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日本妖刀列伝:八



『八文字長義』は、南北朝の刀鍛冶、備前長船長義の作品である。

長義は備前長船本流とはやや趣の変わる作風であるが

凄まじい切れ味の伝説を持つ作品を幾つか生み出す。

六股長義や山姥切といったところがその代表だろうか。

この刀、元は奥州岩城の岩城家の所蔵品であった。

岩城家の娘が佐竹家に輿入れした際に贈られたものであり

この娘こそが、あの佐竹義重の母親である。

戦国一の暑がり 戦国一の萌え系ツインテールの異名もある

佐竹義重はこれを普段差しにしていた。

義重の佩刀『八文字長義』

この刀はいかなるエピソードを持っているのか

伝承を紐解いていくとしよう



時は戦国 永禄10年(1567年)

北条氏政は小田原を発ち、下妻城へ向かった(下妻城は現茨城県西部)

「と、殿ぉ~一大事です!北条の大軍が攻めてきました!」

下妻城主 多賀谷政経は、そんなに豪の者って訳ではなかった。

「はわわわ どうすれば良いのじゃ」

「北条が大嫌いなあの男に助けてもらいましょう」

「それは名案! さっそく馬を飛ばせ!」

こうして、多賀谷政経は佐竹義重へと救援を求めた。



「何? 北条~?」

義重の顔が苦虫を潰したように変わった。

この男、北条と伊達が大嫌い。

自分家のすぐそばに北条の領土があることには

到底耐えられそうになかった。

「こんなとこまでノコノコやってくるとは…… 上等だよ やってやるぜ!」

義重は二つ返事で救援を了承。

たちまち軍を召集すると即座に下妻城へと向かった。



「はわわわわ 囲まれちゃいました」

その頃多賀谷政経は、まだしぶとく北条の攻撃から耐えていた。

「今しばらくの辛抱です! 奴は必ず来ます」

「早く来てくれぬかのう~」

すると彼方から砂埃が近づいてきた!

「よう~待たせたな 生きてっか? 政経」

「義重!」

砂埃の正体は、佐竹義重の騎馬軍であった。

「よーし これより北条どもをぶっとばす! 俺に続け~」

義重は先陣を切って北条の陣へと向かった。

北条の軍のほうでも、義重の援軍は確認しており

軍の一部をそちらへと差し向けた。

「先頭にいるのは義重だと!? ふざけおって

 誰かあいつを止められるものはおるか?」

「ここにいるぞ! 我に任せられよ!」

一人の騎馬武者が名乗りを上げた。

北条でも腕利きの男だ

「おお、お前ならば……。 任せたぞ!」

「御意!」

男は義重目指して一目散に馬を走らせた。



「なんだお前?」

義重は、目の前に立ち塞がった騎馬武者を一瞥した。

「貴軍の勢いここで止めさせて頂きます」

「やれるもんならやってみろよ」

「しからば、お覚悟を~」

騎馬武者は馬上より、二度三度剣撃を加える。

されども、義重には届かなかった。

「間合いが遠すぎる 刀ってのはこう振るんだよ!」

義重は大刀を騎馬武者の頭上から一撃した。

その一撃は被っていた兜をまるで紙でも切るみたいに

容易く真っ二つに切り裂きそのまま頭部をも真っ二つに割った。

割れた頭部は、騎馬武者の騎乗していた馬の左右に八文字を描いて落下した。

この凄惨な光景に、味方は鼓舞し、敵方の北条軍は畏怖した。

北条軍は、勢いづいた佐竹軍に押し戻され下妻より撤退した。



「いや~とんでもない切れ味っすね。 

 八文字に首が落ちるなんって初めて見ましたよ」

「八文字…か……。悪くない響きだ」

こうして義重は自らの愛刀を八文字長義と名付けたのだった。





さて今回のお話、いかがだったでしょうか?

兜の上から真っ二つって、どういう切れ味&腕力してるのやら……。

全く鬼と呼ばれた男に相応しい武器ですね。

尚、オニヨシさんこと鬼義重の活躍は

鬼を名乗りて 巻の2で詳しく書いておりますので

興味のある方はこちらをどうぞ

http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=226561&aid=47671588




                                 日本妖刀列伝:八 『八文字長義』












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