【後編】死神と天使
- カテゴリ:自作小説
- 2017/01/21 13:50:27
「退屈しのぎに上に上がってみたが…面白れぇもん見れたな…くくっ」
「!」
「悪魔…」
声の主は、1人の悪魔だった。
「ん?ってか、お前、落ちこぼれ野郎じゃねえか。仕事さぼって女とデートかよ…」
悪魔は僕のこと知っているらしく、ニタニタと笑みを浮かべて、こちらを挑発してくる。
からかわれるのはいつものことなので、僕が黙っていると…急に彼女が声を上げた。
「!この方は立派に仕事をされています!言いがかりはやめてくださいっ」
「!!…」
「へえ…ずいぶん威勢のいい天使だな…だったらよぉ俺も混ぜろってっ!!」
「!」
「きゃっ…」
彼女が僕をかばうと、悪魔は僕たちめがけ切りかかってきた。
僕はとっさに彼女を突き飛ばすと、自分の鎌で、相手の剣を受け止める。
「ど、どうしてっ…」
「逃げて…長くはもたない…っ…」
「で、でもっ…」
「逃げた方がいいと思うぜ?こいつじゃ俺には勝てねえからなっ!…」
「くっ…」
悔しいが、その通りだ。
死神の鎌はあくまで魂を狩るための道具で、武器としての性能はとても低い。
本来死神は、悪魔からの魂の強奪などに備え、護身用武器が与えられる。
しかし、本来の業務から外された僕は、鎌は自分の魂から作られるため所持しているだけで、ほかの武器などは所持してはいなかった。
でも…彼女は守らないと…。
この悪魔は、僕をからかっているだけだ。
彼女を巻き込むわけにはいかない。
とりあえず、彼女が逃げれる時間を稼げればそれでいい、そう思っていた。
だけど…。
「よお…お前…まさか…俺を足止めさえすればそれで済むとか思ってんじゃねぇよな?」
「!」
「甘いんだよ…お前の鎌を受け止めるなんざ、右腕で十分…まだ、左が残ってるぜ!?」
「しまっ…!」
彼の左手に魔力が凝縮されていく。
その攻撃がどこに向けられるかは、すぐに分かった。
「っ…」
「!」
「へぇ…」
相手の剣を強引に払いのけ、彼女をかばい、魔力による攻撃を身体で受け止める。
「だ、大丈夫ですか!?」
「き、来ちゃだめだ…っ…ぁ…」
「!!」
僕が、攻撃を受けたことに、動揺した彼女が駆け寄ってくる。
とっさにそれを止めようと、彼女の方を振り返った瞬間、僕の背中に痛みが走った。
「ぐっ…うっ…」
「よそ見してんじゃねぇよ…」
「きゃあああっ」
彼女の悲鳴が聞こえる。
そこ声をききながら、僕はその場に倒れこんだ。
「なんだよ…つまんねぇな…じゃあな、落ちこぼれ…」
「……」
僕が倒れたことで、悪魔は興味をなくしたらしく、その場を去っていった。
「しっかり…しっかりしてっ…どうしてこんな…」
「ごめんね…怖い思いをさせて…」
僕の横で彼女が泣いている。
どうやら僕は、剣で背中を斬られたらしい。
身体の感覚からするとおそらく致命傷だろう。
でも…彼女が無事でよかった…。
僕は、彼女の涙をぬぐおうと手を伸ばすと、彼女に触れた僕の指先が、砂のように崩れた。
「!だ、だめっ」
「ごめんね…もう君の涙も…止められない…」
「そんなのっ…いいんですっ…私の方が…貴方を傷つけることしかできないっ…」
「それは…違う…よ…」
「え…」
涙を流す彼女に、僕は必死に語り掛ける。
「君は…僕を優しいって言ってくれた…僕の仕事を立派だと言ってくれた…僕はとっても嬉しかったんだ…」
僕のこと…誰もが落ちこぼれとしか言ってくれなかったから…。
「すごく…嬉しかったんだよ…君が…僕を…救ってくれたんだ…」
君の笑顔が…とっても眩しくて…僕には…救いの光だった…。
「お願い…笑って…?君の笑顔はとても素敵だから…」
「…わかりました」
彼女は自分で涙をぬぐうと、出会った時のように、僕にやさしく笑いかけてくれた。
「こう…でしょうか…?」
「ああ…やっぱり…笑顔が…よく…似合う…」
「!」
彼女の笑顔を目に焼き付けながら…僕は静かに目を閉じた…。
END
あとがき
何とか…書きあがりました…。
最後の方…力抜けてたらすみません><
感想やリクエストなど伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。