Nicotto Town



食欲の秋

あしたのためにその1

 食うべし!食うべし!

 と書かれた、紙がリングの向こう側の壁に貼られている。

 「準備が出来たら、次はいよいよ、秘密メニューだ。」

 彼が、いつもの練習メニューを終えて、バンテージを
 拳から解いていると、会長がそう言って、外からは
 見えない様になっている、奥の部屋をあごでしゃくった。

 彼はバンテージを解き終わった後、シャワーを浴び
 着替え終わった後、奥の部屋に入って行った。

 部屋の真ん中にある、テーブルに 次の試合に備えての
 増量食が用意されていた。

 「いいか、今は食欲の秋だ。秋は誰でも食欲が増すんだ。
  だからワシは今度のタイトル戦をこの季節にやる事を
  決めたんだ。

  さあ、食え! 食って食ってもっと体を作れ。」

 ゴマ塩頭の会長が拳をあげて力説した。

 会長がおよそ、ボクシング指導者が言いそうに無い、
 まるで相撲部屋の親方の様な台詞を、言うのには
 訳がある。

 和製パッキャオ(=フィリピン 6階級制覇の現ボクシング界の
 超スーパースター)の異名をとる彼は今度の試合・・・
 日本スーパーバンタム級タイトルマッチに日本タイトル
 6階級制覇がかかっていた。

 しかし最軽量のミニマム級ですら小柄な彼が、増量に
 苦しんでいるのは、彼がもともと小食だという事だけが理由
 では無かった。

 増量の為の食事は、ジムマネージャーのミサトさんが作って
 くれているのだが、これがあまりに凄過ぎる。

 (レシピを見て作って、よくぞここまで)な代物だ。

 今日も、砂糖の分量を1桁間違えているらしい事が、料理の
 不味さをより一層引き立てていた。

 ・・・とにかく試合前は増量苦に苦しんだ。


  1ヵ月後、彼は7ラウンドまで、ほぼ一方的に打たれまくり
  6階級制覇は絶望的な状況だった。

  「6階級制覇か、罰ゲームか?・・ここが正念場だぞ。」
  
  フラフラでコーナーに戻った彼に会長が言った。
  
  「罰ゲーム?」

  彼が聞き返した。
  
  「罰ゲームはミサトさんの特性カレーライス(大盛り)
  です。」

  会長が事も無げに言った。

  10分後・・・

  「今日の試合に勝てたのは、応援してくれたファンの
  皆さん、ジムの会長、トレーナー・・・・
  それから・・・ジムマネージャーのミサトさんの
  お陰です。」 

  インタビューで彼は答えた。

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2011/11/18 22:05
 スイーツマンさん

 フードファイトと言えば最近「大食い甲子園」って言う
 すごい漫画がありました。
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2011/11/17 22:46
明日のジョ―のパロ

フードファイトのような要素もあり
楽しめましたよ
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2011/11/14 21:32
 まゆさん

 コメントありがとうございます。

 結果が全ての世界ですから、彼女は当然(勝利の女神)です(笑)
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2011/11/14 21:30
 やあさん

 コメントありがとうございます。
 
 グルメ日記と言うのは、やっぱり僕には無理でした(笑)
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2011/11/14 19:59
ミサトさんは、増量食より減量食に才能がありそうですね^^

どちらにしても、才能があるマネージャーということが証明されました。
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2011/11/14 08:33
あははははは^^

減量に苦しむ話はよく聞きますが、増量苦というのは初めてかも^^

てっきり日記かと思ったら、ショートショートでしたか。

さすが、かいじんさん!^^



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