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子宮頸がんワクチン助成で政策立案の変化鮮明1/2

子宮頸がんワクチン助成で政策立案の変化鮮明に

 2009年衆院選の民主党マニフェスト。長妻昭厚生労働相は常に携行していたというが、同党代表選挙で菅直人首相が勝利し、さらに退色が進んだかに見える。
 民主党の政権政策をさらに詳しく紹介した「INDEX2009医療政策〈詳細版〉」には〈子宮頸がんの予防に有効なヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの日本での開発を推進し、任意接種に対する.助成制度を創設〉と明記されている。
 だが、政権交代後、民主党政権はHPV助成に及び腰になる。理由は二つ。深刻な財源不足と地方自治体による公的助成の広がりだった。
 厚生労働省の担当部局は健康局。局長の外山千也氏は「器ではない。あり得ない人事」(省幹部)との評判。医系技官の人事権を一手に握る。
 「自分の周囲をエース級で固めることに執心している。局内はすかすかの状態です」(前出幹部)
 この世の春の外山局長を荒波が襲う。今夏の参議院選挙の結果だ。自民党比例区の公認候補・三原じゅん子氏が16万8342票を得て当選。獲得票数は日本 医師会が推薦・支援した医系3候補の合計に匹敵する。三原氏は「HPV接種の公費助成と検診の無料化」を訴え続けてきた。
 「国による公費助成あるべし」へと変化した風向きを敏感に察知したのは公明党。松あきら参院議員を中心に次期国会に「子宮頸がん予防法案」提出の動きが活発化した。自民党の鴨下一郎、野田聖子両衆院議員もこれに呼応。三原氏が世論へのアドバルーンなのは言うまでもない。
 ことHPVの公費助成に関しては、三原氏を擁する自公が改革派、政権与党は守旧派という構図になった。ワクチンの接種費用を国費で賄うには予防接種法の 改正が必要。足立信也・厚労政務官は来年通常国会での改正を明言している。長妻厚労相や山井和則政務官は足立氏よりも「政治家」。世論の変化に追随する策 を選んだ。公費助成を11年度予算概算要求に盛り込んだのだ。

健康局に見る医系技官の劣化
 政務三役は自信を深めた。世論を敏感にかぎ取って政策の方向を変えた。患者や国民に歓迎されると見込んだのだ。長妻氏は8月26日、HPV接種推進派の 23団体と面会した。胸を張って場に臨んだ長妻氏。だが、そこで現実に行われたのは、出席者による「つるし上げ」だった。この席にいた竜崇正氏(千葉県が んセンター前センター長)が振り返る。
 「治せるがんは国が責任を持って治すという政権のメッセージがまったく見られない。ワクチン接種は市町村の仕事ではないでしょう」
 HPV公費助成の意味も重要性も理解する竜氏の言葉は重い。長妻・足立両氏をはじめ、政務三役は立つ瀬がない。「政治主導」の政策転換は評価されるどころか、みそを付ける結果にしかならなかった。責めを負うべきは、今回、詳細を決めた外山氏率いる健康局だろう。
 ワクチン接種の国の助成額は費用の3分の1。実施する自治体に対して支払う。その費用が150億円。4学年分(中学1年~高校1年)×3分の1で国の負担は約150億円になる。だが、健康局は財務省に対し、有効な折衝ができなかった。
 「今回の助成は特別枠。1年間だけの措置だから、財布のひもは緩い。恒常的な財源とは違う判断が財務当局には働く」(医療財政研究者)
 財源がないとしても、600億~700億円を要求して、財務に削らせる。あるいは長妻厚労相に判断を委ねる。方法はいくらでもあった。それを霞が関特有の「右へ倣え」で取りまとめ、財源不足の汚れ役まで引き受けてしまった。外山氏以下の実力を等身大で示した結果だ。
 「150億円」は恒常的財源の落としどころ。今回は単年度なのだから、切りしろをつけて取るべきだ。
 問題の核心は政治家が腹心と呼べるスタッフを省庁の外から連れて行けるかどうか。民主党の鋭敏な一部議員はすでにこのことを学習済みだ。
 それにしても恐れ入るのは三原氏の手腕。8月12日付のスポーツ紙には原中勝征・日医会長との会談を伝える記事が躍った。絵図を描いたのは羽生田俊・日 医副会長とされる。世論形成に特効薬はない。ここまでの地道な露出の積み重ねが8月13日付読売新聞の社説につながっていく。
 党栃木県連副会長を務める三原氏の母親は同県出身。栃木は三原氏の「第二の故郷」で最大の票田だ。群馬県で開業する羽生田氏は近隣のよしみで三原氏を応援してきた。

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