【短編】最後の約束
- カテゴリ:自作小説
- 2017/03/01 21:50:54
身体の力がだんだんと抜けていく。
「ああ…もうすぐなんだ…」
私は自分の死期が近づくのを感じている。
この病院には、子供のころから入院している。
病名は自分でもよくわからないくらい難しいもので、両親が泣いていたことだけは覚えている。
いや、もう一つだけ覚えていることがある。
入院し始めてすぐ、40℃の高熱を出してうなさていたとき、窓辺に1人の少年がいた。
「こんにちは。苦しい?大丈夫?」
「ぅっ…誰…?」
彼は、答えることなく、私の額に手を当てると、私の身体から熱が引いていった。
私が驚いて彼を見上げると、彼は、悲しそうな顔で私に言った。
「ごめん…こんなことしかしてあげられないんだ…ごめん…でも…君の最後は…必ず僕が迎えに来るから…」
「え…?」
私が答える前に、彼はいなくなってしまった。
その時は夢かと思っていたけど、今ならわかる…彼はきっと…。
私がそんなことを考えていた時…。
「こんにちは…迎えに来たよ…」
「!」
あの時と変わらない姿で、彼が現れた。
「やっぱり…死神さんだったんですね…」
「うん…ごめんね…君に会いに行ったあの日…君の寿命が決まった日だったんだ…」
そういうと彼は、辛そうな顔のまま、いろいろ話してくれた。
あの日彼は、初仕事で、自分が回収する魂の持ち主を確認しに来たらしい。
そして、熱でうなされている私を見て、とっさに熱をとってくれたのだという。
「僕たち死神はね…自殺した人間の魂なんだ…記憶がない子もいるけど、僕には記憶がある…僕は学校のストレスから逃げるように簡単に命を投げ出してしまった…だから病気で苦しんでいる君を見たときに、僕はとても…胸が苦しくなった…」
「死神さん…」
「君は…僕と違って一生懸命生きようとしているのに…なのに…」
「ありがとう…」
「!」
彼の想いがうれしくて、私は彼の顔に手を伸ばし、涙に触れた。
「もう…時間だ‥‥目を閉じて…」
「うん…あ、そうだ…」
「うん?なに?」
「約束を…守ってくれて…ありがとう…」
「!お礼お言うのは、僕だよ…君は…僕を救ってくれたんだ…」
「!」
そういうと彼は、お礼だと言って私に優しいキスをくれた。
そして、彼の右手が私の心臓に置かれると、私の意識は、ゆっくりと遠のいた。
翌朝、見回りに来た看護士が私の死亡を確認した。
私の死に顔は、驚くほど穏やかだったそうだ。
END
あとがき
こんばんは。
今回は、自分で考えたネタです。
病気の少女と死神の少年です。
最初は大人の死神にしようと思っていたんですが、書いてるうちになぜか少年になってしまいました。
私にも謎です笑
感想やリクエストなど伝言板記事にいただけたら、泣いて喜びます。