Nicotto Town



記憶に残っていたわたし

突然、十数年ぶりの人から電話がかかってきた。

先方は転居したわたしの連絡先を人にきいてまでかけてきていた。

三年がかりで準備してきたイベントを二か月後に控え、
いよいよ直前になってもイメージがわかず、考えも煮詰まって、
どうしていいかわからなくなってきていたと。
いよいよピンチ!と思って、本当に困ってしまったら、
ふっとわたしの顔が浮かんだそうだ。

過去のイベント仕事の手持ち資料に大急ぎで当たって、記憶を戻して、
日にちが迫っているので、雪が降る中、待ち合わせをしてお茶に。

やりたいことを聴きながら、準備したものを見せていただきつつ、
浮かぶアイデアをどんどん出して、図面で説明しながらいい方法を探った。
そのうちに……
「さっきから、気持ちがなんだかすごく高揚して来て、イメージも湧いて
やる気が出てきた。残り時間使って新しいことにチャレンジしたい」と、
ソワソワして、早く家に帰って作業しなくちゃ、ぐらいの様子に。
「やっぱり頭いいねぇ。助かった。当日も来てくれる?」
おいおい、あなたは高校で教えて県内一番の高校の校長までやって、
今は大学で教鞭とってる大先輩でしょうに…とは言わなかった。
「ありがとうございます、お役に立てて、喜んでいただけで嬉しいです」。

20も年上の先輩の年齢で、新たなやる気がでてきたって、すごい。
困ったと思って20も下の後輩にヘルプを言える人柄って、すごい。

そんなことを思いながら帰りの電車に乗って、自分の事も考えてみた。
困った時に思い出して、探して連絡を貰えるだけの仕事を、
かつてのわたしはやっていたんだ。
DVの真っ只中で、職場のハラスメントの最中で、追い詰められながらも
結果としては記憶に残る仕事ぶりと評価を残していたんだな。
まともな人たちとは、きちんとした人間関係も保っていたんだな。
そう思えば、わたしも捨てたもんじゃなかったな。

あの業界には戻れないし、これから一生やろうとしていることは
カウンセラーだから分野がちょっと違うけど。
少しは自分に自信をもって、ちゃんと顔を揚げて頑張ろうかな。




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