Nicotto Town


モリバランノスケ


満月

その時、TIMEは夜の九時。私達は、ベランダに出て、夜空を見上げている。そこには、絵に描いたような満月が息づいていた。辺りの様子、お互いの姿形を、ハッキリと、識別出来るほどに、お月様の光によって照らされていた。

愛犬クリも、チョコンとお座りして、一緒に、まんまるに満ちた月を眺めている。彼が、シミジミとした表情を浮かべて、語り始める。
<あなた方と過す時間は最高。ここまで来るのに、貨車、トラック、それに、フェリーの旅は一人になって、色々と考える良い時間だったけれど、とても、とてもとても寂しかったです>

私も、そうだろうナ、と想う。冬と春、秋と冬の変わり目に、彼に強いてきた、北南間のひとり旅。誰か他人に預けることを考えたこともあるが、移動は、彼の、たっての希望だった。考える時間を持てたのだから、ヨシしとしよう。

それにしても、と、私はつぶやく。(彼ら種の平均寿命は15年。出会えた縁は、大切に・・)

クリは、私の想いを、聴いていたのかもしれない。が、素知らぬ表情で、しゃべりはじめた。
<今度、探査機が月面着陸した精度は、素晴しい快挙ですよね。それに、着陸態勢に入る直前に分離された、小型カメラの性能も凄い!>。

私も、相槌を打つ。(本部(相模原)に送られてきた、本体が月面に着陸する映像には感動!あの丸い形状の小型カメラは、正に、頭脳を持ったロボットで小さな巨人。世に知られる玩具メーカーの主導で開発製造されたらしい。彼等の姿は、NASAの人工衛星からも捉えられている。年明け以降の暗い世が少し明るくなるネ)

今ここには、優しく照らし続けてくれる満月が在る。我々を、HAPPINESSの世界に招き、その後をも、深い懐へと手招きしてくれるのだ、と、大変良い気分に浸っているところに、お月様が語りかけてきた。

☆おいおい、今度のチョットした成功で、慢心してもらっては、困るな−−。果たして、今後、これが平和の目的に使われるのだろうか。毎日のように、君達の地球を観察しているけれど、現在の惨状はどうだろう。解決の糸口さえ見つからない難問が山積みではないか!。私から、言わせてもらうと、環境破壊、民族間の争いを即刻に中止し、全ての命が、平等に暮らしていける地球にならなければ駄目だ。その為には、国家、民族、宗教、思想、貧富、南北、の垣根を超えての人類統率、人類、植物、動物、その他類、全生命を大事に考える、ニューリーダーの登場が急務である。☆

月は、ここ迄話すと、フゥーと一息つき、(少し、疲れたようだ)と、沈黙する。心なしか、お月様の満面の笑顔が、真顔に変わっていた。

静かにして聴いていた、愛犬クリが話し出す。<含蓄の在るお話、有難うございます。お疲れになったでしょう。今夜は、もう、お休みください>。妻と私も、(お休みなさい)と、同調し、口添えした。





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.