Nicotto Town



波乱続きだった穏やかな秋の日曜日 (前編)


駅近くの繁華街にある立飲み屋で飲んでいる内に、時計が0時を
回って土曜日から日曜日になった。

1時間ちょっと前までは、別の居酒屋で先月の初めまで付き合っていた
元彼女と一緒に飲んでいた。

夕方、部屋でぼんやりしていると彼女から電話がかかって来て、
しばらくの間、ちょっとギクシャクとしたものを感じながら会話を
していたのだけど、その内に電話の雰囲気が取りとめもなく
長くなりそうな気配が漂い始めて、結局一緒に飲む事になった。

夜の八時半、僕はJRの駅の改札を抜けて週末の夜で賑やかな
駅前通りを歩いて、待ち合わせ場所の私鉄の駅ビルの出口の
方に向かった。

そこで彼女と落ち合いそれから、近くのダイニングキッチンの居酒屋で
飲み始めたのだけど、その内に彼女の携帯に着信があって、彼女は
席を外した。

その後、彼女は「急用が出来た」と言う事だったので、僕らは
店を出て、私鉄の駅ビルの近くで、僕は彼女と別れた。

僕はそのまま真っ直ぐJRの駅の駅に行って電車を乗り継いで
郊外の夜になるとやたら静かになる場所にある、自分のアパートの
部屋に戻ろうかとも思ったけれども、結局何だか飲み足りなく感じて
駅に向かう途中で飲み屋やゲーセンがひしめいている路地に入り
駅前通りから一本外れた通りにあるこの大きめの立飲み屋に
入って、生ビールを飲んでいた。

しかしもう終電の時間が近くなっていたので、僕は勘定を済ませて
店を出た。

外に出ると10月初めの好天の夜の空気が心地良かった。

路地を通り抜けて駅前通りに出た。

車道を隔てた向こう側のカラオケボックスや終夜営業のマクドの前辺り
には、まだ人通りが多かった。

そちらの方に何気なく視線を向けながらJRの駅の方に向かって
歩いていると、ふと人混みの中に一時間半ほど前、私鉄の駅ビル前で
別れたばかりの彼女の姿が見えた。

彼女は髪を茶色に染めた背の高い男と楽しそうに話しながら並んで
歩いていた。

僕は彼女に気付かれない様に足早にJRの駅の方に歩いていった。

僕は駅やその向こう側のデパートの屋上の上空に広がった
すっきりとした夜空を見上げながら、何だか間抜けな役を
演じさせられている自分が可笑しくて、声を出して笑いたい
気分になった。

僕はJRで、終電近くの電車に乗り、次の駅で乗り換えて一つ目の
駅で降りて、昼間はやたら渋滞しているけど、深夜になると殆ど車が
通らない通りを歩いて自分のアパートに戻った。

・・・

目が覚めると、正午を30分以上過ぎていた。

窓を開けて見ると、通りを隔てた民家の背後に広がった雑木林の上に
気持ち良い、秋晴れの空が広がっていた。

取りあえず、冷蔵庫に入れてあったペットボトルの水をグラスに注いで飲んでから
顔を洗って歯を磨くと、後は何をやったらいいのかわからなかった。

一応、テレビを付けてみたけど、画面を観る気すら起こらずしばらくぼんやりと
していた。

しばらくしてから、空腹だったけど面倒くさかったので、食パンにスライスチーズと
スライスハムを乗っけて、それをそのまま2つに折ってオレンジジュースを
飲みながら、それを2枚ほど食った。

その後、読みかけの文庫本を読み始めたけど、3回ページをめくったら
内容が頭に入らなくなって来たので読むのをやめた。

何だか音楽を聴く気分にもなれなかった。

このままずっと部屋の中にいると段々気が滅入って来る様な感じがし始めて
来たし、せっかく天気も良かったので、久し振りに散歩がてら、歩いて20分位の
所にある競馬場に行って見る事にした。

アパートを出て目の前の通りの歩道をJRの駅の反対側にある競馬場の方に
向かって歩き始めた。

空は良く晴れていて、高い空は澄んだ青さで広がっていて風も無く、散歩するには
最適な穏やかな秋の陽射しが気持ち良かった。

周囲は平坦な地形に住宅地やアパート、高層マンションなんかが見渡せる限りに
建ち並んでいるが、郊外のこの辺りはまだ畑や雑木林なんかも所々に残っている。

駅の近くのコンビニでスポーツ新聞を買った。

あまり金の無い大学生の僕は400円以上もする競馬新聞なんか買った事も無い。

去年の春、友人と競馬場に通い始めた頃は、場内で無料で配布される
レースプログラムに出ている出走場の名前と場内モニターに表示される
オッズ(倍率)だけを見て、馬券を買ったりしていた。

僕は駅を通り過ぎてしばらく歩き、それから競馬場の門を潜った。

今日は、東京競馬場と京都競馬場の開催で、この競馬場でのレースは無いので
入場料は無料だった。

僕が競馬場に着いたのは午後の3時頃で、東京競馬場の第10レースが
始まる前位だった。

僕が正面スタンドの屋内にある馬券売り場まで来た頃、丁度レースが
始まって、屋内の中継モニターの前に人だかりが出来ていたけど
僕はそちらの方には目もくれず、次のメインレースのオッズが表示された
モニターの前に立って、スポーツ新聞の競馬欄を開いた。

今日のメインレースは、東京競馬場で毎日王冠(G2・芝1800m)
京都競馬場で、京都大賞典(G2・芝2400m)が行われる。

どちらも3週間後に東京で行われる、秋の天皇賞(G1・芝2000m)の
ステップレースだ。

東京の方はそこそこ人気が割れていたけど、京都の方は去年の有馬記念
今年の夏の宝塚記念と2つのグランプリレースを圧勝に近い勝ち方で制した、
G1レース4勝馬8枠12番ゴールドシップが単勝1.2倍と圧倒的人気だった。

ライバルのオルフェーブルや、今年のダービー馬キズナは凱旋門賞挑戦でフランスに
遠征していたし、去年の三冠牝馬で年度代表馬だったジェンティルドンナは
ぶっつけで天皇賞に向かうみたいだった。

2番人気は、春の天皇賞で2着に入り、1番人気で5着に敗れたゴールドシップに
先着した7枠11番、トーセンラーで6,3倍、3番人気の8番ヴィルシーナは
21,3倍で大きく離れていた。

馬番連勝式の馬券で11番ー12番が2,0倍、馬番単式の12-11が2,5倍だった。

はじめ12-11の馬番単式の馬券を1000円だけ買おうと思ったけど、思い直して
400円だけにした。

東京のメインレース毎日王冠の方に、去年の秋、友人数人と行った天皇賞で
密かに狙っていたジャスタウェイと言う馬が出走していたので、この馬(6番人気)を
軸にして、1,2,4,5番人気の馬を3連複でボックス買い(6通り)した。

マークシートを記入して馬券を買い終わると、最初に発走になる京都大賞典の
発走時刻まで、まだ15分位あって、そのあいだ手持ち無沙汰になった。

馬場(レース場)とは反対側のパドック(サークル状の馬の運動場、レース前の馬を
ここで曳いてファンに見せる)側の窓から外をぼんやりと眺めていた。

ここでは今日レースが開催されていなので、パドックはがらんとしていて
その向こう側にはびっしりと数字が表示された大きいオッズ表示板が
あった。

表示されているのは東京第11レース、毎日王冠賞のオッズだ。

パドックの周囲の木々の葉は緑は薄れて、透明感のある青さで広がっている
空の所々にうっすらとたなびいている細長い雲はずっと高い所にあった。

僕はそんな風景を眺めながら秋が深まっているのを感じた。

アバター
2013/11/02 19:21
「かいじんさんはみた!」
腹の立つできごとは、秋の青空と競馬がさわやかに一蹴してくれる?
アバター
2013/11/01 10:54
あああああ・・・。

見てはいけないものを見てしまいましたね・・・(;_:)



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