小説『成瀬は天下を取りにいく』
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/08/09 11:24:49
宮島未奈 著
『成瀬は天下を取りにいく』を読みました。
昨年の本屋大賞受賞作です。
『すべての見えない光』という
700ページ超のシビアな小説を読み終えたときに
さすがに脳が疲弊しているように感じたので
次はサクッと読めそうなライトな本にしよう と
文庫化された本書を購入してみました。
生粋の大津市民で
大津市をこよなく愛する少女
成瀬あかりの物語。
人間はなぜ「普通」にこだわるのか?
中学生くらいから
「浮かないように」とか
「空気読め」とか
社会性という名の透明な縄でじわじわと縛られ…
まあ私もその一人で
大学に入ったばかりのころ
ロック系ファッション好きの友人に感化され
金髪にしよう と意気込んで美容院を予約するも
直前になって周りの反応が気になり
いつもの黒髪ボブ頭で
美容院から静かに去ったことがあるくらいには小心者です。
そんな私の目に映る
本書の成瀬はとにかく破天荒。
3年間で髪の毛は何㎝伸びるのか? という
素朴な疑問を検証するため
スキンヘッドで高校デビューを果たすなどなど。
彼女の辞書には
「忖度」とか「空気」とか
たぶん載っていないのでしょう。
物語はそんな成瀬と
彼女を観察する語り手=「わたし」の視点で進んでいくのだけれど
この「わたし」こそ全国の
“ちょっと普通でいたいけどちょっと変わりたい”読者の分身であり
「わたし」の感じる
気まずさ
迷い
そしてちょっぴりの羨望が
読む側の胸に刺さります。
自分もあのとき正直に「興味ないです」って言えたら とか
「お調子者」って思われてもいいからやりたいことやってたら とか
いろいろ考えさせられてしまうのです。
けれどべつに「変わらなきゃダメ」とかじゃないのが
この小説のいいところ。
成瀬は変わらない。
ただ堂々としている。
そして「わたし」もそんな彼女を通して
ちょっとずつ自分の輪郭を見つけていきます。
世界を変えるのは
いつだって“変なやつ”なのかも。
そう思えば
ちょっとくらいズレてる自分もまあ悪くないかな と
ちょっとポジティブな気持ちになれました。
『すべての見えない光』はボリューム感満点でしたね。
読むのに2ヶ月以上かかったけれど
心に残るすてきな本でした。
気ままに綴った拙い文章で恐縮ですが
お褒めいただきうれしいです♪
記事を書く励みになります。
宮島未奈さんの本、本屋さんで平積みされてますね~
別作品もいつか読みたいです。
私も「やりたい!」って思っても躊躇して
ついつい安全そうな道を選んじゃいます。
だからこそ成瀬のまっすぐさに憧れるし
読んでいてスカッとしました。
ちょっと元気になれる小説かと思います。
『あおぞらビール』、私の好きな森ハヤシさん脚本のドラマなのですね。
見たかったなぁ。
自由って、「時間や環境がある」ことじゃなくて
「自分で動き出せるかどうか」なんですよね~
踏み出すのってすごく勇気がいるし、怖いし
失敗したら… って考えちゃうけれど
その一歩こそが自由への入り口だったのかな って私も思います。
700頁はすごい量です
読了おめでとうございます
解説が分かりやすくて
小説や映画の理解・解釈が苦手な私には
とても助かります。
なるほど、そういう内容なのですね。
私も目立つのが嫌だし、他人からあれこれ言われるのが嫌で、
無難路線まっしぐらです。
自分のやりたいことをそのままやれる人の方がきっと少ないはず。
成瀬うらやましい!!!
ちなみに僕も金髪に染めたいと思いながら今に至っている一人です。