いつも素敵な和湖様にささげる物語

第十一話 闇の女王と冬の花火



　それは、こはるが、伸びたひげの手入れをしているときのことでした。
ピンーポーン。
こはる「はーい。ああ、わこさんじゃなくて闇の女王、いえ、女王様こんにちは」
わこ女王（以下女王）「おやこはる、しばらく見ないうちに、随分ひげが伸びたな」
こはる「ああ、お正月休みが長かったので、ちょっと伸ばしていたところなんです」
女王「ほう、そうか。ところで、お前はババ抜きはやっているのか」
こはる「ああ、前に６時間ずーとやってみたんですけど、勝てないって分かったからもうやってませんよ」
女王「やっぱりな。この前、カジノに行って、ヘナチョコたちをからかおうと思ってババ抜きをやってみたら、ぼろくそに負けてしまった」
こはる「ヘナチョコたちはイカサマをしているから、まともにやっても勝てないですよ」
女王「そうなのか。知らなかった。でも、負けたままでは悔しいから、記録帳を書きなおして１００００コイン勝ったことにしてきた」
こはる「またそんなことをしているんですか。センター長に通報されますよ」
女王「そうなんだ。後で見てみたら、奪ったはずの１００００コインが消されていた」
こはる「当然でしょうね」
女王「そこでだ。悔しいから今度ヘナチョコたちから７ならべで１００００コインを巻き上げようと思うんだが、一緒に見に来ないか」
こはる「ええー、女王様って、7ならべが強いんですか」
女王「いや、弱い」
こはる「じゃあ、無理じゃないですか。今から７ならべの勝ち方を教えてもいいですけど、覚えるまで大変ですよ。まずですね、配られたカードの例えばハートの１～６までに注目するんですよ。ここにカードが1枚しかなかったらそのカードは出さずに、2枚あったら...」
女王「まてまて、そんな説明はいらない。誰が自分で勝負するといった。ジュネに頼むんだよ」
こはる「ああ、４時間で１０００コインを稼いだという伝説のジュネさんですね」
女王「そうとも。で、やり方はこうだ。まず、わしが最初ヘナチョコたちと７ならべをする。もちろんぼろ負けだ。そこで、一発逆転を狙って、一勝負１００００コインでやらないかと誘ってみる。あいつらは、わしが弱いことを知ってるから、すぐに乗ってくるはずだ」
こはる「でも、女王様だったら、また負けて１００００コイン取られるのがオチですよ」
女王「なにを言っておる。ここでジュネの登場だ。もちろん代打ちだとうんと言わないから、すり替わるんだ。同時にトイレに行って、お互いに変装しあうって寸法だ」
こはる「そんなにうまいこといくかなー」
女王「大丈夫だ、今晩７時にカジノに来るんだぞ」
（ピュン）
こはる「ふー、いつもいつも変なことを思いつくなー。そういえば、ジュネさんって、センター長と仲がいいって聞いてたけど、センター長が来てなければいいけど」

＝＝夜７時＝＝

こはる「時間だけど、女王様はカジノに来ているかな。あ、いたいた。ジュネさんも隣のテーブルで勝負しているよ。じゃあ、こはるも近くに座るかな」
女王「こらータンゴ、また汚い手を使って！アッシュもちゃんとわしにジョーカーを配らんか」
こはる「あらら、女王様がぼろ負けしてるよ。八つ当たりしてもしょうがないのに」
ジュネ「また上がりましたわ。これで４０連勝かしら。おっほっほ」
こはる「さすがはジュネさん、７並べの女王だけあって、貫禄があるなー」
女王「もう、負け続けて悔しい。おい、ヘナチョコ、次の勝負に１００００コイン賭けないか」
ヘナチョコ「望むところだ。女王を一文無しにしてやるよ」
女王「ふん、大口をたたいているのも今のうちだ。ちょっとトイレに行ってるから待ってろ」
こはる「予定通り女王様がトイレに行ったね。ジュネさんも席を立ってトイレに向かってる。あれ、センター長が現れて、ジュネさんに何か話しかけてるよ」
センター長「ね、いいでしょう。ちょっとだけですよ」
ジュネ「いえ、今はちょっと」
センター長「そんなことを言わずに。あなたと私の仲じゃないですか」
ジュネ「いえ、今は困るんです」
センター長「困るって、何が困るんです？」
ジュネ「いえ、そ、それは言えませんわ」
センター長「えー、いつも記録帳を書き換えて、１００００コインずつ渡していたのに、いまさらそれはないでしょう」
ジュネ「そ、そうなんですけど、今は」
センター長「だめです。一緒に来てくれないと、今までのコインを全部返してもらいますよ」
ジュネ「そ、そんなー。コインはみんな使っちゃって、もう手元にはないの」
センター長「じゃあ決まりだ。一緒にカジノの屋上に行きましょう」
ジュネ「・・・」



（コメント１に続く）