【短編】鏡を磨く女
- カテゴリ:自作小説
- 2017/02/07 19:38:02
「ひな、すまないがこれも頼む」
「承知しました…」
私は執事さんから汚れた鏡を受け取って、それを仕事部屋である自分の部屋に持ち帰った。
「さあ…綺麗にいたしましょう…」
私はいつものように鏡を愛しむように磨く。
私がこのお屋敷に来たのは数年前、奥様の身の回りのお世話をするために雇われた。
しかし、奥様が私の顔にあった傷を気にされたため、すぐにそのお役目から外されることとなった。
すでにどの仕事も、人手が足りていたため、執事さんが私の処遇に困っていた時、奥様がこうおっしゃった。
「貴方、鏡の掃除だけは上手かったわね、なら貴方は、鏡を磨きなさい」
「承知しました、奥様」
以来私は、自室で独り鏡を磨くことが仕事になった。
不思議と私は、この仕事が好きだった。
「ああ…綺麗になりましたね‥‥」
鏡は、磨けが磨くほど、美しく輝きを増していく。
私とは逆のような存在だ。
「ああ…いけません…私のような顔を映しては…」
私は磨いたばかりの鏡に、白い布をかけて、保護をする。
時間になれば、執事さんが取りに来ることになっている。
私の顔にはとても醜い傷がある。
奥様のおかげて、私は、自分の醜さを再確認することになり、ここでこうしている。
「本当に…貴方達は…忠実に…すべてを映し出すのですね…」
どんなに汚れた鏡でも、磨けば、純粋に正確に、残酷に…現実を映し出す。
それでも、鏡を磨く誘惑からは逃れられない…。
これからも私は鏡を磨き続ける…それは私の運命…。
END
あとがき
こんばんは。
今回はちょっと重たい内容です。
そして、ちょっと短いです;;
感想やリクエストなど伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。