鮮明な冬
- カテゴリ:小説/詩
- 2010/09/19 10:20:21
今日は連休何で取り合えずネタになりそうなニュースも少ないし詩でもいかが??
当時の人たちの気持ちをくみ取って下され~!!
高村光太郎 昭和16年12月10日作、昭和17年1月の『改造』に発表
鮮明な冬
この世は一新せられた。
黒船以来の総決算の時が来た。
民族の育ちがそれを可能にした。
長い間こづきまはされながら、
なめられながら、しぼられながら、
仮装舞踏会まで敢てしながら、
彼等に学び得るかぎり学び、
彼等の力を隅から隅まで測量し、
彼等のえげつなさを満喫したのだ。
今こそ古しへにかへり、
源にさかのぼり、
一瀉千里に奔流となり得る日が来た。
われら民族の此の世に在るいはれが
はじめて人の目に形となるのだ。
ひよどりが鳴いてゐる、冬である。
山茶花が散ってゐる、冬である。
だが昨日は遠い昔であり、
天然までが我にかへった鮮明な冬である。