Nicotto Town



お題「切符」暫定候補 「塀の外の懲りたオッサン」

まえがき(仮)

SNSに登録して文章みたいなのを書き始めて間もない頃の作品っぽいのを発掘成功したw

最後まで書かれているものとしては一番最初のサークルのお題喫茶店で転載したの「女子トイレ潜入男の孤独」
についで2番目くらい、その次くらいに書かれてたのが「みんな死ね!」ってタイトルだったのをみるとどうも
書き始めの頃はロクなタイトルがついて無かったw

一行毎に改行されてたのを詰めた以外は本文いじってない。

何にしても今日はしたたかに酔ったw

・・・

今年の二月頃だかその位の事だったと思う。

僕は土曜の早朝の駅のホームで冷え込む中電車を待って
いた。前の晩から痛飲しての帰りだった。やがて電車がホーム
に入って来て乗り込もうとした時、その(オッサン)が後ろから
声を、掛けて来た。

「これはN駅に行く電車か?」

N駅はその駅からこの電車に乗って二つ目の駅である。
僕がそう答えると、その(オッサン)は同じ扉からいそいそと
車内に乗り込んで来た。何しろ冬の週末の朝早い電車だから
車内はガラガラに空いていた。僕はすぐ近くの座席に座り
一息ついた。(オッサン)はほんの少し車内を見回すと僕の
殆ど隣にドカリと腰を落とした。

少し気になったがまあ、どの位置に座ろうがそれは自由だ。

やがて扉が閉まり電車が発車した。

(オッサン)は風貌は分かりやすく言えば、労務者風で
さほど大柄では無いが肉付きが良く、やや日に
焼けた色黒の顔は酒が入って赤らんでいた。

それなりに飲んでいる僕でも、(オッサン)が相当な酒の臭いを体から
放っているのがわかる。その割りにロレツが回ってしっかり
喋っている所をみると見た目通りの酒豪らしい。

服装はいかにも工事現場の仕事の帰りに酒をあおって来たと
言う感じだった。

「最近は警察も冷たいよう。」

いきなり何の前置きも無く(オッサン)が僕の方を向いて言った。

「昔は電車賃位、交番に行けば貸してくれたんだよ。」

「はあ...」僕は取り合えず曖昧に笑った。

「最近はオマワリも冷たくなったよなあ。」

(オッサン)はそう繰り返し何やらポケットから書類の様
な物を取り出した。

「性が無えから、駅員に言ったらこれを向こうの駅員に見せて
くれって言うんだよ。」

見てみるとその書面には{乗車証明書}と書かれている。

要するにどの駅から乗車したかと言う証明書らしい。

これは僕の想像だがこの(オッサン)が駅でクダを巻いた為
駅員は取り合えずこれを(オッサン)に渡して後の事は、
N駅の駅員に任せよう....と、そう言う事かも知れない。

N駅で降りた(オッサン)が改札を抜ける時、どう駅員に
切り出すのか?

或いはカミさんだか、知り合いが駅に迎えに来るのか?

まあそうで無いとすれば、駅で凄むか泣きを入れるか
居直るかするしか無いだろう。

「本当シャバは大変だよ。」

唐突に(オッサン)が言った。

「それに比べたら務所は良い所だったよ、兄さん」

それから、(オッサン)は(前途ある若者?)に向かって
{塀の中の良さ}に付いて熱心に語り始めた。

・・・

この(オッサン)が本当に中で(勤めた)事があるのかどうか、
それは分からない。

或いは話を面白くしようと、どこかで、聞きかじった事を
酔いに任せて最もらしく喋ってみただけなのかも知れない。

まあそれは正直どちらでも良い話だ。

(オッサン)は、別に特別に耳を側立てる様な事を喋った訳では
無い。とにかく、{中}ではタダで味噌汁付の飯を食わせて貰える。
チャンと風呂にも入れて貰える。休日はチャンと休める。

はっきりとは覚えていないが、多分そんな事を、まるで、
出所するまでは、国の費用で特別待遇を受けて来られたのに
今のパッとしない自由放免の境遇を儚んででもいる様に語って
いたのだと思う。

「タバコは一日三本まで!」

(オッサン)は急に語調を強めて、指を三本突き出し

得意満面と言った表情でそう言ったのを覚えている。

別に調べるまでも無く、もちろん日本の刑務所にその様な
規則は無い。

或いは何らかの手段で{中}に持ち込まれた、{モク}が
看守がいない時に回って来るのか?

そう言えばいつか読んだ加賀乙彦の「宣告」と言う小説で
刑務所内の医務室で作業している囚人が清掃中に、
医師の机の灰皿から吸殻をくすねようとして、見つかり
お咎めを受けたと言う描写があったのを覚えている。

「本当、刑務所は、いい所だよう。」

まるで入所を勧めんばかりの口調で(オッサン)は言った。

僕はどう答えて良いものやらただ苦笑いをうかべているより

他無かった。

「まあ今はどこも一杯だけどもなあ。」

とも(オッサン)は言っていた。まあ世上でもそう言われている。

何しろ二駅の間での事だったので、この(オッサン)と
まるで独房に入れられた囚人が窓際で隣の囚人と
話し込む様にそんなに長く話していた訳では無い。

電車がN駅に到着すると、(オッサン)は「それじゃな、兄さん」
とでも言って、陽気に手でも振ってホームに降りて行ったのだと思う。

その後(オッサン)がどうやって改札を抜けたのかは勿論分からない。

或いは今日昨日この(オッサン)と街ですれ違っているのかも
知れないがまずお互い気付かないだろう。

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2016/05/04 20:02
とあるコメディ小説で刑務所にはいると時間が余って読書量が飛躍的に伸びるという話を読んだことがあります。ちょっとうらやましかった。
社会復帰は守るべき家族でもないと難しいのでしょうね。
少し笑えて少し悲しいお話でした。
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2016/05/02 14:16
電車に乗っていて突然、
「東京に行って来たんだけど、空がにごっていてさあ。あれやばいよなぁ」と
にごり目のおじさんに話しかけられた我が記憶とだぶります。
かいじんさんも実際にこのような経験をなさったのかなと
ふと思ってしまうぐらい、リアリティのあるお話だと思いました^^
しかしおじさん、懲りちゃったのか……もうひと花……いやいや>ω<
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2016/04/26 19:59
こういう人を以前にみかけたことがあります
孤独なんだろうと思うのですが……
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2016/04/25 16:50
SL旅行をしているとき、車掌にしつこく撮影をおねだりしていた小父さんが
周囲のひんしゅくを勝手いた光景とダブります
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2016/04/19 00:48
お昼寝出来るもっといいのに。なーんてさぁ。
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2016/04/18 00:35
すれ違う人がどんな生活してたか
なんてわからないもんですね
誰かの人生をちょこっと見せてもらったようなお話ですね
こういうの好きです

刑務所は最低限の生活は保証されてますからね
規則さえ守れば 娑婆よりもいい所だって思う人がいるんでしょうね




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