Nicotto Town



年末年始に腐ってみました 9

和也4

「何をにやにや見ている」
馬車に乗せてもらってから荷物に寄りかかったままへたばっていた奴が、いつの間にか身体を起こしておれの方を見ていた。
なので、遠矢達が映っている地図を手渡した。
「・・・これは! こんなものをどこで手に入れたんです?」
「ああ、それ地図」
そう言って、その地図がタッチパネルみたいになっていることを説明した。
最先端魔法技術って感じか?
そのまま、そいつは穏やかな目をして地図をみつめている。
なんつかこう…本当にそのトーヤってやつが大事なんだなと思える目だ。
その時、あいつが声を掛けてきた。

「お前さん、魔法使いだろう?」
「え? あ、まあ」
その声に地図から顔をあげると、そう答えた。
魚が自分の目の前15cmくらいのところをぷかぷか浮いてるのに、動じない奴だな。
「わしもあんたたちとはちっと違うが、一応魔法を使うから教えておいてやるが、魔法使いは極力魔道書をひらいて読んでおいた方がいいぞ。
もちろんただ読むだけでなく、ちゃんと呪文や身振りを覚える事が肝心じゃ。でないととっさの時に魔法が使えんからな」
なんかよくわかんねーけど、なるほど。
まあ、おれは戦士だし、魔法は関係ないけどな。

そうこうする内、無事町についた。
彼らは隊商専門の宿屋へ向かうと言う事で、町の入り口で礼を言って別れた。
…つか、魚。なんでお前まで一緒に降りてんだよ。
「ああ、わしもこの町までの約束じゃったからの。ほれ、宿屋はこっちじゃ」
そう言うと、ふよふよと空中を泳ぎ始めた。
その魚が向かった宿屋は一階が食堂になっており、宿泊施設は二階にあるとのことだった。
つか、なんでメシ代別料金なんだよ。
とりあえずまずは食堂に向かい、酒と食いものを頼む。
なにしろあの昼飯じゃ、食った気がしないからな。
そうして満足いくまで飲み食いし、用意してもらった部屋へ向かう。
ちなみに連れとおれは二人部屋で、魚は個室だ。…魚の分際でベッドに寝るってか?
部屋へ入ると、まず荷物を放り出した。この荷物、最初はそれほど感じなかったが、疲れてくるとやっぱり重たい。

夜も更けてきて、ベッドが固いだの布団が薄いだの文句を言っていた連れも、疲れたせいもあってかいつの間にか寝息を立てている。
おれも疲れているはずなのに何故かやたらと目が冴え、ベッドの中で何度も寝がえりを打ってみたがまったく眠くならず、あきらめて起き出すと地図を広げて月明かりに照らしてみた。
地図を拡大し、遠矢達の姿を確認する。
あいつらは野宿なんだな。
眠る遠矢の顔をさらに拡大して、その唇にあたる部分にキスしてみる。
なんか、本当に遠矢の唇にふれたような気がした。




月別アーカイブ

2024

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.