Nicotto Town


楽屋裏のつぶやき


思ったことを、ぽつぽつ書くかもです。

願わくば花のもとにて


 うっすらと目を開けると、闇の中に白く浮かぶ桜があった。
 はらはらとこぼれる花弁はなんとも幻想的で、この世のものとは思えないような光景に、どこか不安定な気分になった。
 春とは言えども、やはり深夜ともなればそれなりに気温は下がる。
 ぶるっと身震いをした青年に、空気がゆれた。
 一体、何時からこ...

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Moon night





 どこからか、ヴァイオリンの切なげなハイノートが聞こえてきた。
 ベッドの中でまどろんでいた青年は、耳に入ってきたその音にうっすらと目を開けた。
 CDでも掛けっぱなしで寝たのだろうか。
 そう思いながら、コンポのリモコンをサイドボードから取り上げストップを押す。
 が、それでも、その音は消...

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Summer Snow 5

 河原の土手に座って、空を眺める。
 星がとてもたくさん出ていた。



 もう、八月下旬だが、まだまだ暑い。昼の暑さは、まだ尾を引いていた。
 和馬は、蒼子の白い影 ―― 残留思念に英介に嘘をついて暮れと頼まれたと言った。けれど、その残留思念すら、英介の前には姿を現してくれなかった。
「蒼子」
 ...

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Summer Snow 4


  あれから、さらに一週間がたった。
 英介は明日、日本を発つ。
 もう今日しか時間がなかった。



 一枚の写真を封筒に入れた英介は、部屋を出て和馬の部屋に向かった。
 あれから、何度か蒼子の家に行こうと試みたが、結局行けず仕舞いだった。
 和馬の部屋の前で、一瞬躊躇した英介は、気を...

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Summer Snow 3


 二週間前、蒼子は死んだ。
 その間接的な原因に、三週間前の喧嘩があった事は否めない。その喧嘩の原因というのも、本当に些細なことだったのだが……。



 
 あの日、蒼子は英介に話があるから、と呼び出された。
 けれど、いつまでたってもその話題には触れようと...

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