Nicotto Town


世の中の沙汰やいろんなこと。


神聖創造物: Aurum Somnium・1

どこかも知らぬ場所に居て、誰かも知らぬこの身で歩く。
記憶を探し辿った先は何があるか誰も知らぬ。
ふらりふらりの足取りで、定かではない道を往く。
*******

「…!…あんた!」
ふと目を開けると眩しいほど青い空。
そしてこちらを心配そうに見る女性の姿。

どうやら女性は俺が倒れていた所の近くのアパートの大家らしい。

「あ…ありがとうございます。」
「お礼は私にじゃなくてお前さんをここに連れて来た人に…って居ないね。」

女性によると、どうやら俺は裏路地に倒れていて、そこから女性の元に連れて来た人がいるらしい。まぁどうやら今ここから離れてしまったらしいようだが。

「そう言えば、お前さんなんで裏路地なんかに居たんだい?裏路地は治安が悪い上に人が近づかない場所のはずなのに。ましてお前さんはそこで倒れてってんだから事情を聞かせてくれよ。」
「裏路地に居た理由ですか…ん?」

聞かれて思い出そうとした理由はいくら思い出そうとしても浮かばない。しかも自分の名前などの基本的な情報を思い出そうとしても思い出せない。それを女性に言うと怪しい目で見られたが、顔や目を見て嘘はついていないと判断したのかこう言う。

「お前さん記憶喪失かい。まるで物語の中の様な展開だね。まぁ記憶が戻るまでうちに泊まりな。ただし、お前さんが神聖創造物って言うんなら話は別だ。そんときは出てってもらう。」
「じゃあお世話になります。ところでなぜ神聖創造物だと出て行かなければ行けないのですか?」
「奴らは人じゃない化物だからだよ。私の夫もかつてなす術無く殺されたね。あんな化物消えて当然さ。」

そんな彼女の回答を聞き、神聖創造物と言われ、どこか懐かしい様な響きと思ったのは内心にとどめて置こうと決める。

「そうだ、お前さん名前は?…っと言っても名前も覚えてないのかな?」
「自分の名前は残念ながら覚えていませんがそうですね…じゃあとりあえずアウロとでも呼んでください。」

名前を考えて一番最初に出て来た名を名乗り、俺は女性の管理するアパートに入って行く。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.