Nicotto Town



モモンガの日 (後編)

千葉・北流山7丁目児童公園  ー日本 (続き)

・・・

ACT1・(男は遅れてやって来た!)

その男は、私の姿を認めると、ゆっくりとこちらに
向かって歩いて来た。  

何と無く誰かを真似た様に、短く揃えられた髪に
白のスーツに身を包んだ男・・・

連絡で知らされた通りの風貌・・・間違いない。

彼こそが(モモンガ)と言われているスナイパーなのだ。

彼は左手に アタッシュケースを持ち、右手に持った
ガリガリ君を齧りながらゆっくりと近付いて来た。

「陸上自衛隊幕僚監部の狩野だな。」  

彼が言った。  

一時間も遅れて来た割には、それについては
一言も無く、横柄な口調だった。

「ええ、そうです。私は陸幕監部の狩野と申します。」

「失礼ですが、あなたが、今回の(仕事)を引き受けてくださる
(モモンガ)さんでしょうか?」  

「・・・」  

男はその質問に、言葉では答えなかったが、
その視線は否定してはいない様だった。  

「正直な所、今日はお会い出来ないのかと、
思い始めておりました。」

「路線バスの時間と言うのは、本当にいい加減なものだ・・・」  

彼は言い訳した。  

「そうだったんですか・・・いや、何と無く、ここへ来るまでのバスは
車の少ない、本通りから外れた、町外れの道を
走って来るので、時間が遅れる様な事はあまり無さそうな
気がしていたのですが・・・」

「・・・・冗舌なおしゃべりは、その位にして、早速、本題に入って貰おうか。」  

彼は、そう言って先を促した  

・・・  

「これが、そのターゲットの顔写真です。」  

私はそう言って、上司の甘賀崎1尉から預かった、

(キティちゃん)の写真を差し出した。  

「先程説明した、防衛大臣、統幕議長、陸海空各幕僚長が
写っている、(あまりにも恥ずかしい動画)が、もし世間の
明るみにでれば、防衛省と自衛隊は、大変な恥をかく事になるし、何より
隊員達の士気に関わって来る。」  

「しかも、大臣までもが絡んでいるとなると、事は防衛省だけの問題に
留まらない・・・。」  

「この一件は、防衛省の体面に関わる事なので、上層部は内部だけでの
始末を望んでいた様なのですが、困った事に(キティちゃん)は既に
国外に出国してしまっている…」

「そう言うわけで、今回、我々は、(キティちゃんと写真)の(始末)を
あなたに、依頼する事になったのです。」

「どうでしょう、モモンガさん、引き受けて頂けるでしょうか?」  

「・・・」

(モモンガ)は標的の写真から、私の顔に視線を移したまま押し黙っている。

「・・・まだ話は、全部終わっていない筈だな?」

しばらくして彼が口を開いた。

「?」 

私ははじめ何の事か、よくわからなかったが、
やがて彼が、言っている事の、意味が理解出来た。  

「・・・もちろん、もし引き受けて下さる場合は、
事前に連絡を受けた通り、報酬は全額、前金  
でお支払い致します。」  

「・・・わかった、やってみよう」  

彼はそう言って、手に持ったガリガリ君の棒を
投げ捨てた。  

私は彼が投げ捨てた、アイスの棒を拾い上げながら、
夕暮れの中を去っていく、彼の後ろ姿を見送った。  

・・・  

ACT・2 (降りしきる雨の中、やがて標的は現われた。)

2013年7月上旬  東アジア・某国山中

空は一面、厚い雲で覆われ、山中には大粒の雨が降り続けている。  

山々の谷間に沿って続いている道を、一台の白い乗用車が走っている。
 
 

・・・

低い雲がたれ込めている為に、更に薄暗くなっている、

鬱蒼とした谷間の道を、キティちゃんは車を走らせ続けた。  

フロントガラスを、大きな音をたてて雨粒が叩き続け
それをワイパーが忙しなく払い続けている。  

その音とこの車のタイヤが上げている、水飛沫の音が車内に
ずっと続いている…  

キティちゃんは手元の袋からよっちゃんイカを取り出し口に含んだ。

その酸っぱさが×の口を*にした。

彼女の隣の助手席には、B4サイズ程の厚い封筒が置かれている・・・  

・・・

雨が降りしきる中、山の中腹に沿った林道の様な道に、一台の車が停まっている。

その車の側の道脇で、レインコートを着た(モモンガ)が麓の方角を
見下ろしている。 

麓の谷間には、先程の道路があり、やがて
やがて、彼が眺めている、はるか前方に
キティちゃんの車が姿を現わした。  

(モモンガ)は双眼鏡を、取り出して、その方向を眺め直した。  

レンズには、拡大されたキティちゃんの車が
写し出されフロントガラス越しに、顔までは、
はっきり見えないが、 ハンドルを握る彼女の姿が、
うっすらと見える。  

(モモンガ)は、双眼鏡から、目を離すと車に戻ってトランクを開け
シートに包んであった銃を取り出した。

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

車の運転席に狙いを定め、徐々に引き金に掛けた指に力を加えて行く・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

2分後

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

麓の谷間の道を、キティちゃんの車が、西の方角へ
走り去ろうとしていた。

雨が降りしきる中、(モモンガ)は、道端に立ち尽くし
その方角を無言で眺め続けていた・・・

・・・

・・・

・・・


・・・ 

(やはり雨の日は、火縄が濡れて仕事にはならないようだ・・・)

(モモンガ)は思った。

・・・

・・・

・・・

まあいい・・・、報酬は前金で貰っている・・・)

・・・

・・・

・・・

・・・

やがて(モモンガ)は(ガン・キホーテ)の火縄銃コーナーで買った
八匁玉堺筒をトランクに戻し、車に乗り込んで
走り去っていった・・・
 
 

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

一週間後、海外の動画サイトかなんかで、防衛省とか政府与党とかがぶっちゃけ
すごい事になった。

           (END)

アバター
2013/07/07 16:05
ゴルゴが火縄銃…
シリアス風味の四コマ漫画な雰囲気の
オチでした^^
アバター
2013/07/07 15:46
脱力…@@
アバター
2013/07/07 13:24
牧歌的な…
そんな感じの幕切れが良かったです
アバター
2013/07/06 13:28
泥棒さんでしたか
アバター
2013/07/05 12:40
……詐欺!www
アバター
2013/07/04 18:53
何でしょう。
普通に笑ってしまいました^^
確かに、この仕事っぷりじゃ、「すごい事になった」んでしょうけれど、それって表に出た段階で駄目?なんじゃないの~

↓あ。私もまゆさんと同じ感想を持ちました。
アバター
2013/07/01 18:31
モモンガさん、もしかしてミッフィーとキティを混同していませんかw
アバター
2013/06/29 23:03
笑いがこみ上げてきました><;
まさかの火縄銃・・(≧∇≦)
アバター
2013/06/29 21:55
もしかしてさ…┓( ̄∇ ̄;)┏ 悪酔いしてるだろ!(^◇^;)



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