Nicotto Town



僕の鳥計画 (2/3)


・・・

いつもより少し早く家を出たので教室に入り鞄とナップサックを自分の机に置いた
時にはまだ10分以上時間があった。

背後から誰かが駆け寄って来る靴音がした。

森下がいきなり僕の背中にフライング・ボディアタックして来た。

僕は来るのがわかっていたので少し腰を落としてそれを受けてから振り返り
アブドーラ・ザ・ブッチャーの空手殺法のポーズからの(地獄突き)を森下の
喉元に見舞った。

今度は黒板側の方から誰かが駆け寄って来る気配がした。

振り返ると高田が腕を水平にして迫って来ていた。

僕はダッキングでそれをかわして、それから背後から高田の頭をヘッドロックして
制服の胸ポケットからシャープペンシルを取り出してノックする方で頭を突く真似を
した。

「ヘイ!レフェリー、凶器!凶器!」

と高田が言った。

「高田クン、教室でクラスのお友達にラリアットしたら、いけんがな」

僕が言った。

僕らから1番近い所にいた3人の女子のグループが醒めた表情で僕たちの事を
見ていた、

ここから少し〇宰治風の記述になる・・・

・・・

ああ、しかし私は学校ではやはり(道化)なのでした。

私にも大事な受験が近いのだから休み時間などにすこしだけでも数学の
勉強などをやっておこうとという気持ちは持っているんです。

本当に持っているんです。

でもやはり駄目でした。私には他の生徒たちに時間を惜しんで勉強している
ところなど、どうしても見せられないのでした。

今思えば、私のこれまでの中学生生活は虚栄心が強さがかえってわざわいして
恥の多い人生を送って来た様に思えます・・・

・・・

自分の席についてからぼんやりと考え事をしていたら目の前に谷口が寄ってきた。

彼が意味あり気な微笑を浮かべてほんの少し顎を右の方にしゃくったので
そちらの方をみると教室の右前の方にある堂本の席の所で堂本と相川めぐみが
親しそうに何かをずっと話し続けていた。

僕は谷口の方を1度見てから、それから何事も無かったかの様に無言で鞄の中の
物を取り出して机の中にしまった。

何だか下校時間が待ち遠しい気分だった。

・・・

教室では2時間目の社会の授業が続いていた。

窓の外はよく晴れていて校庭一面に降り注いでいる日差しを見ていると
1月の中旬にしては暖かそうだった。

小さな唸りをあげ続けているストーブですこし暖め過ぎている教室では
淡々として比較的静かに授業が進行していた。

何だか、平和でのどかで今が厳しい真冬の真っ只中で、もうすぐ受験が迫っていて
そして僕らの中学生活と言うのがもう終わりに近付いているというのが
何となく不思議な気がした。

黒板の前では社会科の見谷(ミタセン)が日本の三権分立について淡々と
説明を続けていた。

ミタセンの授業は教科書に書いてある内容をそのまま何度も繰り返しているだけの
事が多いので彼の説明を授業時間中ずっと聴き続けているのは僕にとっては
いつもちょっと苦痛だった。

そんな訳で、僕は社会の授業中は退屈しのぎに教科書の適当な所を
読み散らしている事が多かった。

読み飽き様が何しようが漫画雑誌を取り出す訳にも行かずずっと同じ物だけを
仕方なく眺め続けて来たので、そこに書いてある内容を今改めて聞くのは
ちょっとうんざりする。

今、一番時間を有効に使うとすれば全く疑いなく1問でも数学の問題に
取り組む事だと言う気がしたがそう言う訳にも行かなかった。

焦りを感じたまま、もやもやとしてただ時間が過ぎて行くのを何もしないで
ただやり過ごして行くのも何だか少しやり切れない気がした。

仕方が無いので今は公民の授業だし、現在の我が国の政治について真面目に
考えてみる事にして、僕はシャープペンシルを手に取ってノートを広げた。

・・・

あ あいさつは 名刺では無く 札束です

い 遺憾です 決まり文句が 今日も出る 

う 嘘ついて ばれても慌てず 言い逃れ

え 演説で ありえない事 言っちゃった

お お土産は 帯の付いた 札がいい

か 隠し金 追求されても かわし切る

き きれい事 並べてみたけど 中身が無い

く 国の為 集めた金を 無駄遣い

け 権力と 富を集めて 老い知らず

こ 国民の 怒りの声に 耳塞ぐ

・・・

つ 次々と 明るみに出る まずい事

・・・

ぬ 抜け道を 作っておくのが 法作成

・・・

ふ ふんだんに 予算を使って 効果なし

へ 下手なウソ 下手な芝居で ボロが出る

ほ 本当は 事実無根じゃ ありません

・・・

り 理想だけ 高く掲げて 何もせず

る ルール違反 隠れてやれば 怖くない

れ 歴史的 大敗しても 懲りません

ろ ろくでなし バッチをつければ 紳士です

わ ワイロはな 裏の収入 非課税よ

・・・

たっぷり30分以上かかったけど一応の考察は終わったので僕は顔を上げた。

ふと視線を感じて右の方を見ると隣の席の水原かおりが何か変な物を見る様な
目付きで僕の方をじっと見ていた。

僕と目が合うと水原は目を逸らして自分の教科書の方に視線を落とした。

それからしばらくして2時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

アバター
2017/02/03 19:07
この数だけひとつのテーマで俳句を作るのはすごい。

男子中学生の屈折具合がよくあらわされてますね
アバター
2017/02/01 00:05
太宰さん風に文章表現したり言葉あそびしちゃう僕は、
もしかして相当文才ある文系なんじゃないかと……
理数系な科目は実はひそかに苦手だったり・ω・
アバター
2017/01/30 17:57
標語?面白いね。(´∀`*)



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