【短編】ご主人と彼女
- カテゴリ:自作小説
- 2018/02/28 21:46:56
俺は黒猫の「くー」。
ペットショップにいたところをご主人に買われた。
「くー」っていうのもご主人につけられた名前だ。
男に飼われるなんてついてないと思ったが、ご主人は、あまり俺を束縛しなかった。
ご主人は大学生ってやつをやっていて、家にあんまりいない。
だが、俺の餌なんかはしっかり用意してくれている。
だから俺も基本的には好きなことをしていられるわけだ。
この日ご主人は、彼女の家に行くらしい。
俺も連れて行く気だったらしく、用意をしていた。
狭いケースに入るのはごめんだったが、彼女の顔を見てみたかったので大人しくすることにした。
「!!昴さん、その猫…」
「この間、店に行ったとき気にしてただろ?」
ご主人に抱えられて彼女の前に出ると、俺は彼女の顔を思い出した。
俺がペットショップにいた時、瞳を輝かせて俺のことを見ていた子だ。
本来なら彼女が俺のことを飼いたかったそうだが、どうやら彼女は身体が不自由らしい。
だからご主人が俺の面倒を見ることにしたようだ。
俺に触りたいらしいが、うまく撫でられるか不安らしい。
(やれやれ、そんなに怯えなくてもいぞ、ほら)
ご主人が俺を彼女の膝に置いたタイミングで、俺の方からこの子にすり寄った。
「可愛い~!!名前はもう決めちゃいました?」
「ああ、一応な 。『くー』だよ」
「くーちゃんかー、よろしくねー!」
「あ、ちなみにそいつ、オスな」
「あ、そうなんですね!よろしくね!くーくん!」
そういって、彼女は俺にほほを寄せてきた。
「ひゃっ…もう、くーくん~、くすぐったいよ~!!」
「にゃ~(お、すまん)」
「ふふっ…あははっ」
遊んでいるうちに彼女が仰向けに倒れた時はさすがに焦ったが、幸いにもベッドの上なので、特に問題ないようだ。
やがて疲れてしまったのか、彼女が寝息をたてはじめたので、俺は台所の方にそそくさと逃げていったご主人の方に目をやった。
どうやら俺と遊んでばかりの彼女が気に入らなかったらしい。
(おいおいご主人…こんなことで嫉妬すんなよ…やれやれ…)
ベッドを降りて、キッチンの方に行き、ご主人を呼ぶ。
「にゃ~(おい、ご主人)」
「ん?どうした?飯ならもうすぐだぞ?」
「にゃ~、にゃ~(そうじゃねえよ、彼女のことだ)」
不思議そうにしているご主人を、とりあえずベッドの方に案内する。
「くーくん…昴さん…むにゃっ…」
「にゃ~(俺の手には負えないから、あと頼むな)
「なるほどな…教えてくれてサンキューな、これからは一緒にあいつを守っていこうな」
「にゃー?にゃー(ん?おう)」
「お、いい返事だ、よろしくな」
やれやれ、世話の焼けるご主人だ。
まあ、面倒見てもらうわけだし、俺がご主人のとこに来たのも、彼女のおかげみたいだしな。
見守ってやるよ。
END
あとがき
前回の作品の猫目線です。
前の作品書いてた時に思いついて、勢いで書いてみました~。
ではまた次の作品でお会いしましょう!