Nicotto Town



すごいぞ賢治!



宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」

 

 
 この物語の一番大事な点は、この物語の中心舞台が火山だということだ。噴火や地震は現代科学のウィーク・ポイントの領域だ。しかも火山は自然の最深部から吹き上げてくる最もデーモニシュな原初的なエネルギーを垣間見せる場所である。地震予知はまだまだ、従って自然と人間の共生などという課題は跡形もなく粉砕されている。得意気に地震予知を語る学者の鼻を容易に圧し折っている。

自然との共生は決して予定調和的に達成されるものではないと思い知らされる。


 この物語はコントロールできないダイナミックな自然と人間のバランスは犠牲を伴わずにはいられないということを教えている。カルボナード火山島に一人残るグスコーブドリのような「人柱」がどうしても必要である過酷な状況をこの「子供の読み物」で賢治はネグレクトしない。


 人はいまだに様々な恐怖に怯えている。愚かな戦争、核兵器の開発、ウィルスの蔓延。人間が自然に打ち勝ち、社会的な諸問題を克服し、ハッピーエンドに終わるという筋書きは見直されなければならない時代かもしれない。




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