Nicotto Town



腐ったロミオとジュリエット

ジュリエットが男です!

「おい、ロミオ。敵方のキャピュレットの晩餐会に忍び込むって、何バカなこと言ってんだよ」
親友であるマキューシオが言う。

敵方って…大げさな。
単に親父同士が敷地の境界線をめぐってケンカしてるだけじゃん。
さて、噂のジュリエット姫はどこかな~?
麗しいと噂のキャピュレットの姫の姿を探してうろうろしていると、うっかり誰かにぶつかった。
「あ、悪い」
「いえ、俺もぼーっとしてましたから」
「え…俺?」
おれがそう問い返すのも無理はないと思ってくれ。
なにしろ相手はドレスを着て、一瞬ごく普通の娘さんに見えたんだ。
「あ、俺男です」
「・・・男がなんでドレス??」
「ジュリエットだからです」
おれの疑問に、相手はにっこり笑ってそう答えた。
ああ、そうですか。 と言う以外、なんと答えろと…つか、ジュリエットお?!
「どうかしましたか?」
こくんと首を傾げるそのジュリエットに、「いや、人の噂って当てにならないもんだと思ってさ」と言うと、
「ああ、『人の噂も七十五日』って言いますからね」と笑って答えた。
なんか、会話がかみ合っていないと思うのはおれだけだろうか。
まあ、折角会ったんだし「一曲踊っていただけませんか?」と言ってみた。

「あ、すみません」「ごめんなさい」
ダンスは下手だから苦手だとは言っていた。んだが、これをヘタで片付けていいものか。
おれの足は踏むわ、隣で踊っていた人にはぶつかるわ、ドレスの裾を踏んづけてすっ転ぶわ、挙句に靴を片方なくしてびっこを引いていたりする。
「すみません、ご迷惑おかけして」
しょんぼりとうなだれるジュリエットを、横抱きに抱きあげる。
「あ、あの…」
「男とは言え、お姫様を裸足で歩かせるわけにいかないからな」
そう言うと、真っ赤な顔しておとなしくなった。
ヤメれ。なんか知らんがヘンな気になる。
それにしても、男とは思えない軽さだ。
とりあえず壁際に並んでいる椅子の一つに彼女…じゃなくて彼を降ろし、靴をさがしに戻る。
「何から何まですみません」
靴を見つけて戻ると、ジュリエットがそう言って深々と頭下げた。
「いや、いいけどさ。とりあえずおれはそろろそ帰るよ」
「そうですか。色々ありがとうございました。どうか気を付けて帰って下さいね」
そう言ってにっこり微笑むジュリエットから、なぜかあたふたと目を逸らすおれ。
まあ、気を付けると言っても、隣に住んでるんだけどね。




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