Nicotto Town


モリバランノスケ


古道その1

私は、ロッキングチェアーに腰を下ろして、少し微睡んだようである。この古道を巡る様々な時代、行き交った様々な人々、そして、息づいていた様々な生命について、思いを馳せ、想い返していたのである。

それは、室町時代の末期、幕府の弱体化は、避けられない現実となる。財政基盤である荘園制度の弱体化が、それに拍車をかけた。その様な混沌とした情勢の中、勢力を持ったのが、源氏と平氏。両陣営は争い、平氏が勝利。源氏一族は、ことごとく抹殺される。だが、一族の系統者である幼子は、一時的に伊豆に幽閉された。

だが、彼は、スキを捉えて、そこを脱出。それから、海峡を渡り、伊豆半島に上陸。その時、半島縦断する逃亡に使ったのが、この古道だ。
周りは、彼を捉えようとする、平家側になびく武士が殆ど。苦労の末辿り着いたのがこの森。

これは、その頃も生息していた、老クスノキから聞いたのだが、その頃、直ぐ側に、洞穴があった。彼は、そこに、息を潜めて、身を隠していた。ここからは、私が、ここのブログ(2月19日)で紹介しているので、省略しましょう。

ただ、私は、こうして、ロッキングチェアーで微睡みながら、想い返していたのは、あの日あの時、この古道を、息も絶え絶えに、必死の形相で、一歩一歩足を運んで、やっとの思いで、ここまでたどり着くことが出来た彼の姿だ。

私は、微睡みから、我に返った。直に、古道楠木右が、話しかけてきた。

楠 (幼子が、やっとの思いで、ここまで辿り着
  いた時の、情景をよく記憶して居る。そこ
  に、湧き水から出ているだろう。彼は、手
  ですくって、本当に美味しそうに飲んでい
  た。そして、手頃な岩場に腰掛け休んだ)
私 (そうだったんですか!)
楠 (彼の左手は、山道難行で、山ヤブにやられ
  て、腫れていた。私は、そこの湧き水に浸
  ように促した。昔からこの地は、湯場と呼
  ばれていて、泉質は温泉。炎症した皮膚に
  効能が有る。直ぐに、その腫れはひいた)
私 (それは、本当に良かった。私も、日々それ
  は、実感してます)
楠 (私は、それから、少し丘を登ると、そこに
  洞穴が在るのでそこで休むように勧めた。
  そこは、仲間の老クスノキも居るし安心)

それは、幼児が、追い詰められ、切迫した状況の中で、光明を見出した瞬間であった。




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