囲気だったのでしかたなくビルを出ることにした。

ビルを出ると、そこは人で溢れていた。
「え?」
僕は目を疑った。道路に人が溢れていたのだ。
ここの歩行者天国は3年も前に解除されているはずなのに・・・。
まるで時代を逆行してしまったようだった。
そういえば、どことなく行き交う人も、すこし時代からずれているように見えた。
「まさか・・・な」
直感的に、脳裏に閃くものがあった。
コンビニの位置は判っていた。すぐに入り雑誌を手にする、一目でわかる昔の雑誌だ・・・。
どれも今では、連載されていないものばかりがそこには並んでいた。
(ということは、やはり・・・?)
次に新聞を見てみる、記事ではなく日付を・・・8年前の8月31日・・・。
どうやら僕はあの日に帰ってきてしまったらしい。
夢か幻か、それとも壮大なドッキリなのか、もう訳がわからなくなっていた。
(2度目のあの夏か・・・なら)
「やることは、ひとつしかないか」
誰に言うでもなく、言葉をひとつ吐き出して、@ニフティ駅へと歩を進めていった。

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2010/01/03 22:22
Re:まいさん

舞台は、ニコットなんですよ~楽しんでいただけているようで幸いです。
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2010/01/02 18:07
ニコタのことが織り交ざってるんだね^^

おもしろいよお^^

もうちょっと、読んで帰ろう^^
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2009/08/21 16:35
よしっ!戻ったんだね(=^・ω・^=)
はてさて、佳代はやってくるのでしょうか・・・・
また来なくて、また死んで、また過去に戻って、また来なくて、また死んで・・・
そんなオチじゃ許さんよww
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2009/08/21 00:30
Re:ごえっちさん

何度覗いても、先には進みません・・・。すみません。

やはり佳代さんなんでしょうか?ゆうゆさんか恭ちゃんなのかもしれませんが・・・。

できるだけ、2日に一回は更新したいのですが・・・。過去記事でガマンしてくださいw
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2009/08/21 00:27
Re:ちょこあいすさん

駄文、乱文をお読み頂きありがとございます。

無駄に長くなってますが、これでもかなりの部分をカットしていますw

8月中には完結しますので、もう少しお付き合いください。
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2009/08/21 00:25
Re:にゃんぴちさん

いつも感想を寄せて頂きありがとうございます。

準備期間ほぼ0、細かいディティールを入れることもできず。ほぼ箇条書きなんですが

一応完結はさせる気ではいます。7割くらいは書き終わってますしね。
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2009/08/21 00:23
Re:優花:* さん

ありがとうございます。昨日の時点だったら、まだキャストに入れたのですが(振袖の受付役)

もう新しい人を登場させることは無さそうです・・・。また機会があればね。
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2009/08/20 20:28
で、で?どうなるの〜。
つづき気になって何度ものぞきにきちゃいました。
名前が気になって他人事とは思えない…。
他人だけど(苦笑)
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2009/08/20 19:57
あの夏の日に帰ったのですね!!
あの日の想いが 蘇るでしょうねぇ・・・。
続きが気になります✿
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2009/08/20 19:39
そっか~

8年前に戻ったんだ~

そだね、やることは一つ!

今後の展開をたのしみにしてます♪
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2009/08/20 10:51
話つくるの上手だよね^^
なんかリアル感がある~
私も話の中に出してほしいくらいだよ^^



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