Nicotto Town


メルカッツ提督苺


山よ…(前篇)

俺は加賀谷武宏。
趣味は登山。毎週土日には軽く丹沢に行っているが、一番の楽しみは
穂高の縦走であったりする。晩秋の爽やかな空気は気持ちが洗われる。

俺は今年21になるが去年まで収監されていた。
高校を中退して裏道に外れて喧嘩三昧の日々だった。
そんな中、喧嘩相手に重傷を負わせおり悪く警官に捕まった。
しかし、鑑別所の老警官とよく話すようになった。
その警官も登山が趣味だったのだ。

俺の登山歴は長い。
小学生の頃の高尾陣馬山の縦走に始まり、秩父の縦走を繰り返し
いつしか冬山に魅了されてしまった。
しかし、両親が離婚。父親に引き取られた俺にはいつしか父親の逃避が
待っていた。母親はどこにいるかわからない。天涯孤独になった俺は
暴力事件で高校を退学になった。

そんな俺も刑期を終えて出所時に紹介された鉄鋼所に迎えられ
働くことを覚え、何年かぶりに穂高に登ってのだ。
始めて山頂に立った時と何一つ変わらず、山は俺を迎えてくれた。
そんなことから毎週末にリュックを背負い山に向かう途中先輩に会うと
「ヒロ、また山か。気をつけろよ」
「月曜、遅刻すんなよ」
などと声をかけられる具合になった。

そして今日は長期休暇を利用しての南アルプス登山だった。
山はいつも通り俺を迎えてくれた。
予定通り下山しふもとの山小屋で一休みをして量に代えることにした。
が、今日はただならぬ事件が起きていた。

荷物を整理していた俺を数組の家族連れが駆け寄ってきて泣き崩れている。
そして…
「お願いします。息子を助けてください」
「貴方に頼るほかないのです」
「息子が、息子が、帰ってこないのです」
「どうか助けてください」
泣きながら口々に言い寄ってくる。

山岳ガイドの話では、大学生3人のパーティーが『牛の舌』と言われる
断崖に挑戦したのだという。下山予定になっても帰って来ず、親達が
捜索願を出したという。

『牛の舌』
冬場は特に吹き上げる風が強烈で、ベテランでも毎年何人かは犠牲になる
難所中の難所である。素人の行くところではない。

俺は「明日には会社があるし、今から連絡の取りようもない」
と言って断ったが、他に誰も救助に行けるものがいないという。
「第一俺一人でどうしろと言うんだ。三人のグループをカバーするなんて
できっこない。まして素人なんか」
と、断り続けたが、頑として聞き入れてくれない。

そこへ一人出てきた。
「俺は佐々木小次郎、牛の舌には毎年行っている。過去7回登った。
お前さんさえよければ俺が付き合うぜ。何回登った?」
「5回は登ったが今の季節には経験がない」
「そうか、だが素人が行くよりいいだろう、付き合え」
「だけど、俺には仕事があるんだ」
一人の父親らしき人物が
「あなたの会社には私どもから連絡いたします。お礼は十分させていただきます。どうか、どうか助けてください。」

仕方なく、荷物を入れ直し改めて登山の準備をして山小屋を出るのだった。
まだ午前中だ。昼前には牛の舌にたどり着ける。
日暮れまでには登りきりたいがどうなるか…。
無事に登れればいいが…。

<つづく>

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2011/04/22 00:01
はらはらどきどきです。
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2011/04/20 18:55
続きが気になりますなぁ・・・・
最後はどうなるのか?

劇中の小次郎さんが一瞬剣豪とダブったような・・・
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2011/04/20 07:47
Σ(・ε・;) メルちゃん作…?
  これから どぅなるの?
ハッピーエンドにしてねぇ~ (。→人←。)
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2011/04/20 00:44
どうなるの。。。
たすかるの。。。
とっても しんぱい。




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