Nicotto Town



年末だというのに腐ってみました 3

和也1

元居た部屋からどこをどう辿ったのか、気がつくと屋外にいた。
見回すと三方を山に囲まれており、前方には遠く町の影らしきものが浮かんでいる。
そしてここはその街へ向かう道のど真ん中らしい。
いやいやいや、そんなことはどうでもいい。それより遠矢はどこだ?
一緒に落ちてきたはずなのに姿の見えない遠矢を探してあたりを見回し、声に出して呼んでみた。その途端、
「お前、今トーヤと言ったな? トーヤとどう言う関係だ。言いなさい!」
そう言っていきなり襟元を掴まれた。
突然現れて偉そうな奴だな。
「お前こそいきなり現れて遠矢を呼び捨てにしてんじゃねえよ!」
その腕を振り払いそう言うと、そいつは
「そっちこそ何故トーヤを知っている。トーヤとどういう関係ですか」
そう冷たい目睨みつけてきた。
「おれは遠矢の恋人だよ(本当は夫だと言いたいところだが)。お前こそ何者だ?」
なのでそう答えてやったら、そいつは大袈裟なほどにうろたえた。

「な…な、な、そんなバカなっ!」
「何がバカだよ。失礼な奴だな」
「バカと言ったらバカでしょう。トーヤがあなたなんかの恋人である訳がありません。私だってまだキスしかしていないのに」
いきなり何を言い出すかこいつは。遠矢がこんな奴とキス? ありえん。絶対ありえん。つか、あってたまるか!
「お前誰かにだまくらかされてるんじゃないのか? 遠矢はおれと一緒に暮らしてるんだよ!」
「そんな訳はない。トーヤはアパートに一人住まいだ。私は知っている!」
「だからそれは偽物の遠矢だろ? 遠矢はおれのもんだ」
「何を言う。そう言うのならお前のトーヤこそが偽物だろう。あんなに美しい少年が嘘などつく訳がない!」
ちょと待て。美しい少年??

「やっぱりそいつは偽モンだろう。遠矢は美しいと言うより可愛いだし、そもそも既に二十歳を過ぎているぞ」
「それならそっちこそ偽物だな。私のトーヤはまだ17才の、ぬば玉のような漆黒の髪をした美しい少年です」
これまでの言い合いで、とりあえずこっちと向こうの言う遠矢が別人だと言うのはわかった。わかったが、なんでそいつが遠矢の名前を名乗っているのかがわからない。遠矢は名前を騙られるような有名人ではないし、騙って得する人間がいるとも思えない。そうすると考えられるのは…
「あのさ、あんたの遠矢はフルネームなんつうの?」
おれの言葉にそいつは怪訝そうな顔をして、それでもぼそっと答えた。
「もちろん、高村透矢ですよ」

その時、部屋にいきなり響いたあの声がまた聞こえてきた。
「ファンタジーツアーへようこそ。
これからあなた方には、一緒にこちらへ来られたお友達、もしくはご家族を探す旅に出ていただきます。
現在一緒にいるその方のお相手もあなたのお相手と一緒にいますので、力を合わせて再会を目指して下さい。
もしも途中でリタイアされたい時は、その旨を告げていただければ、すぐに元の世界へ戻させていただきます。
その際は、相手の方も一緒に送還となります。
では、この世界の地図を差し上げますので、頑張って再会を目指して下さいませ」
そこまで言うと声は沈黙し、それと同時にひらひらと地図が舞い落ちてきた。

「つまり、おれの遠矢とあんたのとおやは別人で、しかも今一緒にいておれとあんたで探しに行かなきゃならないって訳だ」
そう言うと、そいつはいやあな顔をした。




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