願わくば花のもとにて
- カテゴリ: 自作小説
- 2010/04/06 16:12:21
うっすらと目を開けると、闇の中に白く浮かぶ桜があった。
はらはらとこぼれる花弁はなんとも幻想的で、この世のものとは思えないような光景に、どこか不安定な気分になった。
春とは言えども、やはり深夜ともなればそれなりに気温は下がる。
ぶるっと身震いをした青年に、空気がゆれた。
一体、何時からこ...
思ったことを、ぽつぽつ書くかもです。
うっすらと目を開けると、闇の中に白く浮かぶ桜があった。
はらはらとこぼれる花弁はなんとも幻想的で、この世のものとは思えないような光景に、どこか不安定な気分になった。
春とは言えども、やはり深夜ともなればそれなりに気温は下がる。
ぶるっと身震いをした青年に、空気がゆれた。
一体、何時からこ...
どこからか、ヴァイオリンの切なげなハイノートが聞こえてきた。
ベッドの中でまどろんでいた青年は、耳に入ってきたその音にうっすらと目を開けた。
CDでも掛けっぱなしで寝たのだろうか。
そう思いながら、コンポのリモコンをサイドボードから取り上げストップを押す。
が、それでも、その音は消...
河原の土手に座って、空を眺める。
星がとてもたくさん出ていた。
もう、八月下旬だが、まだまだ暑い。昼の暑さは、まだ尾を引いていた。
和馬は、蒼子の白い影 ―― 残留思念に英介に嘘をついて暮れと頼まれたと言った。けれど、その残留思念すら、英介の前には姿を現してくれなかった。
「蒼子」
...
あれから、さらに一週間がたった。
英介は明日、日本を発つ。
もう今日しか時間がなかった。
一枚の写真を封筒に入れた英介は、部屋を出て和馬の部屋に向かった。
あれから、何度か蒼子の家に行こうと試みたが、結局行けず仕舞いだった。
和馬の部屋の前で、一瞬躊躇した英介は、気を...
二週間前、蒼子は死んだ。
その間接的な原因に、三週間前の喧嘩があった事は否めない。その喧嘩の原因というのも、本当に些細なことだったのだが……。
あの日、蒼子は英介に話があるから、と呼び出された。
けれど、いつまでたってもその話題には触れようと...