【短編】涙も全部受け止めるから・・・。
- カテゴリ:自作小説
- 2017/02/26 16:44:38
「先輩…こっち向いてください…」
「い、今は無理だよ‥‥」
「‥‥」
先輩の背中がかすかに震えている。
夕方5時、社員がみな帰り始める時間、給湯室の横を通りかかると、先輩の姿が見えた。
声をかけようとするとかすかに、嗚咽が聞こえた。
先輩‥‥また1人で泣いて…。
「お疲れ様です、先輩帰らないんですか?」
「!あ、お、お疲れ様…上村君…」
俺に気づいた先輩が精いっぱい明るい声で答えてくれた。
でも、声に震えは残ったままで、先輩は俺に背中を向けたままだ。
「…先輩…こっち向いてください…」
「ご、ごめんね…今ちょっと手を離せなくて…」
「…先輩…失礼します…っ!」
「え?…!」
俺は、先輩の身体を強引に引き寄せ、顔が見えないようにして、強く抱きしめた。
「う、上村君っ…放してっ…」
「先輩…我慢しないで…」
「!」
先輩は、人に気を使いすぎだ、上司にも同僚にも部下にも、きっと、恋人にもうまく甘えられないのだろう。
でも…それは…辛いですよ…先輩…。
我慢し続ければ、心に負担がかかる。
自分の心にひびを入れつづけ、いつか心が壊れてしまう。
そんなの…黙ってみてるなんて俺にはできない…。
「上村君っ…駄目だよっ…私っ…」
「わかってます、俺のいっっぽう的な気持ちだって。ちゃんとわかってますから…」
先輩の恋人は、俺も憧れるよなすごい優秀な人で、先輩のことも、とても大事に想っているのが伝わってきた。
だから、そんな2人の関係を壊す気なんかない。
「先輩は…悪くないんです。俺のことなんか利用するぐらいの気持ちでいてください…」
「そんな…」
今、自分でもずるいことを言ったと思う。
先輩がそんなことできる人じゃないって、一番わかっているのは、俺なんだから。
それでも、俺は、先輩が大切だから…。
「俺に気なんか…使わなくていいですから…全部受け止めますから…我慢しないで…」
先輩の悲しみも、苦しみも‥‥涙も…全部受け止めますから…。
END
あとがき
こんばんは。
今回は、自分で考えたネタです。
会社での一コマですね。
こんな風に甘えさせてほしいものですよね><
感想やリクエストなど伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。