Nicotto Town




目を瞑ってその海を想像する。

初夏が過ぎた頃の、空から降り注ぐ陽光に一面の波が煌めいている
すっきりとした青さで広がっている海だ。

かつてそんな海と家族と共に生きて来た女性とインターネットを通じて
2年半ほどの期間、ささやかな言葉の交流を続けていた。

彼女が語る、海と共に暮らすその地での暮らしや光景は、
少年時代をずっと周囲を山々に囲まれた山間部で過ごして育った僕には
新鮮で興味深いものだった。

彼女は時折、家族をテーマにした文章を書いていた。

そこには大抵海の光景があった。

誰にとってもかけがえの無い時間、人は何を大切にして生きるか?

それが彼女が伝えたかった事なのだろうと僕は思う。

・・・

一日、一日はあっという間に過ぎて行く。

・・・

僕は文章を書くとき「・・・」を多用する。

彼女は僕の事を「・・・の人」と呼んでいた。

・・・

・・・

・・・

僕は実際にその海を見た事が無い。

いつか機会があれば、一人でひっそりとその海を眺めてみたいと思う。

彼女が名乗っていた2文字の名前は、その地の特定の人を指す言葉だという事を
僕はある時、偶然知る事が出来た。

僕が想像するその海は陽の光をいっぱいに受けてすっきりとした青さで広がっている。

そして僕は光輝くその海の中にかつて彼女の姿があった事を想像する。

そして、その海の先に見えるだろう、自然の恵みを受けて、自然と共に暮らす陸地に
彼女が今は静かに眠っているだろう事を想像する。








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