Nicotto Town


ストーリーテーラーの集まる小さなカフェ

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曇り空

投稿者:Litsu☆

「ねえ君、今日ちょっと元気ないみたいだけど、どうしたの?」

わたしが外の曇り空にばかり視線を向けるので、運転中の彼に心配をかけてるようだった。
せっかく誘ってもらったのに、これじゃ申し訳ないな。…でも…

「え?あ、すみません。ちょっとぼーっとしちゃって…」

「具合でも悪いの?だったら、もう帰って休む? 僕はいいよ?それでも。」

「ううん、いいです、このまま行って下さい。大丈夫です。」

「そう?…ならいいけど。」

この人は優しい人。…ずっとわたしを守ってくれようとしてる。気持ちは十分理解してるつもりだった。
そう、この人は守ってくれる優しい人…。 

どうして?わたしの心がこんなに委縮するんだろう?


…きっと、人生は分かりやすくて単純だ。

その人の想いが清らかで無垢なものであるほど、天はその導きを顕わにしてくれる。
まるで映画のストーリーのように、アニメシリーズの状況設定のように、
何処に誰がいて、どんな人たちと出逢って、関わって、人生の物語が紡がれていくか?
当の主人公本人が意図しない、予期できない物事を、前もってお膳立てしてしまう。

ほら、ここだよ?  ここにいるよ?…って。

偶然とは、時間の流れをすべて見通せないアイマスクをさせられた私たちが、
いきなり目の前に出てくるので誤解しているだけの、…それは必然。
そしてその天の導きは、きっと何度も何度も想い続けたかつての自分自身の願い。
今は忘れてしまってるかも知れないけど、本当は思い出さなきゃならないこと…
辿らなきゃならない道。…その切なる願い。

もし?わたしがもっと素直で、もう少し清らかであったなら…(どうなっただろう?)

わたしは過去を見た。
わたしは汚れていた…。高慢で、傲慢で、打算的で、人の心をもてあそぶ様な振る舞いを
あえてすることもできるひどい人間だった。
自信家で、そのくせ天邪鬼で、臆病で、自分の夢や未来のことしか頭になかった。
そのためには、おおよそ何だって犠牲にするタイプだった。
きっと、友達を出し抜いてでも…って考えかねないくらい…いやな子だった。
だからずっと…本当に人を好きになるなんてこと、無かったんだと思う。

これはきっと罰だ…。

人生をゲームに例える人がいる。私たちはその中のプレイヤーということらしい。
でも、このプレイヤーの意思決定権というのは、かなり大きな力だ。
自らの決定を覆すほどの力は、ゲーム本体にはありはしない。
プレイヤーの持つ意思決定の自由とは、何よりも尊重される強い自由なのだ。
だからこそ、人はそれぞれの人生を独自にオリジナルに果たしていくことなる。

道を間違えた、なんて言いたくない。言いたくないのだけれど、わたし自身が今になって…
ほんとうに、こんな今頃になって、感じてしまうこの喪失感はいったい何なんだろう?
そう思って過去を見ると…それなりにつじつまが合ってしまう…。

ウソだ…。

今まで信じて来た自分の選択が、積み上げて来たひとコマひとコマが、
すべてこれを悟らせるためのジグソーパズルピースにしか見えなくなってくる。
いつの時代でも「なぜ?」という疑問がずっとつきまとってきた。
それに対する答えがどうしても見つからなくて、
自分自身を信じ切って全ての過去を肯定する以外考えもつかなかった。
でも、どうだろう?

「おまえは間違ってるよ?…」

そう思って疑って見てみると、嫌味なくらい筋が通る…。

…これは妄想、他愛もないただの妄想にしかすぎないのだけれど、
ありもしない記憶のヴィジョンが、走馬灯のように頭の中を駆けぬけていく。
その中のわたしは、とても満たされて、…幸せそうだった。

まだアイマスクは外せてない。でも?いつの日か、外せる時が来るなら
逢いたい人が、たったひとりだけど…

…こころの中に居る。






管理人
ケニー
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全公開
カフェの利用
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カテゴリ
自作小説
メンバー数
15人/最大100人
設立日
2024年02月18日

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