優しい嘘
- 2025/10/23 18:19:35
「見てほら、これこれ♪」
「へえ~投稿掲示板、下記のお題でショートショート小説作って下さい‥‥かぁ。」
僕たちは学校の部室に備え付けのPC画面をお互い見つめていた。
もとは「読書研究会」というつまらなくもオーソドックスな名前の部だったのだが、なんやかやの変遷を経て
いまは「小説研究会」という名前になっている。正直元々が【全員なんか部活しろ!】っていう新学長の
よけいなお世話的発布によって帰宅部から締め出され、漂流者となった難民生徒が流れ着く、小島の一つに過ぎなかったのだが、
活動報告が義務となり、読書感想文ばかり提出するのに飽き飽きした部員が考えついた「部名変更」に由来する。
それで、ときどき自作小説を書く羽目になったのだっだ。(めんどくせえ‥)
ちなみに部員は8名。2人一組、曜日交代で部活を担当している。
そう‥残りの部員は晴れてもとどおり帰宅部に戻れるという合理的部活対策だ。(なかなか巧妙だ。)
ああ、となりのこいつは女子部員の一人だ。今月僕と組むことになった。念のため言っておくが恋愛感情は無い。
「ね?色々出て来るでしょう?これならわざわざお題考えなくてもいいじゃん♪」
「へえ、なるほど、‥これなんかどうだ?『悲しい噓』」
「なーんか悲劇になりそうね~? ‥‥たとえば‥」
「たとえば?」
「余命いくばくもない主人公に、大丈夫!がんばって!とか言う。みたいなー‥」
「ベタベタだなぁ‥もうちょっと捻れよ。」
「じゃーどんなよ?」
「たとえば‥」
「たとえば?」
「そうだなぁ‥、最近ポリコレ化しすぎたディズミー映画で、黒人さんが人魚姫やってて、それを観た子供たちが
『感動しました~!』って無理やり言わされちゃってるお話しとか‥‥」
「ダメー、ヒネすぎー、それにいろんなトコから突っ込まれそうじゃん!ヤバいよ。」
「そうかな?」
「そうだよ。」
二人して少し溜息をついた。箇条書きになった沢山のお題を見ると、一瞬簡単にできそうに見えたが、案外思案
しなくちゃいけないもんだと二人とも再確認できた。それでも何もない所から始めるよりはやはりハードルは
ずっと低く思えた。
「じゃあ、下のコレなんかどうだ?『優しい嘘』」
「ふーん、たとえば?」
「たとえば‥‥どうしても別れなきゃならない悲運の恋人同士が、お互い相手に嫌われるための嘘をつく‥」
「ダメーッ!ベタベタ~!ありあり!あははは、却下却下。」
「うっせーなァ、そこまで言うかッ? ちょっとはオレも考えたんだよッ なら、おまえも考えろよ!」
「そんなの、いつも言ってるじゃん♪」
「?」
「わたし、アンタのこと別に嫌いって言う訳じゃないのよ?」
「‥‥おまえなぁ‥‥。」(グッ)
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