Nicotto Town



好きなお弁当のおかず


私が子供の頃住んでいた地域では、小学校を卒業した後は給食がなく、かといって高校に上がるまで学食や販売部のようなものもなく、終業までは学校外に出ることも許されず。
必然的に中学校での昼食はお弁当頼りでした。

そんな中学校時代、母は仕事の傍ら日々のお弁当を作って持たせてくれていました。
ですが、大変親不孝なことに、当時の私は母の作ったお弁当を、当たり前のように考え、あまり美味しいとは感じていませんでした。
友達と机を並べてお弁当を食べるとき、色とりどりで工夫も多く美味しそうな友達のお弁当に比べると、母の作ったお弁当は、申し訳ないが、色合いも地味であまり美味しそうには見えなかったのです。

ある日、お弁当の時間に私は友達とおかずの交換をやりました。
持って来たお弁当から、互いにおかずをひとつずつとって食べあうのです。
正直な所、私は自分の持って来たお弁当の味には、あまり自信がありませんでした。
しかし、友達は母の作った豚肉の生姜焼きを取って食べ、美味しいね、と言ってくれたのです。

母がいつも作ってお弁当に入れてくれていた生姜焼き。
普段何気なく食べていたそれを改めて取って食べてみると、口の中に生姜だれと香ばしい胡麻の味が広がりました。
それまで気がつかず当たり前のように思っていただけで、確かにそれは美味しかったのです。
それ以来、私は母の生姜焼きが誇らしく大好きになって、お弁当に入っていれば、じっくりと味わって食べるようになったのでした。

今では母も年老いて、弁当を作ってもらうこともなくなりました。
それでも何かにつけて私のことを気遣い思ってくれる母に、今はとても感謝しています。





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