【短編】大切だから
- カテゴリ:自作小説
- 2017/02/24 00:34:12
「兄貴、大丈夫か!?」
「ああ…結城、おかえり」
俺は、家に帰ると、母さんから話を聞いて、慌てて兄「幸人」の部屋に飛び込んだ。
「母さんから聞いたのか?大丈夫だよ、悪かったな」
「ったく、びっくりさせんなよ…」
帰るなりいきなり「お兄ちゃんが倒れた」と聞けば、心配するなという方が無理だ。
「また、無理したんだろ」
「ん~、そなに無理してるつもりはないんだけどな」
兄貴が事故にあって身体が不自由になってからもう数年になる。
歩けるようにはならないかもしれないと医者は言っていたが、兄貴は俺たちが驚くようなスピードで、リハビリを続け、もう、車いすと腕の力で、たいていこのことはこなせるようになった。
「まあ、焦ってはいるかもなー」
「焦る?なんでだよ」
「お前に、がっかりされないように」
「ばっ、何言ってんだよ」
がっかりなんてするはずない。
俺は兄貴を尊敬してる。
事故にあったときはショックだったが、兄貴は全然変わらなかった。
出来ることに全力で、輝いてて。
「がっかりなんてしねぇよ…だから無茶するなよ」
「ああ…あ、結城」
俺が、部屋に戻ろうとすると、兄貴が俺を呼び止めた。
「何か、手伝うか?」
「いや、そうじゃなくて、ちょっとこっち」
「ん?…っ!!」
俺が兄貴の横に座ると、兄貴が俺の頭に手をのせた。
「な、なんだよ…」
「お前が…なんか悩んでたみたいだったからさ…」
「!」
兄貴は、ほんとにすごいな…。
俺は確かに、部活のことで悩んでもやもやしてた。
でも頑張ってる兄貴を見てると、とても相談できないって自分で勝手に卑屈になってた。
それなのに、兄貴はあっさり見抜いてしまうのだ。
「結城はもう頑張ってると思うから、頑張れっていうのは、言わないな。ただ、頼ってくれたらうれしいとは思ってるよ」
「兄貴…」
兄貴の言葉は、不思議なくらいすんなりと俺の心に染みていく。
それが心の奥底で、力に代わっていくのがわかった。
「兄貴、やっぱりすげぇや、俺、兄貴のこと尊敬してる。ありがとう」
「そうか?力になれてるんならよかったよ」
「兄貴ももっと俺に頼ってくれていいからな!」
「ああ、頼りにしてるよ、結城、ありがとう」
「おう!」
兄貴の言葉が俺の力になるように、俺も兄貴の力になれるような、そんな人間になりたい。
俺は、心にそう決めて、静かに部屋を出た。
END
あとがき
こんばんは。
今回は、ユーザーさんからネタ提供頂いた、兄弟ものです。
兄弟愛、うまくかけたかな?;;
感想やリクエストなど伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。