Nicotto Town


藤宮ひなののんびりブログw


【後編】死神と天使

「退屈しのぎに上に上がってみたが…面白れぇもん見れたな…くくっ」
「!」
「悪魔…」

声の主は、1人の悪魔だった。

「ん?ってか、お前、落ちこぼれ野郎じゃねえか。仕事さぼって女とデートかよ…」

悪魔は僕のこと知っているらしく、ニタニタと笑みを浮かべて、こちらを挑発してくる。
からかわれるのはいつものことなので、僕が黙っていると…急に彼女が声を上げた。

「!この方は立派に仕事をされています!言いがかりはやめてくださいっ」
「!!…」
「へえ…ずいぶん威勢のいい天使だな…だったらよぉ俺も混ぜろってっ!!」
「!」
「きゃっ…」

彼女が僕をかばうと、悪魔は僕たちめがけ切りかかってきた。
僕はとっさに彼女を突き飛ばすと、自分の鎌で、相手の剣を受け止める。

「ど、どうしてっ…」
「逃げて…長くはもたない…っ…」
「で、でもっ…」
「逃げた方がいいと思うぜ?こいつじゃ俺には勝てねえからなっ!…」
「くっ…」

悔しいが、その通りだ。
死神の鎌はあくまで魂を狩るための道具で、武器としての性能はとても低い。
本来死神は、悪魔からの魂の強奪などに備え、護身用武器が与えられる。
しかし、本来の業務から外された僕は、鎌は自分の魂から作られるため所持しているだけで、ほかの武器などは所持してはいなかった。

でも…彼女は守らないと…。

この悪魔は、僕をからかっているだけだ。
彼女を巻き込むわけにはいかない。
とりあえず、彼女が逃げれる時間を稼げればそれでいい、そう思っていた。

だけど…。

「よお…お前…まさか…俺を足止めさえすればそれで済むとか思ってんじゃねぇよな?」
「!」
「甘いんだよ…お前の鎌を受け止めるなんざ、右腕で十分…まだ、左が残ってるぜ!?」
「しまっ…!」

彼の左手に魔力が凝縮されていく。
その攻撃がどこに向けられるかは、すぐに分かった。

「っ…」
「!」
「へぇ…」

相手の剣を強引に払いのけ、彼女をかばい、魔力による攻撃を身体で受け止める。

「だ、大丈夫ですか!?」
「き、来ちゃだめだ…っ…ぁ…」
「!!」

僕が、攻撃を受けたことに、動揺した彼女が駆け寄ってくる。
とっさにそれを止めようと、彼女の方を振り返った瞬間、僕の背中に痛みが走った。

「ぐっ…うっ…」
「よそ見してんじゃねぇよ…」
「きゃあああっ」

彼女の悲鳴が聞こえる。
そこ声をききながら、僕はその場に倒れこんだ。

「なんだよ…つまんねぇな…じゃあな、落ちこぼれ…」
「……」

僕が倒れたことで、悪魔は興味をなくしたらしく、その場を去っていった。


「しっかり…しっかりしてっ…どうしてこんな…」
「ごめんね…怖い思いをさせて…」

僕の横で彼女が泣いている。
どうやら僕は、剣で背中を斬られたらしい。
身体の感覚からするとおそらく致命傷だろう。

でも…彼女が無事でよかった…。

僕は、彼女の涙をぬぐおうと手を伸ばすと、彼女に触れた僕の指先が、砂のように崩れた。

「!だ、だめっ」
「ごめんね…もう君の涙も…止められない…」
「そんなのっ…いいんですっ…私の方が…貴方を傷つけることしかできないっ…」
「それは…違う…よ…」
「え…」

涙を流す彼女に、僕は必死に語り掛ける。

「君は…僕を優しいって言ってくれた…僕の仕事を立派だと言ってくれた…僕はとっても嬉しかったんだ…」

僕のこと…誰もが落ちこぼれとしか言ってくれなかったから…。

「すごく…嬉しかったんだよ…君が…僕を…救ってくれたんだ…」

君の笑顔が…とっても眩しくて…僕には…救いの光だった…。

「お願い…笑って…?君の笑顔はとても素敵だから…」
「…わかりました」

彼女は自分で涙をぬぐうと、出会った時のように、僕にやさしく笑いかけてくれた。

「こう…でしょうか…?」
「ああ…やっぱり…笑顔が…よく…似合う…」
「!」


彼女の笑顔を目に焼き付けながら…僕は静かに目を閉じた…。




END



あとがき

何とか…書きあがりました…。
最後の方…力抜けてたらすみません><




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