【短編】君という存在
- カテゴリ:自作小説
- 2017/01/23 21:39:04
私が任務から帰還したとき、上官である、伊織 優さんに呼び止められた。
「お前…なんだその怪我は…また…無茶をしたな?」
「怪我では…ありません…」
「そうか…ならば…っ!」
「っ!?…ぐっ……」
怪我のことを聞かれ、とっさにごまかそうとしたものの、伊織さんの攻撃をよけるのは至難の業で、負傷していた私は、しっかりと、腹部に一撃を貰ってしまう。
かろうじて立っていられた私の身体から、力が抜けていく。
「どうした?いつものお前なら、この程度造作もないだろう…」
「ぅぅっ……」
こ、この程度って…。
この人は私がどれだけ腕がたつと思っているのだろう。
伊織さんは、隊の中でも、かなり強い。
そんな人間の攻撃を防げるわけがない。
「さて…行くとするか…」
「!!」
私は不意に、伊織さんに抱きかかえられる。
しかも、お姫様抱っこという恥ずかしい体制で。
「い、伊織さん!?」
「なんだ?お前は動けないのだから、この方が早いだろう?」
「だ、だからって…」
だ、誰かに見られたらどうするんですかっ…。
「抵抗するな。お前に拒否件はない……私のいうことを聞かず、無茶をしたんだ……しっかりとお仕置きしないとな……?」
「っ!!」
もっともなことを言われ、何の言い訳もできないまま、私は、彼の寝室に連行された。
彼の部屋を訪れるのは、これが初めてではない。
だが、こんな尋問のような状況は、めったにない。
「こんなに血を流しておきながら…よくも怪我ではないと言い張れたものだな…」
「すみません…っていうか、この状況…恥ずかしいです…っ…」
そう…私は今…ベッドの上で、伊織さんに組み敷かれている。
下着姿という恥ずかしい格好で。
「素直に傷を見せないお前が悪い…ほかに隠してる傷はないな…?」
「ほんとにないですっ…」
今、私の身体にあるのは、戦闘で足に負った傷と、先ほどもらった傷だけだ。
私の言葉に納得したのか、伊織さんは私の腹部の傷にそっとキスをする。
「ぁっ…」
「すまなかっな…痛むか…?」
「い、いえっ…大丈夫です…」
「頼むから…もう無茶をするな…」
彼の手が私の頬に添えられる。
「我々は軍人だ…その命は…いつ落とすとも知れない…だからこそ…大事にしてほしいんだ…」
「伊織さん…」
「今の私は……お前を失うことには、耐えられそうにない…」
「ぁ‥…」
彼が私の耳元でそうささやくのを聞いて、私は自分の顔が赤くなるのを感じた。
普段彼は私に愛を囁くなんてことはあまりしない。
その彼が切なげな顔で私を見つめている。
心配してくれてたんだ…。
私は彼の首に腕を回して、そっとキスを返す。
「!ひな…」
「私も…愛してます…」
これからもずっと…貴方の隣にいます…。
END
あとがき
こんばんは。
ネタに困ったので、昔、二次創作で使ったネタを引っ張り出してみました;;
感想やリクエストなど伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。