Nicotto Town


あなたに会えてよかった♪


【第8話】青空の行方~ゆくえ~


夕食を終えて、飯盒やら食器やら、炊事場で洗って後始末。周囲はもう真っ暗で、ところどころをわずかに照らすだけ。生徒たちはそんな田舎の暗がりを若干怖がりつつの片づけ行程だった。


「ん、椎名… どうした?なんかさっきから元気ないよ?」
洗い物をしていた沙也加の隣に来て、顔覗き込むように話しかけたのは一平だ。
「あー うん… いやその、あ!そうだ!」
「なんだ?」
「さっきのカレー、めっちゃ水っぽかったよね?誰が味付けしたの?」
話を逸らすように元気よく声を出そうとした沙也加だったが、一平から見てもそれはカラ元気だと分かったようだ。
しかしそれには触れず、沙也加の話題振りに乗っかって
「ああ、あれは中宮だよ。 確か椎名と同じ調理同好会だったよな?」

沙也加は少し複雑そうな顔をした。
「そうなんだよ… 由紀菜って実はめちゃ…言っていいのかな?」
一平は、沙也加が洗った食器を布巾で拭いながら
「何だ?メシマ…ズ なのか?」
「言わせる気?」
一平を睨む振り。

「あはは、まあいいさっ!で、椎名は明日の料理当番だろ?何作るんだ?」
「うん…明日は煮込みハンバーグの予定だよ」
「へぇ うまそうじゃん」
「うん、私の得意料理だもんっ!」
「得意料理ね…てかさ、本当は…それしか作れないんじゃないの?」
「何言ってるのよっ!」

いつの間にか、沙也加はついさっきの拓海とのいきさつを忘れて、笑顔になっていった。

「やっぱさっ… 椎名って、そうやって本気で笑ってるほうがいいよ」
一平もそれに合わせるように笑って、食器を保管箱に並べていく。
「でっしょー! てか、私って相当魅力ある女って感じなんだろうね」
ちょっと鼻をヒクつかせるような表情浮かべて、沙也加は一平を見た。

「はぁ?何言ってんの?調子乗ってるんじゃない?」
しかし沙也加は、別班の女子たちがこちらを見てひそひそ話しているのを、相手にわからないように指さして、
「だってね、富岳クンとこうやって話してるとさ…あの委員長の班とか、ギャル軍団の班とかさ、今にも切り込んでくるような物騒さを感じるもん」
「え?ああ あの連中かあ」
一平もわからないようにそちらに一瞬視線を飛ばすと、少しだけ肩を竦めた。

「わからないんだよね… 富岳クンってめちゃモテ系男子じゃん?」
「うん、それは認める」
「認めるのかよっ!そこは謙遜しなよっ!」
「はいはい」
「一平は正直に生きなさい…てのが、亡くなったおばあちゃんの遺言だからな…」

一瞬目を丸くした沙也加。
「ほ、ほんとなの?ごめん…」
「いやウソだよ」
「なんだとこら~~~~っ!」

片づけを終えて、しばしの自由時間。周囲は夜の闇に包まれているが、炊事場のあたりはその明かりが生徒たちの三々五々、散らばっては固まっての雑談タイムに突入していた。

「だからね、こうやって富岳クンと二人で話してるとさ、女子どもの猛烈な嫉妬の視線感じてね…これがめっちゃ気持ちいいんだ!」
沙也加はケラケラ笑っていて。何だろう?一平と話していると何となく素直になれるような、肩の力が抜けて本当の自分に戻れるような、そんな感覚に包まれていた。

「あ、一平って呼んでくれよ。俺も椎名のこと、沙也加って呼ぶから」
いつのまにか二人は、隣り合わせに並んで、炊事棟の壁の外側に座って星空など眺めていたり。
「あ、分かった… ん… えっと… いっぺい…?」
「なんだ?沙也加?」
「…なーんか照れるじゃんこうゆうのってさっ!」

「でもこんなに女子人気あってモテるのに、一平って特定作らないの?」
「なんでかなぁ… てかさ?沙也加は…なぁ?」
少し間が開いた。しばし無言の時間が流れていく。

「なに…?」
「沙也加だって彼とかいねーんだろ? ほら拓海は幼馴染だって言ってたし… 俺はてっきり沙也加と拓海は付き合ってるって思ってたんだけどな」

その瞬間、沙也加は、一平と過ごすひとときの前に、拓海から受けたショッキングな出来事を思い出してしまった。
表情が陰っていき、目線は星空から足元にゆっくり落ちていった。

「そうだよね。私も特定男子いないもんね… ほんとやんなるよなぁ」
一平は、沙也加を追いかけるように自らも顔を足元に向けていって、

「拓海をからかったりしたんだろ? あいつ案外真面目なんだよ、知ってるだろ?長い付き合いなんだから」
「うん…でもさ… 」
沙也加は足元に落ちていた小枝を手にし、地面に何回も〇を書いていく。
「あいつさ…宝生さんとなんだか変な感じなんだよね」
驚いたように一平は
「結衣とか? へー… そうだったんだな…」
「うん…」
「そっか…」

2人が黙り込んだ。その時だった。

「こらこらっ!お前ら早く風呂に入れっ! 順番決まってるんだぞ!」

いつのまにか目の前に、腰に手をやった槇原先生が、目じりを吊り上げて足踏ん張って立ちふさがっていた。
(続く











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2024/03/21 22:30
一平君は沙也加ちゃんに好意があるのかな?(ू•ᴗ•ू❁)
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2021/09/03 21:17
バジルさんどもです。コメさんきゅ^^

一平って、実は案外純情なんだろうって思いますw
しかしラジオ体操… それもいいかも いただきっ!
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2021/09/03 00:07
林間合宿は、3度の食事を、作るの??
メシマ-・ズさんの、当番は、もう済んだのね・・・・いじめちゃあダメですよ^^

星がきれいな夜は、何だか知らないけどハートが、トキメイテみんな、カッコイイ感じに見える??のよ~
若者たちよ、早寝早起きラジオ体操で、恋愛感情スッキリさせて過ごすのよ!!(ΦωΦ)フフフ…
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2021/09/02 23:31
ハチさん コメサンキュです!
幼馴染の男子いたのですね~ほうほうw

恋に発展するのって、案外障壁があるのですよねぇ… わかります。
恋ってそんなに簡単じゃないんですね…
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2021/09/02 23:30
sanngoさん コメさんきゅです。
富岳は、けーすけの隠れ推しキャラです(≧▽≦)

今後いい感じで… あ 流れがどうなるかだけどw
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2021/09/02 05:54
みんなの淡い思いが交錯しますね。青春だ~^^

異性の幼馴染って小さい頃からお互い名前を呼び捨てで呼んでたりしてて、
中学生くらいにあれっ?このまま呼んでてもいいのかな?って
ちょっと恥ずかしく思う瞬間がやってくるんだよね。
私の場合は恋に発展しませんでしたけど~ 笑
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2021/09/01 23:07
なんか波乱含み?一平くんってチャラ男っぽいけど意外と真面目?

おかげさまで腕が痛いのも忘れて楽しめたよ~♪




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