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【厚労省に国民の命は預けられない 村重直子】3

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【厚労省に国民の命は預けられない 村重直子】 3

    ワクチン定期接種から逃げる役所 どうにもならない無責任体質

    子宮頚がんワクチンの公費助成で喜んではいられない

     子宮頚(けい)がんワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンに公費助成がついたが、肝心の定期接種化は一向に進まず、任意接種のまま留め置かれている。他にもB型肝炎、水痘など、定期接種化すべきものはたくさんある。
     定期接種は無料で受けられるが、任意接種は自己負担。経済的な理由から接種をためらうケースもあるし、「任意接種」ならば「受けなくても大丈夫」という誤った認識を植えつける。これでは接種率を上げることができず、国民の健康を守れない。

     予防接種法の定期接種リストには「前各号に掲げる疾病のほか(中略)政令で定める疾病」と書かれている。その気があればすぐに政令で定期接種化できるのに、官僚がやらないのには理由がある。法で位置づける定期接種にしてしまうと、訴訟で副作用とされた際の賠償金の支払いや接種費用の負担などさまざまな責任が出てくるからだ。任意接種に留め置けば、接種費用を負担せず、責任もほとんど取らなくて済む。各自治体は乳幼児医療を無料化しているのだから、財源がないはずはなく、役人の責任回避体質というしかない。

     厚労省はポリオワクチンによるポリオ発症の問題も放置している。東アジアでは日本と北朝鮮だけが「生ワクチン」を使い続けているのである。毒性を弱めているとはいえ、生ワクチンに入っている生きたウイルスが再び強毒化する可能性がある。生ワクチンを受けたことによってポリオを発症する危険性があるし、ワクチンを受けた人の便中のウイルスが、生ワクチンを受けていない保護者や別の子どもに2次感染するケースもある。

     2008年3月14日、当時の福田康夫内閣は、参議院の質問主意書に対する答弁書で、「生ポリオワクチン接種後に麻痺(まひ)を発症したと認定された事例は、平成元年度以降80件」「生ポリオワクチンを接種された者からの2次感染と認定された事例は、平成16年度以降5件」と述べた。日本では毎年何人かが新しくポリオにかかり、麻痺が残るなど、つらい生活を強いられているわけである。

 米国は2000年に不活化ワクチンに完全に切り替えた。先進国に限らず、多くの国々が不活化ワクチンに切り替え、生ワクチンの被害を根絶している。

 ところが、厚労省は依然として不活化ワクチンを輸入しようとせず、予防接種実施規則第12条で生ワクチンの接種を定めている。不活化ワクチンもそこに併記して緊急輸入すべきだ。
 昨年12月15日、「ポリオの会」(小山万里子代表)が不活化ワクチンの早期導入を求めて約3万5000人の署名を厚労省へ提出した際、岡本充功厚生労働大臣政務官は「不活化ワクチンの国内開発の進捗(しんちょく)は不明、輸入もできない」と回答したという。

 日本は、生ワクチンを製造している財団法人日本ポリオ研究所が市場をほぼ独占している。新型インフルエンザが流行した昨シーズン、役人と国立感染症研究所がワクチンの輸入に抵抗したのとよく似た構図が見え隠れする。国内メーカーと省の護送船団方式といえよう。
 こんな厚労省から子どもたちを守るため、外国メーカーから不活化ポリオワクチンを個人輸入するケースが急増している。ある個人輸入代行業者の扱いを見ると、2009年の899本が2010年には7770本になった。「厚労省に生命を預けるわけにはいかない」という国民の判断である。

▽むらしげ・なおこ 1998年東大医学部卒。ニューヨークのベス・イスラエル・メディカルセンター、国立がんセンター中央病院などに勤務後、厚労省へ。2010年3月退官。現在、東京大学勤務。


2011年1月26日 掲載
http://gendai.net/articles/view/syakai/128700
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2011/10/07 09:23

【厚労省に国民の命は預けられない 村重直子】 3

ワクチン定期接種から逃げる役所 どうにもならない無責任体質

子宮頚がんワクチンの公費助成で喜んではいられない

 子宮頚(けい)がんワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンに公費助成がついたが、肝心の定期接種化は一向に進まず、任意接種のまま留め置かれている。他にもB型肝炎、水痘など、定期接種化すべきものはたくさんある。
 定期接種は無料で受けられるが、任意接種は自己負担。経済的な理由から接種をためらうケースもあるし、「任意接種」ならば「受けなくても大丈夫」という誤った認識を植えつける。これでは接種率を上げることができず、国民の健康を守れない。

 予防接種法の定期接種リストには「前各号に掲げる疾病のほか(中略)政令で定める疾病」と書かれている。その気があればすぐに政令で定期接種化できるのに、官僚がやらないのには理由がある。法で位置づける定期接種にしてしまうと、訴訟で副作用とされた際の賠償金の支払いや接種費用の負担などさまざまな責任が出てくるからだ。任意接種に留め置けば、接種費用を負担せず、責任もほとんど取らなくて済む。各自治体は乳幼児医療を無料化しているのだから、財源がないはずはなく、役人の責任回避体質というしかない。

 厚労省はポリオワクチンによるポリオ発症の問題も放置している。東アジアでは日本と北朝鮮だけが「生ワクチン」を使い続けているのである。毒性を弱めているとはいえ、生ワクチンに入っている生きたウイルスが再び強毒化する可能性がある。生ワクチンを受けたことによってポリオを発症する危険性があるし、ワクチンを受けた人の便中のウイルスが、生ワクチンを受けていない保護者や別の子どもに2次感染するケースもある。

 2008年3月14日、当時の福田康夫内閣は、参議院の質問主意書に対する答弁書で、「生ポリオワクチン接種後に麻痺(まひ)を発症したと認定された事例は、平成元年度以降80件」「生ポリオワクチンを接種された者からの2次感染と認定された事例は、平成16年度以降5件」と述べた。日本では毎年何人かが新しくポリオにかかり、麻痺が残るなど、つらい生活を強いられているわけである。
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2011/10/07 09:22


 米国は2000年に不活化ワクチンに完全に切り替えた。先進国に限らず、多くの国々が不活化ワクチンに切り替え、生ワクチンの被害を根絶している。

 ところが、厚労省は依然として不活化ワクチンを輸入しようとせず、予防接種実施規則第12条で生ワクチンの接種を定めている。不活化ワクチンもそこに併記して緊急輸入すべきだ。
 昨年12月15日、「ポリオの会」(小山万里子代表)が不活化ワクチンの早期導入を求めて約3万5000人の署名を厚労省へ提出した際、岡本充功厚生労働大臣政務官は「不活化ワクチンの国内開発の進捗(しんちょく)は不明、輸入もできない」と回答したという。

 日本は、生ワクチンを製造している財団法人日本ポリオ研究所が市場をほぼ独占している。新型インフルエンザが流行した昨シーズン、役人と国立感染症研究所がワクチンの輸入に抵抗したのとよく似た構図が見え隠れする。国内メーカーと省の護送船団方式といえよう。
 こんな厚労省から子どもたちを守るため、外国メーカーから不活化ポリオワクチンを個人輸入するケースが急増している。ある個人輸入代行業者の扱いを見ると、2009年の899本が2010年には7770本になった。「厚労省に生命を預けるわけにはいかない」という国民の判断である。

▽むらしげ・なおこ 1998年東大医学部卒。ニューヨークのベス・イスラエル・メディカルセンター、国立がんセンター中央病院などに勤務後、厚労省へ。2010年3月退官。現在、東京大学勤務。


2011年1月26日 掲載




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