【第6話】黄昏のソロキャン
- カテゴリ：自作小説
- 2021/06/22 21:02:05
クマさんとしずかさんとのキャンプを終えた翌日。
2時限目の一般教養科目を受講し終え、俺は大学の校舎から出て学食に向かった。
外は初夏の風が一瞬吹き抜ける。
見上げれば、抜けるような青空がいっぱいに広がっていてさ。
お？前を見ると、神田さんが一人で学食に向かって歩いてる。
「神田さん？」
声を掛けると、振り向いた彼女は俺を認めて、一瞬表情が固まったように見えたのは俺の気のせいだと思う。
「天塚クン！」
次の瞬間、満面の笑みを浮かべた神田さん。惚れた弱みなんだろうな。すっごく素敵に見えてさ。
「こないだはゴメンね。どうしても抜けられない送別会に当たっちゃってさ…」
ぺこぺこ頭を下げる神田さん。いやいや そんなに謝らなくてもいいんだけどな。
「大丈夫っすよ。今度行きましょう。俺もクマさんとしずかさんの3人でキャンプしましたんで…」
神田さんは微笑んで、
「そうだったよね！で、天塚クンは夕食に何を作ったの？」
「いえ…相変わらず先輩たちにご馳走になっちゃって…。カレー作ろうって思ってたんですけど、しかもメインの肉忘れちゃったようで」
ウソだ。
ちょっと見栄張ったんだ。クマさんの燻製が美味しくて、カレー作る気力がなくなっちゃったってことは、何となくカッコ悪くて隠しちゃった。
「で…天塚クン、次のキャンプは何を料理する予定？」
学食の人気メニュー、中華丼を目の前に置いた神田さんは、頬にかかった髪を指先で摘まんでかき上げながらそう訊ねて。
「はい…そうですね…今度はステーキ肉を焼こうかなって考えてます」
ほう？という表情になった神田さん、左手に箸をとって（そうそう、彼女は実は左利きで）中華丼を口に運ぶ。
「スパイスは何にするの？」
「え…塩コショウにしようと… てか、ほかに何かいいアイデアありますか…？」
俺は、目の前のカレーライスにスプーンをゆっくり突き立ててみた。
神田さんはちょっと考える素振り。
眉根を少しだけ顰めるその顔に思わず見とれる俺。
「そうだなー パイナップルか…」
ぇ？
「…パイナップル…？ですか？」
神田さんは箸を動かしながら、中華丼を味わいつつ
「あーほんと！ここの中華丼はやっぱり絶品だわあ…」
ちょっとちょっと神田さん… 答えてないですよ？
「バーベキューだと、高いお肉を使うのはなんだか場違いよね。で、オージーかアメリカンビーフのお肉になると思うんだけど…これって味はいいんだけど硬いのよね」
「はい、一度アパートで焼いて食べたら、硬くて食べにくかったです」
神田さんは俺の目線を微妙に外してきた。
ん？なんだ？
「…だからさ、パイナップルの輪切りを何枚か、皿に乗せた肉の上においてさ、30分くらいそのままにしとくの。筋切りは忘れないでね。そしたらびっくりするくらい柔らかくなるんだよ」
本当ですか？
「本当だよー今度試してみて」
「はい分かりました… じゃあ、次の神田さんとのキャンプで試してみます」
「…ん そうだね…」
なんだこの 間…？？
微妙にずれてる感覚がまた襲ってきた。
その時だった。
俺は背後から誰かに肩を叩かれたんだ。
驚いて振り向くと
「蕃にーさんじゃないですかっ！私ですよっ」
小柄で、ショートカットの化粧っ気のない女子が、俺を見ながら笑顔でそう話しかけてきたんだよ。
「え…？あ…」
あわあわしてる俺、視界の隅に、不審そうに俺を見る神田さん。
「楓の友達の、沙也加ですよっ！忘れちゃったんですか？」
(続く
たとえば、「左利きで不器用なんだから丼ものはスプーンの方が食べやすいのに……今日に限って箸なのか」とか、「スパイスの話だったのに、なんでいきなりフルーツなんだよ」とかの、違和感とくっつけてあげると、神田さんの「ギクシャク」感。「上の空」感、この次にくる（くる？）波乱を匂わせる不穏感につながるのでは？
パインは、フレッシュ？缶詰？
神田さんの、様子・・・続きが、きになるね～～～(ΦωΦ)ﾌﾌﾌ…
視線をずらし、微妙にずれる間、、そして新しい登場人物。
どんな秘密があるのでしょう～～
お肉、パイナップルというか酵素で柔らかくなるんだよね
試してみよう！天塚くんもお料理頑張って作るんだよ～！