Nicotto Town



調子に乗って腐ってみました^^ゞ

腐った美女と野獣です。



「えと、あの、お父さんがバラを盗もうとしたそうで、すみませんでした」
顔色の悪いやせたそいつが、そう言うとぺこんと頭を下げた。
「うん。だから娘を差し出すようそのお父さんに言った筈なんだけど…男だよね?」
そう言うとそいつは申し訳なさそうに頷き、「すみません。お姉さん達はみんな嫌だと言うので、俺が代わりに来たんですけど…ダメですか?」と、そう言った。
いや、ダメっつか…
「娘が来たら結婚申し込む予定だったんだよ。…それとも、あんたが代わりにおれと結婚する?」
そう。結婚を申し込んで、それが受け入れられないとおれは人間に戻れない。

それは昨夜のこと。庭に迷い込んだ男が、何を思ったかいきなりおれが丹精込めて育てたバラを勝手に手折り持って行こうとするので、命が惜しければ娘を差し出せと迫ったのだった。
男はがくがく震えながらも承諾したのだが、来てみれば何故か娘でなくて息子だった訳だ。

「まあ来てしまったものはしょうがない。部屋へ案内するから今日はゆっくり休んで、明日からはおれの身の回りの世話をしてくれよ」
そう言うとそいつを連れて階段を上がり始めた。
「そいやお前、名前はなんて言うんだ?」
そう訊ねると、おれの言葉にうしろから黙ってついて来ていたそいつは顔を上げ、
「あ、はい。あの、ベルです」
と答えた。
「ベルか。よろしくな」
「あ、すみません。よろしくお願いします」
そう言ってペコンと下げた頭をそのままに、ベルの目はおれの先っぽに房のついた尻尾に注がれていた。
今のおれの姿は、簡単に言えば針金のようなたてがみを持つ直立した獅子だ。
それが普通に喋って歩いているのに何で無反応なのかと思っていたが、まさか尻尾を見てようやくおれの姿に気付いたとか言わないだろうな。




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