【短編】君が欲しい……。
- カテゴリ:自作小説
- 2016/12/23 15:31:42
「今日も会えなかったなぁ……」
ここ最近彼に会っていない。
っていても彼が悪いわけではない。
悪いのは、仕事とプライベートをしっかり管理できない私のせいだ。
自分の仕事だけなら、難なく終わらせることができたのに、少し余裕ができただけで、人の仕事まで引き受けてしまう。
周りから陰で、「都合がい時に使える」とか「自分は仕事っできるって顔してうざい」とか言われているのもわかっているが、断ることができない。
自分が犠牲になればいいなんて思ってるわけではないが、仕事自体は必要なことなのだから断って投げ出すわけにもいかない。
だからって恋愛の時間を作れないのは、単なる言い訳だよね……。
断ることは断る、私がそれさえできれば何の問題もないはずなのだ。
だから悪いのは全部私。
そんな自己嫌悪ことを考えながら、クリスマスの今日も私はひとりで自宅のベッドにいた。
会いたいなあ……。
そんなことを考えていた時だ。
「今晩は、お嬢さん」
「!」
声色を変えてはいるが、その声には聞き覚えがあった。
「幸人さん…?」
「おや、もうわかってしまったのか?」
そう、この人は私の恋人の篠宮 幸人さん。
私の勤めている会社の社長さんでもあるのだが、なぜか今、私の目の前にいる。
「あ、あの、ど、どうしたんですか…?こんな時間に……」
「君は…こうでもしなければ会えないだろう?今日もまた、残業か?」
「うっ…はい」
もっともなことを言われてしまい、返す言葉もない。
「君が、優秀な秘書であり、仕事熱心なことは認めるが……恋人としては、もう少し時間を作ってほしいものだな?」
「ご、ごめんなさい…」
ううっ…優しい笑顔の裏に、にっこりとブラックスマイルを浮かべた、幸人さんが見える…。
口調こそ優しいが、相当ご不満のようだ。
ここ1ヶ月まともなデートをしていないのだから仕方ない。
「ごめんなさい…ほんとにすみません…」
「まあ…反省をしているようだし、良い子にはプレゼントをあげるとしよう…」
「え…あ…」
手渡されたのは、薔薇の花束。
幸人さんはこういう素敵な演出が本当にうまい。
「ありがとうございます…嬉しいです」
「さて、では私にもプレゼントを貰おうか」
「え、えっと…」
「そうだな…今宵の君の時間を貰うとしよう…」
「あ…‥‥」
彼の顔がだんだんと近づいてくる。
「メリークリスマス…ひな…君が欲しい…」
「!」
私が答える前に、彼によって私の唇は塞がれる。
ひとりっきりで過ごすはずだったクリスマス。
突然の彼の訪問で、とても……素敵な時間になった……。
END
あとがき
クリスマスネタを書こうと思ったのですが、あまりうまくいきませんでしたね;;
ほんとは彼にサンタのコスプレをさせようかとも思ったのですが、ラストを考えてやめました。
感想など伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。