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ひとりの魔法騎士の物語/学園生編~魔法界史1~

キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン…


「はい、それでは【魔法界史】の授業を始めましょう」


金髪の少女―おそらく10歳ぐらいだろうか―が教壇に立った。


ベルナデッタ(以下、ベ)「まずは、自己紹介からですね。
私の名前は、ベルナデッタ・デ・ルルド。
魔法界史を担当しているわ。
では、早速授業を始めましょう」


ベルナデッタは、教科書を宙に投げた。


ベ「インフローレ・エルティアル!」


ベルナデッタの呪文に反応して、教科書のページがパラパラとめくられ始めた。


ベ「時は、魔法界歴1年……。
全ての始まりは、人間界での出来事にあったわ……。
人間界には、数多くの魔法使いがいたの」



ベルナデッタの言葉が終わると、周囲の風景が変化した。



「ここは……?」



一人の生徒が呟いた。



「人間界で使われる暦―西暦と呼ばれるのだけれど―でB.C.180年頃の人間界よ。

ほら、あそこを見て」


遠くに円形に並んだ、巨大な石柱群を指差した。
石柱群を取り囲むように、人々が立っている。


「あの石柱(モノリス)群は、後にストーンヘンジと呼ばれるものなのだけれど。
そして、あそこにいるのは、魔法使いたちよ。

もっと近くへ行ってみましょう」


ベルナデッタが指を鳴らすと、一瞬でストーンヘンジの近くへと飛んだ。


「【東の予知者】よ、そなたが見た夢はどのようなものだったのか?」

長老のような風貌の男性が声を発する。

「私が見た夢は、鷲の紋章を持つ巨人が私たちを襲うものでした……」

【東の予知者】と呼ばれた男性が身震いしながら言った。

「誰か【東の予知者】と似たような、啓示を受けた者はいないか?」

すると、鮮やかな青を身に纏う少女が手を挙げた。

「わたくしも海より啓示を受けました。
彼方よりやってくる鷲の船に乗った人々がこの地を荒らす、と」

「【海の乙女】も……。
【森の番人】も似た啓示か?」

翡翠のような瞳を持つ青年が答えた。

「【大いなるドルイド】さま、私もほぼ同じ内容の啓示を【森の神々】から受けました。
『我々の森を【鷲の人】が破壊し、切り開き、居座るであろう。』と」


………聖域を奪うと言うのか、【鷲の人】は………


【森の番人】の言葉に反応して、ざわつく。


「鷲の紋章、鷲の船、【鷲の人】……。
どこの者なのだろうか……?」


長老が呟いた。


「【大いなるドルイド】さま。わたくしめへの啓示には詳しく……」


足まで伸びる銀髪をたなびかせる美女が歩み出た。


「【月下美人】よ、聞かせてくれ」


「【鷲の人】とは、はるか彼方に住む【ラティン】や【ローマン】と呼ばれる人々のことをいうそうです。

【鷲の紋章】を掲げる軍隊を組織し、領土拡大や敵の殲滅を行っていると、水鏡から読み取りました。

また【中つ海】で三度起きた戦争では、【ディドの都】を滅亡へと追いやったとも……。

彼らは、彼らの支配を認める者には自由を、
反逆する者には死を与えるのだと……」


「我らケルトの民は、【魔法使い】のみが統べることができる。

よそ者になど……。」


「しかし、反逆すれば【死】のみ……」


「……もう我らには止められぬのかもしれぬな……」


【大いなるドルイド】が呟いた。


「【大いなるドルイド】さまの死は、すべてのケルトの民の死。

次元を超えなければ、なりませんね……」


「【次元の巫女】……」

黒髪の少女が現れた。

「はい、このような時に備えて、転移魔法の開発をしておりました」


「完成したのか?」


「ええ、もちろん」


【次元の巫女】が手を挙げると、石柱が青く輝き始めた。


「我らを新天地へ導きたまえ!
ルテティア・トランセ!」


青い光が魔法使いたちを包み込んだかと思うと、彼らの姿は消えていた。


「その後、彼らはこの世界にやって来たの。
さて、彼らがどうなったかというのは、次の授業でね」

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2016/07/13 18:15
作中用語の解説

現実世界と直接結びつく言葉の使用は、できるだけ避けました。
元の言葉を暗示させるような言葉で書きました。


【鷲の人】:古代ローマ人のこと。本文中にも書いた通り、鷲の紋章を掲げていたため、この言葉にしました。

【中つ海】:地中海のこと。陸に囲まれた中にあることからこの言葉にしました。

【ディドの都】:カルタゴのこと。伝説上の創始者の名前に因んで、この言葉にしました。



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