Nicotto Town


グイ・ネクストの日記帳


短編:日向昇(ひなたのぼる)と五十鈴(いすず)


陰陽師の卵を育てる学園が関東平野のどこかにある。

そこは山の谷と谷の間にこっそりと造られた学園で、人里からは隔離されている。

普通なら誰も気づかない。近づかない。

そういう日本の秘境のような場所だ。

もしかしたら人工衛星の写真でも見ながらじゃないと発見できないぐらい秘境かもしれない。

とにかくその秘境に日向昇はいた。

「全ての穢れを祓ってやる」

それが口グセで、穢れ、つまり妖怪たちを倒す事に命をかけていた。

幼い時に穢れに両親を目の前で食べられた事が原因になっているようだ。

彼の仇(かたき)の妖怪はこの学園の洞穴に捕らえられていた。それとも妖怪は自ら彼を食べに来たのかもしれない。

妖怪の名は目無し。

妖怪としては上級の部類だ。自分が喰らった人間の怨嗟の炎を心地よい叫び声として楽しむ趣味がある。

鬼を喰らう鬼。そのようにも呼ばれている。

今回の日向昇の例が良い例だろう。

両親を喰らった事で、自分に復讐する鬼を創る。

その鬼を絶望させて、喰らう。

それが楽しくて仕方が無いのだ。

目無しのいる洞穴は陰陽師の過程を全て終えて、かつ、成績が上位3名に選ばれる必要がある。

洞穴の名は魔王の洞穴。

地下10階まである事と、魔王クラスの上級妖怪が住みつく事からそう呼ばれている。

日向昇は成績はトップでこの洞穴に入る権利を得た。

だが、2位と3位のモノは洞穴に入る事を断ってきた。当然と言えば当然だろう。まさに生と死を賭けるのだから。

入るモノが1人では学園としても許可は出せない。

そこで特別に陰陽師を雇う事になった。

洞穴に入る当日。日向昇はいつもよりも早く起きた。

午前4時と言ったところだ。まだ日は暗く、鳥のさえずりが聴こえる事が静けさを物語っている。

水で顔を洗い、「ふぁーいい朝だ」と、昇はタオルで顔を拭いた。

(いよいよ、今日か。校長は「最高の陰陽師を安倍家に依頼しておいたから安心しなさい。」などと言っていたが、どんな奴が来ることやら)そこまで考えて頭を振ってから床掃除を始めた。これまでの辛い訓練の日々を思い出していた。(呪力だって強くなった。父さんと母さんを失った頃とは比べものにならない。見ていろ。必ず貴様を祓ってやる!)そう、力んで雑巾をしぼった。と、そこに「肩の力が入っているね~。ここのお手伝いさん?まあまあ、落ち着いて。落ち着いて」と、声をかけられる。

「何だよ、こっちは魔王の洞穴に入る前で苛立っているんだ。気安く声をかけるな!」と、昇は怒鳴り返した。

「おお~怖い、怖い」と、声の主はおどけてみせる。

そこには目の細い白髪の男の子がいた。

「・・・見かけない奴だな・・・どこから来た?」と、昇は聞く。

「さて。気安く話しかけるな、では無いのかな」と、男の子はとぼける。

「いいわけするな!お前は誰だ!?」と、昇は怒鳴ってしまう。

「先に名乗るなら教えてやってもいいけど。今は名乗らない」と、男の子は笑う。

「俺は日向昇だ。この学園でトップを取った男だ」と、昇は胸を張って自慢する。



すみません、眠いのでまた明日書きます。




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